“お家でサービス残業”の理不尽が横行

「持ち帰り残業」手当はもらえる?

2015.06.11 THU


「残業禁止」はうれしいけれど、だからといって仕事量が減るわけではない…。写真提供/PIXTA
仕事が終わらず、自宅で“持ち帰り残業”をする破目に…。サラリーマンなら誰しも経験のある話では? 近年、残業代を抑えたい企業が「長時間労働防止」なる大義名分のもと、「残業禁止」を命じたり、所定の時間になると職場からの強制退出を促したり…なんて話も耳にします。そこで気になるのが「残業代」の有無。サラリーマンとしては、会社だろうが自宅だろうが、仕事をした以上は残業代をいただきたいところ。

とはいえ上司に、「昨日は家で2時間仕事したので、残業代を申請しても良いですか?」とは聞きにくいもの。思いきって切り出したら、

「業務時間中に仕事が終わらないのは君の仕事が遅いのが原因。そんな人にいちいち残業代を払っていたら、仕事が遅い人ほど給料が増えてしまう。頑張って業務時間中に仕事を終わらせている人には不公平になってしまうので、そんな人にいちいち残業代は支払えない」

…と説教されてしまった、なんて話も。そう言われると、上司の言い分にも一理ある気がして、それ以上、言えなくなってしまう人も多いのでは?  かくして「持ち帰り“サービス残業”」を強いられるケースが多発。果たしてこの上司の言う通り、「持ち帰り残業」の残業代は支払ってもらえないのでしょうか?

答えは「NO」です。 会社は原則として、従業員の労働時間に対応した賃金を支払わなければなりません。「持ち帰り残業」も客観的に 労働時間と認められるなら、残業代を支払わないことは法律違反になります。

ただしポイントは、「労働時間と認められるかどうか」という点。これは会社の指揮命令下にあるか否かによって判断されます。

たとえば、上司の指示で「持ち帰り残業」をした場合、これは業務命令ですから、当然労働時間に含まれます。しかし、自発的に「持ち帰り残業」をした場合は微妙。仮に上司がその事実をまったく知らなければ、会社の指揮命令下にあるとは認められにくいでしょう。

問題なのは、「残業禁止」を掲げ職場からの強制退出を迫る一方で、明らかに所定の勤務時間内では終わらない仕事量を課している場合。

この場合、 実質的には「家に帰ってやれ」と言っているようなもの。こうした状況であれば、よほどの事情 がない限り「持ち帰り残業時間」は労働時間と判断されるでしょう。“よほどの事情”とは、同僚に比べ、あなたの仕事が格段に遅い…といったケースです。

ただ、仮に訴訟を起こしても、「明らかに所定時間内では終わらない仕事量が与えられていた」ことを証明していくのは非常に難しいのが実情。自宅での「持ち帰り残業時間」も、自己申告によるしかありません。

中には、こうした立証の難しさを承知の上で、表向きは「残業禁止」の大義名分を掲げ、事実上「持ち帰りサービス残業」を強制している企業も。ある意味、会社での深夜残業を放置している企業よりタチが悪いと言えるでしょう。そんな会社を裁判で訴えたところで、すんなり残業代を支払うはずもなく…。

では、サラリーマンは泣き寝入りするしかないのでしょうか?

「そんなことありません!」と言いたいところですが、現実にはそうした側面も否定できません。でも、こうした現状を打ち破るためにも、「働いた分の賃金は会社に請求して当然だ!」という権利意識をしっかりと持ち、悪しき風習を変えていかなければなりませんし、我々弁護士の持つ問題意識もこの点にあると言えます。

サラリーマンの対抗手段として覚えておきたいのは、「持ち帰り残業」をした場合は、業務時間や業務内容をきちんと記録しておくこと。…今まではそれしか対抗策がありませんでした。

しかし、残業代は2年間で時効にかかってしまいますので、「後で請求してやれ」と思っていたら危険。実際、辞めた後に会社を訴える人は少なくありませんが、もう大半が時効で消滅していた、なんてこともザラにあります。その時後悔しても、時すでに遅しです。

最近、経済界からはホワイトカラーエグゼンプション(残業代ゼロ)の導入なんて声も出ているので労働者としては油断禁物。いざという時に身を守るための備えを怠らず、政治の動きも注視しておいたほうが良いでしょう。

※この記事は2013年5月に取材・掲載した記事です

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