身体にまつわる都市伝説 第146回

「死後も髪や爪が伸びる」説の真相

2015.04.24 FRI

身体にまつわる都市伝説


人は死後も髪や爪が伸びることがあるか? すくなくとも、すべての細胞が死を迎えた状態からは「あり得ない」と須田先生は語るが… 写真提供/PIXTA
根が不精なもので、つい手足の爪を切り忘れ、だらしない指先をさらしていたり、靴下に穴があいてしまったりすることがよくある。社会人として非常に恥ずかしいことで、いっそ爪なんて伸びなければいいのに…と思うこともしばしばだが、生きているかぎりはそうもいかない。

それどころか、たまに「死後も髪や爪が伸びることがある」なんて、ちょっと怪奇な噂を耳にすることすらある。これって事実なのだろうか? 新宿ライフクリニックの須田隆興先生に聞いてみよう。

「これは一般的にはあり得ないといっていいと思います。…ただ、人の“死”をどのように定義するかが問題。死というのはなかなかデリケートな領域で、たとえば脳が停止していても心臓がまだ動いている場合をどうとらえるかという問題は、長年議論されつづけています」

…と、なにやら含みのあるコメント。いったいどういう意味だろう?

「髪や爪が伸びるということは、細胞分裂が起きているということ。つまり、脳死状態であれば髪や爪は成長します。また、心停止が確認され、医学的には死亡宣告をされた人であっても、その瞬間にすべての細胞が活動を停止するわけではありません。その意味では、心臓が止まった瞬間からカウントして、その後に爪や髪がコンマ数ミリ伸びることはあるかもしれませんが、すべての細胞に“死”が行き渡った後でそれはあり得ません」

もちろん、遺体を死後1カ月確保しておいて髪や爪の長さを測定した、などという実験データがあるわけではないし、今後も倫理的に実現不可能だろうと須田先生は語る。しかし少なくとも、全身に細胞死が行き渡った状態から、人体の一部が成長することはないと須田先生は明言する。

厳密にいえば「死」の定義によりけりではあるが、少なくとも細胞死を迎えた後は、細胞が活動を行うことはない。「死後も髪や爪が伸びる」説の真偽として、これだけは間違いないようだ。
(友清 哲)

※この記事は2013年4月に取材・掲載した記事です

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