生命保険はボクらを守ってくれるの?

第4回 保険会社が破綻したら保険はどうなる?

2009.03.09 MON

生命保険はボクらを守ってくれるの?

保険会社の破綻の原因は資産運用の失敗だった!?



最近、大手企業の赤字決算発表のニュースをよく見る。生命保険会社も例外でなく、「大手生保3社が赤字に転落した」という報道があったばかりだ。昨年10月には1911年創業の中堅生保である大和(やまと)生命が破綻(はたん)してしまったし…。

でも、どうして生命保険会社は破綻するんだろう? 保険は、死亡率や入院率などから算出された保険料をボクらから集めて、万が一の不幸があった人や家族に保険金を支払うのが基本。保険金を確実に支払うために、死亡率や入院率は実際より高く設定されているはずだし、普通に考えると破綻する要素はないように思える。

そこで、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの生命保険に関する書籍を出している後田亨氏に保険会社が破綻する理由について聞いてみた。
金融情勢の悪化で、生命保険会社の資産運用がうまくいかなくなるケースが今後も出てくるかも…
「確かに保険の基本を考えれば、保険会社が破綻することはないのでは…と思うのも無理はありません。しかし、保険会社は皆さんから集めた保険料を国債などの公社債や株式などに投資して資産運用しています。皆さんの保険料は、この資産運用で出る利益をあらかじめ保険会社が予想して、その分が割り引かれて設定されています。この保険会社が予想した運用利回りのことを『予定利率』といいます。破綻する大きな原因の一つに、この予定利率を確保するために、保険会社が無理な資産運用を行うことが考えられるんです」

なるほど、資産運用の失敗が原因なのですね。でも、そんな無理な資産運用をしなければいいじゃないですか。

「生命保険の中には『個人年金保険』と呼ばれる種類の保険があるのをご存じですか? この保険は、ある一定の期間、月々保険料を払っていき、満期になると毎月(毎年)決まった金額が年金のように支払われるものです。当然、個人年金保険にも予定利率があります。ただし、個人年金保険は、貯蓄を目的とする保険なので、定期保険や国債など、他の金融商品とどうしても比較されてしまいます。そのため、顧客に魅力的な商品だと思ってもらうためには、保険会社は少々無理をしてもこの予定利率を高めに設定してしまう場合があります。ちなみに昨年11月に破綻した大和生命は、平均予定利率が3.35%(2008年3月末)と高く設定されていました。」

そうなんですか。でも、資産運用がうまくいけばいいんですよね。

「予定利率は、基本的には商品の設計時に見込んだ利率がそのまま適用されます。不況になって株価や国債、金利が下がっても、契約期間中は固定されたままです。保険という商品の性質を考えれば、保険会社の資産運用は、リスクの少ない安全な金融商品などで行っておくべきです。しかし、不況で金利が下がると、不動産などの資産をあまり持たない体力のない保険会社は、運用益を確保するために外国の証券などリスクの高い金融商品にどうしても手を出してしまう。大和生命の場合だと、リスクの高い外国の証券などに全体の資産の4割以上も投資していました。結果として、資産運用に失敗して、破綻という道をたどったのです」

保険会社だから、安全な資産運用をしてくれているわけじゃないですね。一方で、保険会社の健全な運営のために、最近は証券化商品やサブプライム関連投資状況の公開を金融庁が促進するなどの動きも始まっているとのこと。今後はさらなる情報公開を期待したいところです。

保険会社が破綻したら契約している保険はどうなるの?



最近では新聞を読んでもテレビのニュースを見ても「100年に一度の大不況」というフレーズが必ずといっていいほど登場する。銀行や保険会社がつぶれることはないなんて思えたのは昔の話。昨年10月には中堅生保である大和(やまと)生命も破綻(はたん)してしまった。銀行が破綻した場合、預金保険法で1000万円までの預金は保護されるって聞いたことがあるけど、生命保険会社の場合はどうなんだろう? 将来、自分の契約している生命保険会社がつぶれちゃったら、今まで月々払っていた保険料が無駄になってしまうの?

万が一の保険に、万が一が起こったらどうなってしまうのだろうか? 『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの生命保険に関する書籍を出している後田亨氏に聞いてみた。

「生命保険会社が破綻したからといって今まで払ったお金が全部無駄になってしまう、ということはありません。加入している生命保険の書類を見直してみてください。『責任準備金の90%までは補償される』と書いてあるはずです」

あの~“責任準備金”って、何ですか?

「責任準備金というのは、生命保険会社が将来の保険金などの支払いを確実に行うために、保険料の中から積み立てておくお金のことです。日本で事業を行う生命保険会社に加入が義務づけられている“生命保険契約者保護機構”という組織があり、そこで責任準備金の90%を補償してくれるのです」

保険会社も万が一に備えているんですね。ということは、つまりボクらが払った保険料の9割は補償されるんですよね。

「残念ながら、そうではないんです。契約時の予定利率(保険会社が予想した運用利回りのこと)が引き下げられる場合があります。たとえば、契約時の予定利率が2%だったものが保険会社の破綻で0.5%引き下げられ、1.5%になったりすることがあります。予定利率が下がると、先ほどの責任準備金の積立額も減って、お客様に支払う保険金の額も下がることになるんです」

予定利率の引き下げって、そんなに重要なんですか? コンマ数%なんてたいしたことなさそうだけど…。
保険会社が破綻した場合、それまで積み立てていた責任準備金の90%までが補償される。さらに、その後の予定利率も低くなることがある
「長期間の積み立てに金利が与える影響は大きいです。仮に30年間で1000万円の満期金受け取りに必要な積立額は、1年複利(※1)で運用する場合、利率が2%だと約730万円。1.5%だと約790万円、1%では約860万円です。利率が下がるほど、契約者の負担が増えます。1%の差でも130万円ほど違ってくるわけです。責任準備金の9割を補償といっても、予定利率の切り下げをともなう場合、かなり不利な契約内容に変更されると理解すべきです」

なるほど、そう考えると受け取れる金額にかなりの差が出てきますね。

「影響が大きいのは、終身保険、養老保険(※2)、個人年金保険などです。特に長期にわたる契約では、金利変動のリスクがともないます。その一方で、掛け捨ての死亡保険や医療保険はそういった心配が少ないですね。ほとんどの人が受け取ることになる貯蓄タイプの保険と違って、万が一、不幸があったときだけ保険金を支払えばいいので、責任準備金を多く用意しておく必要がありません」

掛け捨てというともったいない気がしてたけど、保険会社に万が一が起こったときはダメージが少ないともいえるんですね。


※1 利子を元金に組み入れる方式。利子を元金に組み入れることで、次に受け取る利子が増えることになる。

※2 契約者が保険期間中に死亡したときには死亡保険金が支払われ、満期時に生存しているときには満期保険金が支払われる保険のこと。 保険会社に毎月払っている保険料を運用して増やしてもらえるのはうれしいけど、予定利率を確保するためにリスクの高い金融商品に手を出すことがあったとは初めて知りました。その結果、最悪の場合、資産運用に失敗して保険会社が破綻してしまっては、何のための保険なのかよく分からないですね。

とはいえ、自分が契約している生命保険会社が破綻した場合でも、積立金である「責任準備金」の90%までは補償されることを聞いてひと安心。ただ、予定利率が下げられると、先に挙げた積立部分がある保険などは結構なダメージが…。将来に備えるとき、生命保険と銀行預金のバランスを考えることが大切なのかもしれません。

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