PM2.5も気になるけれど…

中国大陸から来る黄砂の“影と光”

2015.02.17 TUE


国立環境研究所は、レーザー光線を使って上空の黄砂を常時監視している 画像提供:国立環境研究所
中国から飛来する大気汚染物質「PM2.5」が話題になっていますが、春を迎えるこれから気になるのが黄砂。ちょくちょくニュースにも登場し、耳に入る機会も増えてますよね。そこで黄砂とはそもそも何なのか、どうしてこの時期になると飛んでくるのか、国立環境研究所地域環境研究センター主任研究員の清水厚さんに伺いました。


「タクラマカン砂漠やゴビ砂漠などの乾燥・半乾燥地帯の砂が、風に乗って飛んでくる現象が黄砂です。冬はゴビ砂漠の地面が雪に覆われるため砂が舞いあがることはありませんが、春になり地面が溶けて、風速十数メートルという強い風がシベリアから吹くと砂が上空へ舞い上がります。そして東へ流れる偏西風や低気圧が日本まで黄砂を運ぶんです。夏になると半乾燥地に下草が生えるので、そのぶん砂が舞い上がりにくくなり黄砂は減少します」


国立環境研究所では、黄砂が発生するモンゴルや中国、また日本国内でもレーザー光線を使って毎日上空を監視。飛来する黄砂の量を1時間ごとに環境省のホームページで公開しているそうです。では、飛んでくる黄砂の量はあらかじめ予測できますか?

「数値シミュレーションによって、数日後にどれくらい飛んでくるのかはそれなりの精度で予測できます。3日後までの予測ならば、気象庁のホームページに掲載されています。ただ、シベリアからいつどのように強い風が吹くのかがそれ以上前にはわからないので、昨年より多いかなどシーズンを通した黄砂の全体量を予測するのは難しいんです」

黄砂が日本に飛来するピークは例年3~5月頃ですが、今シーズンの量は現時点(2月中旬)ではまだわからないそう。ところで、黄砂もPM2.5と同様に健康に害があるのでしょうか?

「黄砂は大気汚染物質と一緒に飛んでくることが多いので、以前は黄砂そのものの健康被害についてはよくわかっていませんでした。しかし、最近ではレーザー光線を使い、黄砂とその他の物質の濃度をそれぞれ分けて観測することができるようになってきました。黄砂の飛来する量が増えると、汚染物質と関係なくぜんそくの患者が通院する頻度が多くなるということなどがわかってきています」

ぜんそくなど呼吸器の疾患を持っている人は、黄砂予測を参考にして黄砂が多い日は外出を控えるといった対処が必要そうですね。

健康被害のほかにも建物や車を汚したり視界を悪くしたりと、その“害”ばかりが目立つ黄砂ですが、清水さんによると実はそれだけともいえないそう

「例えば酸性雨を中和します。黄砂はアルカリ性の土壌からもたらされるので、黄砂を含む雨水はpHが通常よりも高くなります。また、大洋の海水に栄養を供給する働きも。沿岸から遠い太平洋は貧栄養状態なのですが、黄砂が到達すると鉄分などミネラルをもたらして植物プランクトンを増やし、生態系を豊かにしているとみられています」

なるほど、やっかいものの黄砂ですが、実は意外な役割を担っていたのですね。黄砂の根本解決は難しそうですが、黄砂予報を活用するなどしてうまくつきあっていきたいものですね。

(長倉克枝)

※この記事は2013年2月に取材・掲載した記事です

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