仲良しの顔が思い出せない…100人に1人の割合でいる?

顔を覚えられない「相貌失認」とは

2015.09.10 THU


顔が覚えられない相貌失認。あくまで“顔のみ”の記憶ができない症状で、脳全体の記憶力とは無関係なようだ 写真提供:すなべしょう / PIXTA(ピクスタ)
「一度会った客の顔は忘れない」――世の中にはそんな凄いホテルマンもいるという。一方で、「なかなか顔を覚えられない…」なんて話もよく耳にする。会社員だと「真剣味が足りないからだ!」なんて上司に説教されたことがある人もいるかもしれない。

けれど、あまりに顔を覚えられない場合、単なる得意・不得意ではなく、「相貌失認」という脳の障害かもしれないという。俳優のブラッド・ピットも、相貌失認の可能性があると告白しているとか。

顔が覚えられない相貌失認とは、どんな原因で起こるのだろうか。上本町わたなべクリニックの渡邊章範先生に聞いた。

「人間の脳は、目・鼻・口の特徴を一瞬で判別して、人の顔を記憶していきます。その作業は脳の『顔領域』という部分で行われるのですが、相貌失認は、顔領域の機能が弱いために起こる症状です。生まれる前の脳形成段階で発症する先天的なものと、事故や病気で脳に障害を受けた際に起こる後天的なものがあります」

顔領域の機能には多かれ少なかれ個人差があり、極端に弱い場合は相貌失認となる。代表的な症状は、「仲の良い知人の顔を思い出せない」というもの。これは「100人に1人ほどの割合でいる」と渡邊先生は言う。だが、なかにはさらに深刻な場合もあるようだ。

「たとえば、あなたが店員で、対応していた常連客が少しの間、店外に出たとします。しばらくしてその客が戻ってきても、先ほどの客だと気づけないとしたら、深刻な相貌失認だと考えられますね。こういった症状は、1万人に1人ほどの割合でいます」

あまり知られている症状ではないため、本人にその自覚がないケースも多いとか。なかには塾講師として働き始めてから、子どもの顔を覚えられず気づいたケースもあるという。ただ、たとえ先天的な相貌失認の人でも、体型や髪型といった“顔以外の情報”を複合すれば、日常生活ではある程度記憶できる。それが、多数の人と会う仕事に就くとカバーしきれなくなり、初めて気づくようだ。

では、相貌失認かどうかを自己診断したり、治したりすることはできるのだろうか。

「自己診断の方法としては、海外映画を見て、登場人物の顔をきちんと覚えられるかどうか。なかなか覚えられない人は、相貌失認が疑われます。先天的な相貌失認を完全に治すことはできませんが、人の顔をよく観察するなどの訓練で一定の効果が出る人もいます。また、髪型や体型などの周辺要素で判別する力を養うことが必要です。海外映画をたくさん見るなど、覚える練習をすれば能力が向上するでしょう」

後天的な相貌失認においては、たとえば脳腫瘍などで顔領域が悪影響を受けているケースもある。そのため、手術で腫瘍を取り除くと、相貌失認も治る可能性があるようだ。

認知度が低いこともあり、気づきにくい相貌失認。心当たりのある人は、医師に相談してみるのが賢明だろう。
(有井太郎)

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト