身体にまつわる都市伝説 第133回

カルシウム不足と虫歯は無関係?

2015.01.17 SAT

身体にまつわる都市伝説


カルシウム不足は虫歯の直接的な原因にはならない。妊産婦のようにカルシウム消費量が増えた場合は、ちゃんと吸収量もアップするようにできているのだ 写真提供/UYORI / PIXTA
世代的なものなのか、周囲で“おめでた”が続いている。少子化問題なんてどこ吹く風、ちょっとしたベビーラッシュといってもいい。

子どもを持ったことのない筆者からすれば、妊娠・出産というのは神秘の宝庫で、思わず「へえ」と唸らされることが多々ある。たとえば、妊婦はカルシウムをお腹の子に取られ、虫歯になりやすい、なんて情報。やはり、出産というのはとてつもない負荷を要するものなのだな、と驚くばかりだが…。

「妊産婦がカルシウム不足で虫歯になりやすいとはよくいわれることですが、じつは医学的には正しくありません。そもそも妊娠しても、妊婦の血清カルシウム(血液中のカルシウム)の量に変化はないんですよ」

そう語るのは、新宿ライフクリニックの須田隆興先生だ。須田先生によれば、妊婦が平常時以上に大量のカルシウムを消費するのは事実ながら、それゆえに自身の体調に影響を及ぼすことはないという。

「なぜなら、カルシウムは、数ある栄養素のなかでも、体内で絶妙に制御される成分のひとつで、消費量が増えるとそれを補うようにして腸管からの吸収量も増加するからです。ことカルシウムに関しては、人間は“骨”という巨大な貯蔵庫を備えていて、安定性を保つようにできているんです」

そもそも、虫歯を起こすのはあくまで虫歯菌であり、カルシウム不足が妊産婦の虫歯を招く事実はないと須田先生は断言する。

では、なぜこのような都市伝説が生まれたのか? 不思議に思って聞いてみたところ、あながち都市伝説と切り捨てられない一面も。須田先生いわく、女性が妊娠中に歯を痛めやすい要因は他にあるという。

「つわりにともなう嘔吐で、歯に胃液を受けることが原因になっている可能性はあります。歯は酸性に非常に弱いものですから。また、妊産婦は唾液量が減少する傾向があり、結果的に歯を守るバリアを失っているのも歯を弱体化させる原因になりますね」

カルシウム不足よりも唾液不足の方が、よほど虫歯の原因になりやすいのだ。
(友清 哲)

※この記事は2013年1月に取材・掲載した記事です

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