生命保険はボクらを守ってくれるの?

第10回 保険商品って保険会社で違いはあるの?

2009.06.08 MON

生命保険はボクらを守ってくれるの?

保険の自由化で様々な保険商品が登場!



保険なんて、どの会社の商品も似たようなものなんじゃないの?  保険にあまり詳しくないボクらは、これまで漠然とそんなふうに考えていた。ただ最近は、ネット生保もあるし、生命保険会社の営業担当が自動車保険を案内していたり、実態は違ってきているらしい。そこで、詳しい事情を『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者である後田亨さんに聞いてみた。

「確かに十数年前までは、どの保険会社の保険商品もたいした違いはありませんでした。ところが、1995年に保険業法が改正され、保険業界でも少しずつ自由化が進み、いまでは保険会社ごとに独自の保険商品が販売されるようになってきていますね」
保険業法の改正で自由化が進む保険業界。そのおかげで、個性ある保険商品が登場し始めている
後田さんによれば、保険の自由化は、3つの大きな柱で成り立っているという。(1)保険分野の自由化、(2)販売チャネルの自由化、(3)保険商品と保険料の自由化、である。

それぞれのポイントを簡単にまとめると、まず(1)の「保険分野」とは、保険の種類のこと。一口に保険といっても、業界では3つの分野に分けて扱われている。第一分野といわれる生命保険、第二分野といわれる損害保険、第三分野といわれるその他の保険(がん保険・医療保険・傷害保険・介護保険など)。保険業法が改正されるまでは、保険会社はそれぞれの分野でしか商品を販売できなかった。つまり、「○○生命」などの生命保険会社は生命保険だけを、「××海上火災」などの損害保険会社は損害保険だけを販売していたわけ。それが自由化により、生保と損保はそれぞれ子会社をつくることで、いままで扱えなかった保険を扱えるようになったという。

「具体的には、生命保険会社が子会社として損害保険会社を設立し、自社の営業担当に子会社の代理店資格を取らせることで、生保と損保を同時に売れるようにしたんです。また、かつて第三分野の保険は、当局の国内中小生保と外資系保険会社への配慮から、大手生保は単品販売ができませんでしたが、2001年以降は、国内の生命保険会社や損害保険会社でも扱えるようになりましたね。近年、契約数を伸ばしているのが、がん保険や医療保険など第三分野の保険です」

2つ目の「販売チャネルの自由化」とは、銀行や信用金庫の窓口でも、生命保険や損害保険を販売できるようになったことを指す。

「当初、銀行窓口で販売できる保険は、住宅関連の信用生命保険や長期火災保険などに限られていましたが、扱える商品は徐々に拡大していき、2007年12月から、保険商品の販売が全面解禁になりました。また、ネットで保険が販売できるようになったのも、この販売チャンネルの自由化によるものです」

最後に、ボクら消費者にもっともかかわりが深いのが、3つ目の「保険商品と保険料の自由化」だ。かつて金融庁の認可を受けないと販売できなかった保険商品が、自由化により、一部ではあるが「こういう商品を作りますよ」という届出だけで販売が認められることになり、自由な商品設計が可能になった。事実、非喫煙者なら保険料を安くするなど、いままでになかった新たな保険商品も生まれているのだ。

日頃、あまり馴染みがないので知らなかったけど、保険業界にも規制緩和や自由化の波が着実に訪れている。ボクらも、「保険なんてどれも似たようなもんでしょ?」なんていっていないで、自分にとってどれがふさわしい保険商品なのか、きちんと見極めなければならない時代が来ているんですね。

いま注目したいのはシンプルで安い保険



1995年の保険業法改正から始まった保険の自由化で、ようやく会社ごとに特色のある商品や独自のサービスが提供できるようになった保険業界。でもそれって、民間企業としてはあまりに当然のことじゃないの? 他の業界では、新商品開発や価格競争で同業各社がしのぎを削ってきているんだから。

保険業界はなぜ、1995年まで自由な競争ができなかったのか。『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者である後田亨さんに、保険業界の“これまで”を聞いてみた。

「保険業界が“護送船団方式”で国に守られるようになったのは、第二次大戦後。敗戦で、それまでの保険証書は紙くず同然になってしまいましたが、なんとか再び保険業界に信用を取り戻す必要があった。なぜなら、それによって国民から大量の資金を預かることができ、それを他の産業に貸し付けることで日本経済の復興が期待できるから。それを狙った旧大蔵省が、保険をはじめとする金融業界全体に対して、保護育成政策をとるようになったのです」
“護送船団方式”によって横並びだった保険業界。自由化されたとはいえ、消費者にとってまだまだベストな状態ではない。
護送船団方式では、落伍者を1社も出さずに、業界全体で安定的に発展していくことが重要。そのため旧大蔵省は保険商品についても認可制をとり、どこかの会社だけ儲かったり破綻(はたん)したりしないよう、各社横並びの商品を販売させた。つまり事実上、自由な競争を禁じていたわけだ。

「ところが90年代半ばになると、世界的な規制緩和の動きのなかで、この護送船団方式は明らかに時代遅れになっていました。そこでわが国も金融市場のグローバル化を推進するため、金融ビッグバンという制度改革を実施し、保険業法を改正することになったんです」

それでやっと、保険業界でも自由な競争ができるようになったんですね。

「とはいえ、保険業界にはまだ世界的には珍しい点も残っています。たとえば、日本の大手生保などは、『株式会社』ではなく『相互会社』の形態をとっているところもあるんですよ」

相互会社とは、営利も公益も目的としない中間法人。そのため、各契約者が社員であり(保険の営業担当は“職員”と呼ばれる)、株式会社のような株主総会は行われない。そのかわり相互会社の最高意思決定機関として「総代会」が行われているが、実質的に保険会社が「総代」や総代を決めるのに関わる「選考委員」を選ぶため、経営状況を客観的に監視・監督するのが難しいといわれている。

また、後田さんによれば、自由な競争ができるようになった半面、各社の保険商品が複雑になって消費者にわかりづらくなってしまったというデメリットも生じたという。

「保険の自由化は、業界内の競争を促進することで、利用者へのサービス向上を目指していました。ところが実際に行われたのは「付加価値競争」だった。保険会社は自社商品を他社と差別化するため、成人病、介護など、さまざまなオプションを増やした。結果、消費者には、これまで以上に保険がわかりにくくなった。何より、追加されるオプションのおかげで、本来、自由化が後押しするはずの「価格競争」が進まないことになったのです」

そんななか、後田さんが評価しているのは、販売チャネルの自由化から、シンプルな通販専用の保険が登場したこと。対面販売にかかる経費をカットした分、保険料が大幅に安くなった。そして、会社自体がネット販売に特化することで、さらに低価格を実現したのがネット生保だ。

「ネット生保は、営業担当が説明しなくても消費者が理解できるよう、わかりやすい商品設計になっています。しかも、保険料が安い。消費者側から見た保険の自由化による一番のメリットは、こうした安くてわかりやすい商品が誕生したことかもしれませんね」

保険の自由化により、安くてシンプルなネット生保が誕生したことは、ボクたち消費者にとってうれしいニュース。保険の自由化が、消費者のメリットにつながることを期待したい。 1995年の保険業法の改定でスタートした保険の自由化により、保険商品も各社横並びのものではなくなりつつあることがわかりました。

各社で新商品開発、価格競争が進み、ボクらにとって魅力的な保険商品が登場することは大歓迎ですが、逆に、商品が複雑になり、保険選びが難しくなるはなんとかしてもらいたいところです。

今後の調査の参考に、生命保険に関する皆さんの疑問や意見を聞かせてください。お待ちしています!

取材協力:後田亨氏

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