専門家に話を聞きました

釈由美子さんが利用し話題「さい帯血バンク」とは?

2016.09.08 THU


ママと赤ちゃんを結ぶさい帯(へその緒)と胎盤の中に含まれる血液のことを「さい帯血」といいます。出産の瞬間にしか採取することのできないこの貴重な血液は、白血病をはじめとする血液疾患や再生医療に役立てることができます。出産後に数分で採取でき、母体への痛み、負担はありません。
今年6月に女優の釈由美子さんが我が子のためにさい帯血を採取し、保管されたことで注目を集めました。実はこのさい帯血を保管する方法は、国の許可を受けた「公的バンク」と民間の企業が運営する「民間バンク」の2種類があります。それぞれの専門家に話を伺いました。


病気で苦しむ第三者のために「寄付」する【公的バンク】


まずは全国6カ所のうち4カ所の公的バンクを運営している日本赤十字社を訪ねました。お話を聞かせてくださったのは、高梨美乃子先生です。

日本で公的バンクが設立されたのは1995年。保管されたさい帯血は、主に白血病など血液のがんの患者さんの治療に使われます。献血と同じで、この場合のさい帯血は第三者への寄附という扱いで、所有権はさい帯血バンクに移ることになります。現在、約90の医療機関(産婦人科)と提携しており、2016年8月現在、公的バンクには約1万個のさい帯血が保管されています。これまでに累計約1万3000個が実際に治療に使われています。

公的バンクにさい帯血を寄附したいと考えた場合、まずは提携している医療機関で出産することが前提となります。さらに、血液の中に含まれる「細胞数」が重要で、一定数以上の細胞数がなければ、成人男性など体の大きな患者さんへの移植には使えないそうです。「細胞数には個人差があり、健康状態等が影響し、日ごろの努力などで増やせるものではないんです」と高梨先生。たくさんのママにご協力いただいているものの、治療に使用可能な質の良いさい帯血として保管できるのは、そのうちの5分の1~10分の1程度なのだそうです。

高梨先生からは次のようなメッセージをいただきました。
「公的バンクは対応できる病院は限られていますし、採取してみないと実際に保管できるかどうかは分かりません。そのため、私たちも強く呼びかけるというよりは、無理のない範囲でお願いしているという現状です。もし、出産する病院が公的バンクと提携していた場合、ご検討いただけると幸いです」


ママが贈る最初のお守り。我が子のために「保管」する【民間バンク】


公的バンクが第三者への寄附であるのに対し、民間バンクは万が一の時に備えて、民間企業が展開しているさい帯血保管サービスです。我が子に掛ける保険といったイメージでしょうか。
民間バンクの血液はご自身の子ども、兄弟姉妹など血縁者への使用が目的となります。今、日本で民間バンクの事業を担っているのは3社ありますが、その中で約90%のシェアを占めているのが東京・港区のステムセル研究所です。釈由美子さんが利用したのもこの会社です。ステムセル研究所は、法改正に則り、今年2月に厚生労働省よりさい帯血の保管と医療機関への提供が可能な機関として認められています。
公的バンクが白血病や血液疾患を主な使用目的としているのに対し、民間バンクは主に自閉症や脳障害、そして将来に向けての再生医療を対象にしています。アメリカなど海外の民間バンクでは脳性まひなどに対する臨床研究も進んでいます。

ステムセル研究所には設立から18年で約3万8000個のさい帯血が保管されています。実際に治療に使われたのは9例。脳性まひや、子どもが2歳の時に細菌の感染によって脳障害が残り、さい帯血を利用してアメリカで治療した例などがあるそうです。
ステムセル研究所でさい帯血を保管する場合、10年間で21万円(分離費用+10年保管費用)の保管料が発生します。1ヵ月あたり、1750円。10年以降も保管を希望する場合は、更新料を払い継続することになります。
決して安い金額ではありませんが、さい帯血を保管しているママたちは、将来自分の子どもが病気にかかったときのためや、祖父母が孫へのプレゼントとして費用を負担する場合が多いそうです。また、釈由美子さんがブログで「我が子に贈る最初のお守りに」と書かれていたように、子どもに万一のことがあった場合、後悔したくないと考えるママもいます。

5年後、10年後の医療がどこまで進化するかは未知数です。その可能性を信じてステムセル研究所では、医療機関と連携し、研究を進めているところだといいます。
「まずはさい帯血について多くの人に知ってほしい。子どもに健やかに育ってほしいと願うママの助けになれたらと思っています」と担当者は話してくださいました。


選択に正解はありません。出産前に正しい知識を


公的バンクと民間バンクの両方に話を聞いて、使用目的や使用対象、役割がそれぞれ異なることが分かりました。何より違いを理解することが大切で、どちらが良い、悪いなどと比較するべきものではありません。

さい帯血を採取できるのは出産時のみのチャンスなので、ママにはしっかり考えて、自分が「良い」と思った選択をしてほしいと思います。公的バンクであっても、民間バンクであっても、また保管しなくても、選択に正解はありません。今はまだあまり知られていませんが、すべてのママがさい帯血バンクについて正しい知識を持って出産に臨み、それぞれの選択を尊重できるような状況になることが理想なのではないかと思いました。もし興味を持たれたなら、担当の医師に話をしたり、情報を収集したりしてみてください。(文・尾越まり恵)

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