カラダ資本論

第10回 「耳」はよく聞こえている?

2009.10.16 FRI

カラダ資本論


耳の構造。聴覚つまり音を聴くという機能のほかに、三半規管や前庭神経では体のバランスや平衡感覚も司っています。

「聞き間違い」は耳のせいなの?



私の名前「ウシジマビフエ」は本名なのですが、電話でも、対面していても、まず一度で聞き取ってもらえません(名字は「ニシジマさん」「イシジマさん」、名前は「ミツエさん」「ミブエさん」などなど)。一度や二度ならいいですが、何度も聞き返されると、少しイラッとしてしまいます。

とはいうものの、自分でも何度も聞き返してしまうことはあります。そんなときは「この人の話し方が悪いから聞き取れないんだ」と相手のせいにしていましたが、もしかしたら、私の耳に問題があったかもしれません。よく聞き取れないというのは、耳の病気のせいなのでしょうか。耳鼻咽喉科医の池田麻子先生に聞いてみました。

「そういう悩みを持って受診される患者さんは少なからずいますが、難聴などの検査をしてもまったく異常がないケースがほとんどです。もちろん、聞こえにくい原因を探ったところ、中耳や内耳の病気、脳腫瘍が見つかることがないとはいえません。しかし、それは病気のせいではなく、本人の聞く姿勢や集中力に問題があることが多いのです」

耳から入ってきた音は、内耳、聴覚神経、脳へと伝わり、脳の聴覚野で情報処理されます。人の耳には常に様々な音が入ってくるので、かなりの音を受動的に聞いていることになりますが、日常的に耳にしている騒音などは聞こえていないのと同じくらい、ほとんど気になりませんよね? それは音を受け取った脳が、瞬時に「必要ない音」と処理しているからだそうです。

そして、人の話を聞くときは、耳に入ってきた「音(声)」を脳が処理するので、意味のある「言葉」として理解することができます。ところが、能動的に聞こうという気持ちがないと、脳はその声をただの音として判断してしまうので、よく聞こえなかったり、言葉の意味を聞き間違えたりするのだと池田先生はいいます。

最近の研究では、頭の中で「キーン」という不快な音が鳴り響く「耳鳴り」も、脳の問題だと分かってきているそうです(耳の病気による耳鳴りもありますが)。内耳にある蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官では、常に耳鳴りの元となる微弱な音が鳴っているらしいのですが、普段は脳の処理によって意識しないで済んでいます(うんと静かなところに行くと「キーン」と聞こえてくる、あの音です)。

しかし、何らかのきっかけで脳がその音をキャッチし増幅してしまうと、本人の中では耳のすぐ近くで発せられているような大きな音として認識されてしまうのが耳鳴りなのです(意識しないようにすることが大事で、耳鳴りがイヤで耳栓をしてしまうのは一番いけないのだとか)。

「常に穴が開いている状態の耳は、音を選り分けたりできませんから、結局はどのように脳で処理されるかということになります。なので、『良い耳とは?』と聞かれたら、『聞こうとする積極的な意思がある人の耳』と答えますね」

つまり、「聞こえない」ではなく「聞いてない」ということなんですね。耳のせいにする前に(話している人のせいなんて言語道断!)、自分の聞く態度を改める必要があるようです。
メディカルコート池田耳鼻咽喉科・副院長の池田麻子医師。耳鼻咽喉科なので、耳だけでなく鼻や喉の診察もしています。耳鼻咽喉科医としての池田先生からのアドバイスは「風邪をひいたときは内科を受診する人がほとんどですが、喉や鼻の症状がつらいときは耳鼻咽喉科を受診してください。症状緩和に役立つ適切な処置ができますよ」とのこと。

耳掃除以外に耳のケア方法はある?



耳は「聴覚」という五感の一つを司る大切な器官ですが、定期的に耳アカ掃除をする以外、特別なケアなどしませんよね? 日常生活において「耳に良い生活」などあるのでしょうか? 耳鼻咽喉科医の池田麻子先生に教えてもらいましょう。

「耳に良い生活というよりも耳に悪い生活習慣を改めることが大事ですね。まず、あまり頻繁に耳掃除することはオススメできません。外から入ってくるゴミは外耳道に生えている毛がブロックしてくれますし、皮膚の表面が剥がれ落ちたアカなども分泌液によって外に排出されやすい構造になっています。それなのに耳かきでこすったりすると、ゴミを中に押し込んでしまったり、内側の皮膚を無理に剥がすことになってしまいます。耳掃除は、見えている範囲を綿棒でやさしくぬぐう程度でいいのです」

間違った耳掃除と同じくらい耳に良くないのが、ストレス。最近、若い人を中心に増えている「急性低音障害型感音難聴」というのは低い周波数の音だけが聞こえなくなる病気で、耳に水が入ってしまったときのように常に音がこもって聞こえて大変不快で、ときに耳鳴りやめまいを伴うこともあるそうです。この病気はストレスや過労が原因だといわれています。

適切な治療をすればすぐに治るのですが、ストレスが多い人だと何度も繰り返すことになってしまうのだとか。急性低音障害型感音難聴以外にも、めまいや難聴などといった障害にストレスが大きくかかわっているのだそうです。

「細かなメカニズムとしては分かっていない部分が多いのですが、ストレスや寝不足は大敵。現代社会ではストレスは少なからずありますが、上手に発散する方法を見つけてください」

もう一つ、若い人たちに多いのが「急性音響性難聴(音響外傷)」。昔は「ディスコ難聴」と呼ばれていたもので、大音量に長時間さらされたために蝸牛(かぎゅう)の感覚細胞が傷ついてしまい、難聴や耳鳴りが起こる病気です。

ロックコンサートの後など、耳がキーンとして治らないことがありますが、実はそれがこの病気。すぐに治まるならいいのですが、翌日になっても続いているようなら、すぐに耳鼻咽喉科を受診してほしいと池田先生はいいます。

「一度傷ついた内耳はなかなか治りにくいので、難聴やめまいを感じたらすぐ受診を。この病気は薬で治療することができます。ですが、普段から大音量にさらされないようにすることが大事です。電車内でヘッドホンやイヤホンをしていて、かなり音漏れしてしまうなら、それは大きすぎです。そういう人はすでに難聴になっている可能性があります」

最近はどこでも携帯音楽プレーヤーで音楽を聴いている人がいますが、地下鉄のような音が大きい場所では音量を上げてしまいがちなので、注意が必要なようです。大好きな音楽をずっと楽しむためにも、普段の音楽の聴き方には気をつけましょうね。 耳掃除に関して「やりすぎはダメ」と話していた池田先生ですが、聞こえ具合が悪くなるほど耳アカが溜まってしまったときは、耳鼻咽喉科を受診して掃除してもらいましょうとのこと。

耳掃除はきちんとした医療行為で、保険適用されるそうなので病院でやってもらってください。「耳かきが大好き」という人はつらいでしょうが、自分でやるときには(たまにですよ)、やさしく綿棒でクルクルする程度で。

今回は「こんなに耳かきが好きなのに!」という人や「こんな聞き間違いで恥ずかしい思いをした」など、耳にまつわる皆さんからのご意見や体験メッセージをお待ちしています。

耳以外でも、カラダに関する様々な疑問・ご意見をお送りください!

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