【予防接種の最新知識4】

なぜ、自然感染で免疫をつけるのではダメなの?

2017.01.05 THU


子どもが麻疹(はしか)に自然にかかって治ると、子どもの体内に麻疹に対する免疫ができ、次に麻疹にかかる可能性はほとんどなくなります。ワクチンもこうした自然感染と同じ仕組みで、私たちの体内に免疫をつくり出します。
「それなら自然感染でいいのでは?」と言う人もいますが、本当はどうなのでしょう? 神奈川県川崎市の「かたおか小児科クリニック」院長の片岡正先生に教えていただきます。

自然感染は病状が非常に重くなる可能性が高い!

――予防接種を受けなくても、自然感染で免疫をつければいいのでは、という意見も耳にします。どうなのでしょうか?

「自然感染でいいとおっしゃるかたの多くが、おたふくかぜや水痘(みずぼうそう)を念頭に話をされていると思います。実際、自然におたふくかぜや水痘にかかっても、多くのかたは軽くすむでしょう。
しかし、おたふくかぜに自然感染すると、1000~1500人に1人の割合で難聴になることが知られています。髄膜炎(ずいまくえん)や精巣炎を起こすこともあり、とくに大きくなってからかかると症状がとても重く大変です。
つまり、自然にかかると症状が重くなったり後遺症が残ることが、まれならずあるのです。99%の人は軽くすんでよかったと思えますが、1%の人は重篤になります。1%といっても全国民で見れば大人数ですから、あなどっては危険です」

――予防接種をすることで症状が重くなることはないのですか?

「コントロールされた安全な状態で免疫をつくりだせるのが予防接種です。病気にかかることを防げますし、万一かかっても軽くすみます。ほかの人へうつさせない点も、ワクチンの利点です。
いきなり流れの速い川や波の高い海で泳ごうとすると、おぼれる可能性が大きいです。でも、おぼれる心配のないところで泳ぎを覚えてから川や海に入れば安全です。そのおぼれる心配のない場所が予防接種なのです」

今、日本に患者がいなくても、ウイルスはいつ入ってくるかわからない!

――ポリオなどは今の日本にはない病気だから予防接種は必要ない、との考え方もあるようです。本当ですか?

「現在、全世界のポリオの患者は、ナイジェリア、アフガニスタンなど一部の地域だけで、人数を数えることができるくらい少なくなっています。しかし、それでも2011年には中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で4人の子どもがポリオに感染し、麻痺を発症しました。それまで10年以上、中国国内でのポリオ発症例はなかったので、外国から人や物と一緒にポリオウイルスが入ってきたと考えられています」

――世界各国の人が訪れる日本でも、いつ、そのようなことが起こるかわかりませんね。

「ポリオそのものを治す薬はないので、発病したらたいへん危険です。それを防ぐには、予防接種しかありません。
日本でポリオにかかる人がいなくなったのは、ワクチンのおかげで感染を防ぐことができているからです。みんなが免疫を持っていなかったら、次から次へとうつっていく可能性が今でもあります。
現在の日本は確かにかなり安全ですが、まだ完全とは言えません。当分の間は世界中でポリオの免疫をしっかり保つことが必要です。もしもワクチンをやめて包囲網のどこかに穴があいたら、その小さな穴から一気に広がってしまう可能性があることを覚えておきましょう」

“自然感染”という字からはナチュラルで安心なイメージを受けますが、じつは子どもを危険な状態にしてしまう可能性があるだけでなく、まわりの人々へも大きな迷惑をかけることになるのですね。感染症の流行はみんなで防ぐもの。予防接種で安全に確実に免疫をつくっていきたいですね。
次回は「出産後、予防接種の準備はいつから、何をすればいいの?」について解説します。お楽しみに。

(取材・文 かきの木のりみ)

(文・たまひよトレンド編集部)

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