生命保険はボクらを守ってくれるの?

第13回 保険金の不払いってどうして起こるの?

2009.08.10 MON

生命保険はボクらを守ってくれるの?

不払いの多くは保険金の請求(案内)もれが原因



保険金不払い問題で、生命保険会社10社に対して、金融庁から業務改善命令が出されたのが2008年7月3日。その後、各生命保険会社は再発防止に向けて取り組んでいるが、こんな事実を知ってしまうと保険に入る気がなくなってしまう。保険の不払いって、なんとかならないのだろうか?

保険金の不払いというと、保険会社が意図的に保険金を支払わなかったというパターンを想像しがちだが、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者であり、生命保険事情に詳しい後田亨さんによれば、保険金の不払いはそのようなケースばかりではないらしい。

「保険金不払いで、金額的に最も多いのは保険金の請求(案内)もれです。各社の商品内容が複雑になり、実際には保険金を請求できるケースだったのに契約者が請求し忘れたり、保険会社もその案内をしていなかったというパターンが多くあるんです」
ひと口にがん保険といっても様々な給付金がある。ここにあげたものは一例であり、細部は各社によって異なる。入院時ではなく、退院後に別途請求する特約については、請求し忘れるケースもあるようだ
たとえば、ある生命保険会社が販売している「がん保険」には、「がん診断給付金」「がん入院給付金」「がん手術給付金」「がん死亡給付金」「在宅療養給付金」「通院給付金」「退院給付金」「がん先進医療給付金」「在宅緩和ケア給付金」の9つの特約がついている。契約者がもし、がんで長期入院→高度先進医療による手術→退院→通院→自宅療養→死亡という経過をたどったとすれば、これらすべての給付金を受け取れることになる。だが実際には、退院して契約者本人がほっとしてしまうと、退院後に受け取れるはずの「退院給付金」や「通院給付金」などを請求し忘れてしまう場合が多いらしい。

「特約がたくさんついているとお得な感じがしますが、病気になったら黙っていても保険金や給付金が支払われるわけではありません。『退院後の通院』が保険金の支払い対象になる『通院給付金』などは、実際に、給付金が払われないままになっていた例が多かったんです」

契約にどんな特約が付いているか、営業担当は知っているはずですよね? 営業担当はその辺をフォローしてくれないんですか?

「確かに契約内容は調べればわかります。内容がわかれば、請求できる特約も判断できます。しかし、それも相談を受けて初めてできることですよね? 営業担当は契約者の日常を毎日追いかけているわけではありませんし、そもそも保険に入ったときの営業がいつまでも担当してくれるとは限らないわけです。数年で退社する人がたくさんいる業界ですから。いずれにしても、保険金が支払われずに不利益をこうむるのはお客様です。現実問題として、何かあった場合には、自ら請求しないと保険金は支払われない、と考えておいたほうがいいですね」

でも、たとえ営業担当が替わっても、顧客情報は引き継がれているはずでは?

「もちろん、顧客情報は引き継がれます。しかし、引き継いだ営業担当次第で、顧客対応はけっこう違ってしまうんです。丁寧に対応してくれる営業担当であれば、『がん診断給付金』の請求があった時点で、『退院給付金』や『通院給付金』が発生する可能性を考え、その後も状況を確認してくれるはずです。しかし、日々の営業成績を追いかけることだけに熱心な営業担当だと、その辺を見過ごす可能性も否定できません。要するに、担当の“当たり外れを確実に防ぐ仕組み”は作られていないんです」

保険金不払い問題の反省から、保険会社も契約者への丁寧な対応を徹底させようとしているが、営業担当で対応の差はあるのが現実。基本的なことですが、契約者本人が特約事項などの契約内容をきちんと把握し、治療状況に合わせてしっかり請求することが大切なんですね。

シンプルな保険を選んで保険金の請求もれを防ぐ



保険金を確実に受け取るには、契約者本人が契約内容をきちんと把握しておき、必要なときにもらさず請求しなくてはいけない。

「でも、それがなかなか難しいんですよね」と語るのが、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者である後田亨さんだ。

「給付金や特約がついた保険の場合、それぞれに支払い条件が決まっているので、自分がそれに該当するか見極める必要があります。もし、該当するとわかっても、請求には申請書のほかに入院証明書、本人確認用の免許証コピーや印鑑証明書など様々な書類が必要です。負担に感じる人もいると思います」

病気で入院…なんてことになると、契約者本人はもちろん、家族も様々なことに忙殺される。病院選びに始まり、親戚や知人への連絡、見舞い客への対応まで、考えなければいけないことが山ほどある。そんな余裕がないときに、該当する給付金や特約事項すべてをもらさず申請するのは、なかなか骨が折れる作業らしい。

でも、それで請求もれが起きると、なんのために保険に入ったかわからないし…。請求もれをなんとか防ぐ方法ってないんですか?
退院した喜びで、その後の請求を忘れてしまう…というパターンもあるとか。また、複雑な特約が付いていると営業もわからなくなってしまっているケースもある
「特約があまりついていないシンプルな保険を選び、保険金を請求する機会を限定することです。シンプルな保険なら、請求すべき保険金についても、それほど悩まないはずですし、担当者の当たり外れにもあまり影響されません。また、最もお金のことが気になるときに保険金を請求できる保険を選ぶことです。お金の必要性を考えると、保険のことが頭をよぎる、すると請求だって忘れないでしょう?」

最もお金が必要なとき…というと?

「やはり、入院が決まったときでしょう。『これからお金がかかるぞ!』と誰もが思うわけで、請求し忘れることは少ないはずです。たとえば、がん保険なら“保険のありがたみ”って、ほとんど『がん診断給付金』に尽きるんです。入院日数や退院後の通院の有無などに関係なく、請求も検査結果が出た時点でできます。すると入院中に100万円単位のまとまった金額が支払われることもある。これは心強いでしょう」

保険金不払いを発生させないためには、結局は自分で契約内容をこまめにチェックして、ひとつずつ請求していくしかないが、契約自体をシンプルにしておけば、内容を把握しやすい。約款などを細かくチェックするのが苦にならない人は別として、自分を助けるためにも覚えておきたいことといえそうです。 社会問題化した「保険金の不払い問題」は、商品が複雑になった結果、契約者による保険金の請求もれや、保険会社による請求案内もれを招いた、という背景があるようです。

保険金の不払いを防ぐには、契約者本人が契約内容をしっかりチェックし、保険でカバーされる範囲を把握しておくことが重要。でも、それが難しいようなら、最初から保険内容と支払い条件がシンプルな保険を選んでおくのも、ひとつの方法といえそうです。

保険選びって、いろいろ面倒だし難しいですよね。読者の皆さんが悩んだことをぜひ教えてください。

取材協力:後田亨氏

関連キーワード

ブレイクフォト