生肉からだけじゃない

犯人がみえない“食中毒”もある

2015.05.02 SAT


食中毒の原因菌のなかには、熱に強い菌や加熱でも壊れない毒素を持つ菌も。加熱はあくまで予防の基本のキ。傷んだ食材はこの限りではありません 画像提供:Kappaの旦那/PIXTA
暖かくなってくると増えるのが、O157(腸管出血性大腸菌)やカンピロバクターなどの細菌が引き起こす食中毒。生肉や浅漬を感染源とする集団食中毒事件を覚えている方も多いのでは? さすがに生肉を警戒する人は増えているようですが、実はユッケや生レバーを避けるだけではこれらの食中毒を完全には防げないそう。

「腸管出血性大腸菌はもともと牛の腸内にいますが枝肉にするときに生肉に付着し、それが口に入ると激しい腹痛、血性の下痢などを引き起こします。2012年の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は3745人。しかし直接の原因となった食べ物が判明して食中毒として取り扱われたのは、このうち1割ほどでした」

と、教えてくださったのは国立感染症研究所細菌第一部長の大西真先生。

多くのケースで原因がわからないのは、腸管出血性大腸菌は数十個程度の菌が口から入るだけで病気を起こすこと、数日前の食事が残されていないことなど、いろいろ理由があるとのこと。それに、菌のついた生肉を直接口にするばかりが感染の理由ではないからなのだとか。

「腸管出血性大腸菌感染症には主に3つの感染ルートがあります。1つめは生肉など汚染された食べ物からの直接感染。2つめは原因菌の付着した調理器具などを介してほかの食べ物に原因菌が広がり感染するケース。このケースでは原因を突き止めるのは難しくなります.3つめは原因菌に感染した人を介して菌が広がり感染するケースです」

とくに3つめのケースで問題なのは、抵抗力のある健康な成人だと菌に感染しても自覚症状が出ない場合があること。その場合、用便後の手洗いが不十分だと、ドアノブや手を介し抵抗力の弱い子どもや高齢者に細菌が感染することもあるという。


では食中毒を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?

「リスクをゼロにするのは難しいのですが、やるべきことがいくつかあります。まず、生肉を食べるのはやめ、よく加熱して菌を殺してから食べること。また大腸菌は夏場の室温ではよく増えるので生ものを室温で放置するのは避けることです。肉などの自然解凍もやめた方がよいでしょう。2つめは、生肉とそれ以外の食材で調理器具を分けること。完全に分けることが難しい場合は、最初に野菜を切ってから生肉を切るなど、調理の順番に気をつけてください。さらに使用後の調理器具やふきんはよく洗浄してから、熱湯や台所用漂白剤で消毒をします。また、トイレのあとや食事前の手洗いをしっかり行うことも必要です」

食用の牛の約1割はもともと腸内に腸管出血性大腸菌を持っているそうです。すべての生肉に菌が付着しているわけではありませんが、バーベキューなどで生肉を扱う機会も増えるこれからの季節、注意した方がよさそうですね。

(長倉克枝)

※この記事は2013年5月に取材・掲載した記事です

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