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作家・高野秀行「お酒の飲み方」

2015.03.03 TUE


たかのひでゆき 1966年東京都生まれ。早稲田大学在学中に、『幻獣ムベンベを追え』で作家デビュー。最新作は、ソマリアのなかにできた独立国、ソマリランドの内情を追った『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社・2310円)。「国連主導の平和政策を拒否して、“草の根”活動で独自に内戦を終結させて平和になったという奇跡的な国なんですよ。“未確認国家”ですが、実際にあってちゃんと機能していました」と高野さん 撮影:堀 清英
「私は酒飲みである。休肝日はまだない」――そう語る男に「お酒との付き合い方」を聞くなんて野暮の極みかもしれない。冒頭の一節は、著書『イスラム飲酒紀行』にしばしば出てくるフレーズだ。飲酒が許されないイスラム国家で、酒を求めてさまよう姿を描いた旅行記である。

「イスラム圏だと高級ホテルに行くと飲めることが多いんですが、高いんですよ。僕はそんなに量は飲めないけど、毎日飲みたいので。それに、面白くないでしょ?」

というのも、“誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをして、それを面白おかしく書く”のが仕事だから。高級ホテルはおろか、観光地にすら用はない。たとえば“幻獣”を追ってアマゾンへ行ったり、謎の“西南シルクロード”を陸路で踏破したり…。

もちろん酒にまつわる面白エピソードにも枚挙にいとまがない。たとえばビルマ(現ミャンマー)にあるアヘン王国といわれた危険地帯に潜入取材したときのこと。

「プライコーという粟や稗を発酵させて水で薄めた酒を、竹のコップについで、ふたりひと組で『ア』(おれたちという意味)といって飲み合う経験も。マイペースで飲めないうえどんどん飲まされたりして」

あっけらかんと語るが、そこはアヘンを栽培する農村だったりするわけで、当然危険を感じそうなものだが…。

「酒飲みに限って言えば、悪いヤツはいない。それに飲むと行動力が鈍って、犯罪に至らない(ことが多い)んですよ」

酒を飲めば、だいたい打ち解けられるという。が、特別なテクニックがあるわけではない。それどころか、冗談で場を和ませるような飲み方も苦手らしい。

「なんでも率直に聞けばいいんですよ。生活とか国の情勢とか、意外と答えてくれますよ」

とはいうものの、会社の飲み会ですら、空気と顔色をうかがって“率直”になれない会社員が多い。「気疲れする」と考える人も多いことだろう。

「無理に社交的にならなければいけないと思うから、おっくうになる。人によって好奇心の持ち方なんて違う。たとえば新入社員だったら、仮に他人に興味がなくても、営業の文化はどうかとか会社の雰囲気についてとか、自分に必要な情報を率直に聞けばいいんですよ」

聞きにくければ、お酒に背中を押してもらうべし。そして若いうちは飲みに行くべし。

「酒を飲むということは、ある程度の時間、腰を据えて一緒の時間を過ごすということ。ムダな話するでしょ。そうすると仕事の会話ではわからない本音が聞けたり、その人の人となりが見えてきたりするんですよ」

しかし当然、ろくな目に遭わないことだってある。

「でも何かあると思えば、ワクワクするじゃないですか。仮に目的のものを見つけられなくても、現地の実際がわかるだけでも楽しいんですよ。行った先に何もないなんてことは考えられないですから」

それは、飲みに行くのも同じこと。行けば何かが見えてくるのだから。
(吉州正行)

※この記事は2013年2月に取材・掲載した記事です

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