生命保険はボクらを守ってくれるの?

第2回 保険料ってどうやって決まるの?

2009.02.09 MON

生命保険はボクらを守ってくれるの?

生命保険にはどんな種類があるんだろう?



保険料の仕組みを知らないボクらにとって、生命保険の保険料は、営業が提示した金額を払う場合がほとんど。具体的な金額を調べてみると、30~34歳で1年間に支払う保険料の平均は35万6000円(生命保険文化センター調べ※)。一月当たり約3万円になる。一方、最近はネットで保険料を見積もってくれるサービスもあり、試しに計算してみるとボクの生命保険の保険料は月額およそ4000円という結果が…。どーしてこんなに開きがあるのか?

テレビやパソコンなどの家電なら、大手の量販店に行けばなんとなく商品の相場が分かる。パソコンなら処理速度の違いとか、テレビなら画面の大きさ、画質の差などで価格の違いも理解できる。でも、生命保険の保険料は…。保険料の価格差って何が原因なんだろう?

そこで、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)など生命保険に関する書籍を出されている後田亨氏に保険料の価格差について聞いてみました。

「一言で生命保険といってもいくつかの種類があります。大きく分けると3つ。死亡保険、医療保険、生存保険というものですね。まず、この種類を理解せずに生命保険が高い、安いといっても意味はありません」

死亡保険とは、自分が死んだときに家族に保険金が支払われる保険。医療保険は、自分が病気やケガで入院した場合に保険金が支払われる保険。ここまでは問題なく理解できる。しかし、生存保険ってどんな保険なんですか?

「契約者が一定の年齢あるいは一定期間後まで生きていた場合に支払われる保険です。生存保険には、年金のように毎年(毎月)分割で保険金が支払われるタイプのものもあります」

ということは、生きていればずっともらえるんですか?

「いえいえ、年金保険といっても支払われる期間は契約したときに決まっています。また、純粋な生存保険だけという商品はまれで、通常は死亡保険とセットになった保険商品が一般的です。したがって、生存保険とは将来に備えた“貯蓄”的な要素を持つ保険なのです」

なるほど、確かにこれらの違いがよく分からないまま表面上の価格だけを比べても意味ないですね(冒頭の1年間に支払う保険料の平均35万6000円にも年金タイプの生存保険が含まれていました)。

「さらに死亡保険と医療保険には、一定期間(例えば10年間、60歳までなど)を保障する定期保険と、一生涯を保障する終身保険があります。死亡保険と医療保険の場合、月々払う保険料は掛け捨てが基本になりますが、終身死亡保険だけは一部の例外を除き、ほぼ確実に保険金がもらえます。人は必ず死にますからね。終身死亡保険は、保険に入った人の遺族に確実に保険金が支払われるので、当然月々支払う保険料も高くなります」

ここまで分かれば、なんとか保険料の比較はできそうですね。
生命保険の商品には、死亡保険、医療保険、生存保険が組み合わされたものが多く、保障の内容をきちんと理解するのが難しい
「と、言いたいところなのですが、実はそう簡単でもないんです。生命保険会社から販売されている保険商品は、死亡保険、医療保険、生存保険を組み合わせて販売されているものがほとんどだからです。例えば、多くの方が契約している「定期付き終身(定期保険特約付き終身保険)」というタイプの保険があるのですが、これは上記の3つの保険とさらに“定期”“終身”の保険が組み合わされた非常に複雑な商品なのです」

そりゃややこしいですね! 保険を契約するときは、自分がどの保険に入るべきなのかをきちんと確認しなくては…。

生命保険と一言でいっても、いろいろな種類があるんですね。


※平成18年度「生命保険に関する全国実態調査」生命保険の世帯年間払い込み保険料(2人以上世帯) 調査時期/平成18年4月21日~6月19日、サンプル数/4088、調査地域/全国(436地点)

保険料は生命保険会社が勝手に決めてるの?



生命保険には、自分が死んだときに家族に保険金が支払われる死亡保険、自分が病気やケガで入院した場合に保険金が支払われる医療保険、一定の年齢あるいは一定期間後まで生きていた場合に支払われる生存保険がある。

では、それぞれの保険料はいったいどうやって決まるのだろうか? 『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)の著者である後田亨氏に聞いてみた。

「保険の基本は、保険の契約者が万が一に備えて月々支払う保険料を集めて、実際に万が一のことがあった場合に保険金として支払うというシンプルなものです。問題はその万が一がどのくらいの確率で起こるのかいうことで、その確率さえ分かればおのずと契約者に支払う保険金は計算できます。あとは、その保険金の総額を想定する契約者数で割れば、月々支払う保険料が決まります」

確かにそうですね。でも、その確率ってどうやって出しているんですか?

「実はその確率が分かる資料があります。それが『国民生命表』というものですね。5年に1度行われる日本の全世帯を対象にした国勢調査から得られたデータで、死亡数を人口で割って算出する男女別の各年齢の死亡率(それぞれの年齢ごとの一定の人口数に対するその年の死亡者の割合のこと)が分かるものです」

国民生命表、分かりやすいけどすごいネーミング…。でも、全世帯を対象にしたデータなら信頼度が高いですね。
「国民生命表」(第20回・2007年7月公表)と、死亡保険用の「生保標準生命表2007」(2007年4月改訂)の男性の死亡率の比較
「そうですね。でも、あくまで過去の実績をベースにした確率なので、実際は多少の誤差が発生する可能性はあります。万が一、将来の死亡率が『国民生命表』より高ければ、生命保険会社が赤字になり、最悪経営できなくなる可能性があります。なので、実際の保険料を計算するときは、『国民生命表』の数字より多少死亡率が高くなっている日本アクチュアリー会(※)作成の『生保標準生命表』というものを使います」

では、30歳男性が死亡した場合に1000万円の保険金が支払われる死亡保険を例にして保険料を計算してみよう。『生保標準生命表』によると、30歳男性の死亡率は「0.00086」。これは1年間で10万人のうち86人が死亡することを意味する。

例えば、その死亡保険に30歳の人が10万人加入していたとすると、保険金を支払うためには1000万円×86人(予測される1年間の死亡者数)で8億6000万円の金額が必要になる。この8億6000万円を契約者10万人で割ると8600円。つまり、1年間で8600円の保険料(月々約716円)を各契約者が支払う計算となる。

「実際は同年齢の人だけが加入する保険はほぼないので、保険料の計算ではさらに各年齢の死亡率の平均値をとる必要がありますし、生命保険会社は集めた保険料を運用しているので、その利率も計算する必要があります。ただ、この計算でだいたいの保険料のイメージはつかめるのではないでしょうか」

はい、死亡保険の保険料についてのイメージはつかめたような気がします。

「ここまでは死亡保険の話でしたが、医療保険も計算方法は同じです。この場合は使う数値を入院や手術率に置き換えて計算します。これは厚生労働省の患者調査などのデータからはじき出された確率ですね」

生存保険はどう計算するんですか?

「生存保険は死亡保険で使った“死亡率”の数字を使うんです。死亡率が1%なら、1年後に100人のうち99人が生存していることが分かりますから。生存保険と死亡保険は表裏一体の関係なんです」

なるほどよく分かりました。これで月々の保険料がどう決まるのか分かったし、納得して保険が選べそうです。

「待ってください。いままで説明したのはあくまで純粋な保険料がどう決まるかの話です。つまり、保険の“原価”部分(これを生命保険では「純保険料」と呼ぶ)の話。パソコンやテレビなどの家電、お米や野菜などの食品だって、原価以外に人件費、流通費、宣伝費などがかかります。保険も同じで、この「純保険料」以外にいろいろコストがかかっています」

保険の営業の人件費や、CMを流すための宣伝費…これらも実は保険料に加えられている。さらに、生命保険会社のビルの家賃なんかも? 今回計算したのはあくまでも「原価(純保険料)」というわけか…。

確かに原価以外のコストも理解しないと納得して保険に入れないかも。生命保険料、なかなかあなどれません。


※生命保険にかかわる死亡率などの確率から月々の保険料を算出するなど、保険数学の専門家を「アクチュアリー」と呼ぶ。日本アクチュアリー会は1899年に設立されたアクチュアリーのための社団法人で、その教育・育成を目的にしている。 死亡保険、医療保険、生存保険と大きく3種類に分かれる生命保険。自分がどの保険に入ろうとしているのかをはっきりさせることが、納得して保険を選ぶための第一歩であることが分かりました。さらにどう決まるのかわからなかった保険料が、国勢調査などから分析された死亡率をもとに計算されていることは意外!

今回、生命保険の“原価”部分の仕組みはだいたい理解できました。でも、パソコンやテレビなどの商品同様、生命保険にも人件費、流通費、宣伝費などがかかっている。そのあたりのコストが理解できないと、本当に生命保険に納得して入ることはできない気がします。次回はそこから調査を開始します。

今後の調査の参考に、皆さんの生命保険に関する疑問や意見を聞かせてください。お待ちしています!

取材協力・後田亨氏

関連キーワード

ブレイクフォト