カラダ資本論

第3回 「心臓」に悪いことしていない?

2009.07.10 FRI

カラダ資本論


南淵明宏(なぶち・あきひろ) 大和成和病院院長。心臓外科医。心拍動下冠状動脈バイパス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀。各メディアでの、医療改革に向けた積極的な発言でも知られている。

ビジネスマンの日常に潜む心臓病の危険因子とは?



血液や酸素、栄養素などを全身に送り出すポンプの役割を果たしている心臓は、1日10万回ものドキドキ(拍動)を毎日毎日休むことなく行っています。そのドキドキが止まったら生命活動はおしまいなんですから、すごく大切な存在だということは分かっています。とはいえ、心臓疾患の経験でもない限り、心臓のありがたさを実感することなどほとんどありませんよね? 30歳前後の若い世代なら、なおさらそうでしょう。

しかし、突然死の原因の6割以上が急性心筋梗塞、狭心症、不整脈、心筋疾患、弁膜症、心不全などの心臓病で、若い人であってもそのリスクは少なからずあるとのこと。そこで、ビジネスマンが気をつけるべきことについて、大和成和病院の院長で心臓外科医の南淵明宏先生に聞いてきました。

「まず、気をつけたいのはお酒です。深酒に加えて、寝不足、低血糖、脱水という4つの条件が揃えば、年齢に関係なく、誰でも心房細動(心室上部の心房の細胞が震え始めること)になる可能性が高まります。心房細動になっても、通常は一時的なので、すぐ元に戻りますが、場合によっては心室の収縮も不規則なりますし、心房の奥にできてしまった血の塊が脳に達して脳血栓になるなど、死に至ることもあるのです」

そして、南淵先生が「少しでも心臓をいたわる気持ちがあるなら、絶対にやめなさい!」と強い口調で話していたのがタバコ。「タバコを吸っている心臓病患者には治療したくない」というほどで、実際に、タバコをやめない限り手術をしないという心臓外科医もいるそうです。動脈硬化の危険因子であるタバコは、それほど心臓にとって良くないものなのですね。

さらにもう一つ、心臓に負担をかけてしまう意外なポイントを教えてくれました

それが「睡眠」。寝過ぎると心臓の負担になってしまうというのですが、さっきは「寝不足は心臓に良くない」と話していたのですから、たくさん寝た方が心臓に良さそうですよね。

「覚醒時は手足を動かして心臓のポンプ機能をサポートしているのですが、就寝中は手足が動かないのだから、心臓だけで全身に血液を送らなければならない。寝ている間は室温の調節もできないし、水分補給もできません。しかも、心臓が一日の中で一番速く拍動するのも、一番ゆっくり拍動するのも就寝中だということが分かっています。それだけ心臓に負担があるので、突然死が一番多いのも就寝中なのです。10時間以上の睡眠は、心臓の負担から考えてオススメできません」

ということは、「今日はせっかくの休みだから寝だめしよう!」なんていう行為は、心臓には良くなかったんですね。心臓の負担を軽くするには、むしろ少しカラダを動かすくらいの方がちょうどいいみたいです。

お酒、タバコ、たくさん眠ることという、仕事の疲れを癒やす(と思いこんでいた)ものが心臓には悪いとは。これからは、心臓にもやさしい方法で、リフレッシュしましょうね。
本気で自分の心臓をいたわるなら、まず自分のカラダを知ることから。たまには脈拍を測ってみましょう。平常時なら60~80くらいが普通。平常時で90以上なら心臓に負担がかかっていると考えた方が良さそうです。場合によっては、心臓に何らかの異常がある可能性もあるそうですが、太り過ぎているせいで心臓への負担が増していることもあるとか。

心臓への負担を軽くする方法はある?



私たちは、心臓が止まってしまえばおしまいですから、突然止まるようなことは絶対に避けたい! そのために大切なのは、深酒、タバコ、寝過ぎといった、心臓に悪い生活習慣を改めること。まず、この点は肝に銘じておかなければなりません。加えて、心臓をいたわるコツなどがあれば知りたいんですけれど。そんな方法なんてあるんでしょうか?

ダメ元で聞いてみたところ、「ありますよ」と教えてくれたのが、心臓外科医の南淵明宏先生。

「やり方は極めて簡単。ゆっくりと深呼吸をすることです。深呼吸をすると、口から空気を入れるだけでなく、胸郭から全身に血液を送り出すことになります。つまり、心臓の働きを助けてくれるわけです。同じように、運動することも心臓のポンプ機能を助けることになりますから、特にデスクワークが多い人は、意識的に手足を動かしてください」

また、思い切り息を吸い込むと、胸が膨らんで、まるで外から圧迫されたのと同じような状態になるのがわかりますよね? そのように、深呼吸をすることで胸郭という肋骨でできたカゴの内圧が上がると、圧を感知する「圧受容体」というセンサーが働き、脈拍を下げ、リラックス状態のときに優位になる副交感神経を活性化させるのだそうです。

人がパニックに陥っているときに「落ち着いて。まず深呼吸しよう」と声をかけることがありますが、それは体内にたくさん酸素を取り込んで、過度のストレスによる酸欠状態を脱するためなのだと思っていました。でも、深呼吸によってリラックスするメカニズムは、他にもあるのですね。

「常に交感神経が活発な状態も心臓にとっては負担。交感神経と副交感神経が交互に活発になるのが理想です。だから、深呼吸によってリラックスさせてやる必要があります。逆に、いつもダラダラしているのもダメですよ。適度なストレス状態とリラックス状態を繰り返すことが大事なのですから、仕事は一生懸命やらないといけません(笑)」

深呼吸に関していえば、横隔膜の筋トレをすることにもなりますから、健康で長生きしたい人はどんどんやった方がいいと南淵先生はいいます。ただし、深呼吸がいいからといって、深呼吸を勢いよく早く何度もやると、二酸化炭素の排出が過剰になってしまいます。そうすると、脳の血管が収縮して脳の細胞に血液が送られなくなり、ちょっとした酸欠状態になる恐れがあるそうですから、ご注意を。ゆっくりと何度か繰り返すことが大切です。

健康な心臓を維持するためには、生活改善と適度な運動が必要なのはよく分かりますが、忙しい社会人にはなかなか難しいものです。でも、深呼吸くらいなら、いつでも誰でもできますよね。

まずは今すぐ、大きく息を吸って、ゆっくり吐いて~。それだけでこんなに効果があるなら、頑張れそうです! 何かあってからでは遅いのですが、何かない限り、あまり気にかけない心臓。
でも、今回のレポートで、気づかないうちに心臓に負担をかけてしまっていることが分かりました。

日々のちょっとしたことのせいで、ある日突然心臓が動かなくなってしまったりしたら大変です。ほんの少し気を付けているだけで、心臓の負担を軽くすることができるなら、その努力はすべきですね。

仕事中など、気づくと、息を止めて一心不乱に原稿を書いていたりしますから、ふと力を緩めて深呼吸をするように心がけます!

今後は「肝臓」「胃」「肌」などなど、カラダの各部位について検証していく予定。
「仕事をしていて、カラダのこんなことで困っている」「自分なりのトレーニング法」「健康自慢」などなど、皆さんからのメッセージもお待ちしています!

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