カラダ資本論

第2回 現代人の「脚力」は大丈夫?

2009.06.26 FRI

カラダ資本論


石井直方教授の最新刊『DVD付 スロートレーニングパーフェクトプログラム』(藪野美生との共著/講談社/1800円) 「一生太らない体」と「小顔」が手に入るトレーニングを紹介。

現代のビジネススタイルが脚力に与える影響とは?



イマドキのビジネスマンは、とかく運動不足になりがち。かくいう私などその代表格で、ライターという、ある意味特殊な仕事がら、一日の大半をパソコンの前に座ったままで過ごしています。こんな生活が健康に良くないとは分かりつつ、なかなか一歩が踏み出せないのですが、やっぱりこんな生活って将来のカラダに影響がありますよね。「確かに、筋力、特に腰から太ももにかけての筋肉に関して大きな影響があるでしょうね」

そう話してくれたのは、筋肉博士としてテレビなどにも多数出演している東京大学の石井直方教授。「若いからといって自分の筋力を過信していると、将来、必ず痛い目に遭う」と警告しています。

「人間が歳をとっても健康で活動的でいるために重要なのは、上半身と下半身をつなぐ大腰筋、お尻の部分の大臀筋、太もも前の大腿四頭筋という大きな筋肉。これらは、座った状態から地面を蹴って立ち上がるという人間の基本的な運動を支える筋肉で、ヒザや股関節を曲げ伸ばしするときに不可欠です。ところが、もっとも重要なこれらの筋肉は、何もしなければ30歳以降、1年ごとに1%ずつ弱く細くなるということが分かっています。75歳のときには45%減と、30歳の半分ほどになってしまいますから、片足分の筋肉で歩かなければなりません」

40歳でも10%も減少してしまうんですか!? それって結構恐ろしい数字ですね。
脚力をチェックする方法。イスに座った状態で片足を上げ、そのまま立ったり座ったりする。20代なら連続して20回以上、30代なら連続15回以上できれば合格。
石井教授が特に懸念しているのは、階段の上り下りに代表される、太ももを引き上げるような動きが極端に減っていること。いくら歩いても筋肉にとってはそれほど負荷になりませんが、階段の上り下りは大腰筋、大臀筋、大腿四頭筋すべてをまんべんなく鍛えることに役立つそうです。そして、下半身の大きな筋肉を鍛えれば、糖や脂質を分解する能力も高まり、中年以降メタボになるリスクも軽減。自分がメタボになったせいで会社に迷惑をかけかねない時代ですから、下半身を鍛えることは社会人のビジネススキルの一つだと考えてほしいといいます。

「カラダを動かすときに当たり前のように働いている筋肉は、意識されにくい存在ですが、人間にとってエンジンのようなもの。筋力が小さい人は、例えて言うなら軽自動車です。排気量が小さいからといって動けないというわけではありませんが、軽自動車ではスポーツカーのようなスピードは出ないし、大型車のような馬力もない。筋力が小さい人は、大きい人に比べて身体的能力が低いのだということを自覚してください」

これほど筋力を使わない生活スタイルは、人類の歴史の中でもつい最近までなかったこと。今のような働き方の人たちが年をとったとき、その脚力がどのようになっているのか、そして極端な筋力ダウンが我々にどんな影響を与えるのかを考えると、大きな不安があると石井教授は話していました。

まずは、右上の写真を参考に、今の自分の脚力をチェックしてみてください。その結果が不合格の人はもちろん、合格の人も、毎日階段の上り下りくらいはしたいもの。将来のために、その「一歩」を踏み出す必要があるようです。
石井直方教授ご本人に、スロトレ式スクワットを実践してもらいました。中腰の状態から3秒かけて太ももが水平になるくらいまでしゃがみ、また3秒かけて中腰に戻る。この間、一瞬も筋肉をゆるめないのがポイント。

効率よく脚力をアップするトレーニング法



脚力を鍛えようと思ったら、とにかく運動でしょう。といってもいきなり走ったり、ジムに通ったりは難しいので、せめて歩くところから始めたいと思います。歩くのは健康にいいといいますし、どれくらい、どんなふうに歩けばいいでしょうか。筋肉博士として知られる、東京大学の石井直方教授に教えてもらいました。「いえいえ。歩くことは筋力アップにはあまり役立ちませんよ。健康のためにたくさん歩きましょうとはいいますが、歩くことは心筋梗塞のリスク軽減に役立つなど循環器の健康のために必要なことで、実は、筋肉にはたいして負荷はかかっていません。脚力アップに大事なのは、太ももを引き上げることで、太ももの前、下腹部のインナーマッスル、臀部の筋肉を鍛えることです」

歩くことが筋トレにならないなら、やっぱりジムに通って、マシンで鍛えなければならないのでしょうか?

「マシンで太ももの後ろ側やふくらはぎを一生懸命鍛えようとしている人がいますが、アスリートでもない限り、それは必要ありません。太ももの後ろやふくらはぎは、日常的に使っていて、比較的鍛えられているからです。太ももは前側の筋肉でヒザを伸ばし、後ろ側の筋肉でヒザを曲げているのですが、後ろ側ばかりを鍛えたせいで前後のバランスが悪くなり、ヒザの負担になる可能性もあります」
さらに、持久力を付けて、歩いても疲れにくい足を目指すなら「ランジ」というトレーニングを。片足を前に出した状態でしゃがみ、後ろの足を大きく前へ。そして、前に出した足をまた元の位置に戻すということを繰り返す(フェンシングの突きのような姿勢)。片足で10回程度繰り返したら、もう片方の足で10回。
下半身の筋肉の中でも特に重要な、大腿四頭筋(太もも前)、大腰筋(インナーマッスル)、大臀筋(臀部)を鍛えるのに役立つトレーニング法として、石井教授がすすめてくれたのはスクワット。しかも、すご~くゆっくり行う「スロトレ」がベストなのだとか。「スクワットはキング・オブ・エクササイズともいえるトレーニング法で、姿勢ややりかたによってたくさんのバリエーションがあり、下半身だけでなく全身の運動になる。ただし、若い人には自体重だけでは負荷が足りないので、3秒かけてしゃがみ、3秒かけて立つ。重さという負荷はなくても、ゆっくりやることで負荷があるように筋肉を騙せます。この方法できちんとやれば、普通の人は10回もできないはずですよ。それ以上できるようなら効いていない証拠です」

ポイントは、立った状態でも完全に立たず、中腰を維持すること。しゃがんだときは太ももが床と平行になるくらい。完全に立ってしまうと力が緩んでしまって、効果が半減してしまうのだそうです。

「20代から30代は筋肉量が一番充実している時期。それ以降、筋肉は減少し、脂肪は増える一方です。ですから、そうなってしまう前に、筋肉を鍛える習慣を身につけてほしい。弱ってしまってから慌てて始めても、リカバーはとても難しくなってしまいます」

学生時代からボディビルをはじめ、全日本学生ボディビル選手権で優勝経験もある石井教授は、今もトレーニングを欠かさず、50歳半ばとは思えないほどの肉体の持ち主ですが、そんな石井教授でさえ「肉体の衰えを実感している」といいます。

我が身を振り返って考えると、真剣に恐ろしくなってきました。少なくとも、1日1回はスロトレでスクワットをやってみようと思います! 石井教授によると「30歳から1歳ごとに筋肉が1%ずつ小さくなっていく」ということなので、30歳から数年経過している私は、すでに数%筋力がダウンしているということに。

しかも、20代のころよりも、明らかに今の方が運動量も減っていますし(昔はジムに通ったりしていたんですよ)、年1%以上の減少があっても不思議ではありません。ああ、恐ろしい。

そんなわけで、石井教授のお話を聞いてから、駅ではエスカレーターを使わず階段を上るようにしています。いくら便利な世の中になったからといって、いくつになってもフットワークの軽い、動ける社会人でありたいですから。

「最近、階段を上り下りしていないな」という実感がある人は、たとえ今の自分に自信があっても、トレーニングをしておくべきだと思いますよ。一緒に頑張りましょう!

この他にも、自分なりのトレーニング法を実践している人、自分のカラダに不安がある人など、このコーナーまでどんどんメッセージを送ってください。

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