カラダ資本論

第12回 全身の健康は「血液」次第?

2009.11.13 FRI

カラダ資本論

似たような症状(聞き取りにくい)で病院通いしています。当初は中耳炎だったんですけど、気になって相談したのがはじまりです。念入りな聴力検査やCT撮ったり大掛かりだと思ったんですが、現在は観察中です。気になったら医師に相談するのが一番だなと思いました。

「SAY」さん(山形県/33歳/男性)

SAYさんのように「聞き取りにくい」と感じている人は多いようで、記事ではその原因を「本人の聞く姿勢や集中力の問題であることが多い」とご紹介しましたが、何らかの病気のせいで聞き取りにくくなることもあるようです。このときにお話を伺った耳鼻咽喉科の先生も話していましたが、とにかく「異変を感じたら病院に行く」ということが大事。「これくらい平気」などと思わず、受診しましょうね。

そんなわけで、今回は「カラダ資本論」最終回。最後を飾るにふさわしく、全身隅々まで行きわたる「血液」について検証してみました。血液って、どんな役割があるのか知っていますか?
隅から隅まで、全身をめぐっている血液。心臓から送り出された血液は動脈を経て運ばれ、枝分かれしながら毛細血管に移行。壁の薄い毛細血管から酸素や栄養素が組織に送られ、逆に老廃物を回収した後で静脈になります。 図:『血液のふしぎ』(奈良信雄/サイエンス・アイ新書)より

カラダを知るなら血液が一番!



「カラダ資本論」では、これまで11回にわたってカラダの様々なパーツを取り上げ、専門医の先生にお話を聞いてきました。そのなかで、どの先生も共通して言っていたのが、各パーツの健康のために「血管損傷を防ぐこと」「血流を良くすること」の大切さ。

肝臓や胃などの消化器、心臓などの循環器はもちろん、声帯や耳、男性器、皮膚などでも健康な血液が大切だとのことでした(詳しくは、過去の記事を読んでくださいね)。

と教わったものの、正直そこまで血液が大切だという認識はなかったのですが、血液の何がそこまで重要なのでしょうか? 臨床血液学を専門とする東京医科歯科大学の奈良信雄教授に、知っていそうで意外と知らない血液の大切な役割について教えてもらいました。

「血液は全身に行きわたり、カラダの隅々まで大切なモノを運んでいます。運搬しているのは、タンパク質や糖質、脂質といった栄養素、酸素、ホルモン、免疫細胞、電解質など。これらの物質を運びつつ、老廃物を除去する役割も担っています。また、血液の大切な役割のひとつに、体温を保つことがあります。体内物質の代謝には37℃くらいがベストだといわれているのですが、この温度に保つには、流体である血液が最適なのです」
血液成分の内訳。血液中の脂質(コレステロールなど)が増えすぎると、いびつになってしまった赤血球がくっついて、いわゆる「ドロドロ血液」になるのだそうです。 図:『血液のふしぎ』(奈良信雄/サイエンス・アイ新書)より
血液は約55%が水(液性成分)で、それ以外の45%が赤血球(酸素を運ぶ)や白血球(自己防衛を行う)、血小板(血管が損傷したときに出血を食い止める)の血液細胞。これら重要な物質をたくさん含む血液だから、カラダの様々な部分の病気発見にも役立つのです。

「例えば肝臓の場合、エコー検査などをすれば肝臓の異常を見つけることはできます。しかし、肝臓が正常に働いているかどうか、定量化してチェックすることは困難です。その点、血液ならば、肝臓の中に多く含まれる酵素(物質を作ったり、解毒したりする働きをする)の量を調べることで、肝機能を調べることができます。肝臓に異常があると、この酵素が血中にあふれ出てしまい、数値としてあらわれるからです。他にも、生活習慣病や腎臓病、膠原病など、血液検査によって分かる病気はたくさんあります」

もちろん、血液検査が万能なわけではなく、血液のガンといわれる白血病などを除くほとんどのガン、認知症、神経疾患などは血液検査だけでは分かりません。しかし、早期に病気を発見しやすい、検査にともなう負担が小さい、というようなメリットが血液検査にはあるそうです。

しかも、血液検査にあらわれる項目の多くは、検査結果が良くなかった場合でも生活改善などによってコントロールしやすいものなのだといいます。

「血液検査でチェックする基本的な項目は、中性脂肪やコレステロールなどの脂質、血糖、肝機能などですが、これらは食生活や生活習慣を見直すことで改善することが可能です。そして、こういった数値が改善すれば、結果的に様々な臓器で起こる病気を防ぐことになります。健康に暮らすためには、血液検査によって、血液の状態を知っておくことは大事だと思います」

40歳以下の人なら年1回、40歳以上の人は半年に1回、健康診断で血液検査を受けること。これが奈良先生が推奨する健康診断の頻度です。どんなに忙しくても、これだけはきちんと守りましょう!
東京医科歯科大学教授・奈良信雄先生。専門は臨床血液学。血液や医療に関する著書多数。最新刊は『血液のふしぎ』(サイエンス・アイ新書)。文章書きが趣味だという奈良先生の執筆時間はほとんどが病院への通勤時間。しかも満員電車の中で立ったまま! 「立ったままパソコンで原稿を書く体勢はしんどいけど、集中できていいですよ」なんて、すごすぎます!

血液のために絶対にダメなのは?



酸素や栄養素などを体中にくまなく送り届けている血液は、全身の健康を左右する存在です。となれば、常にベストな状態でいてくれないと困ります。どうすれば、いつも健康な血液でいることができるでしょうか? 東京医科歯科大学の奈良信雄教授に教えてもらいました。

「血液にとって一番良くないのはタバコ。健康でありたいなら、まずタバコをやめることです」

そういえば、以前お話を伺った、胃、肝臓、心臓、脳、声帯、男性器などの専門医の先生も「タバコは絶対にダメ」だと言っていました。タバコが肺に良くないということは知っていましたが、タバコの害があらゆる臓器に及ぶのはなぜなのでしょう?

「タバコを吸うと、体内の一酸化炭素、酸化窒素といった酸化ストレスが増加。そうすると、血中の酸素供給が減少して、血管が損傷したり血栓ができやすくなります。ニコチンなどの化学物質も血管を傷つけ、動脈硬化の原因になることが分かっているからです」

動脈硬化によって生じた血管の傷に、血栓ができて起こるのが梗塞(血液が途絶えて臓器の機能が停止してしまう障害)。これが脳で起これば脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞。梗塞には至らなくても、血中の酸素供給の減少や動脈硬化によって肝臓や胃の働きが悪くなったり、勃起障害(ED)なることも。とにかく、カラダにとってタバコは「百害あって一利なし!」なのだそうです。

では、お酒はどうでしょう。タバコと並ぶ嗜好品であるお酒によってカラダ(主に肝臓)を壊す人がいますが、お酒もタバコくらい血液に悪いの?

「血液のことでいえば、飲みすぎなければお酒はOKです。血液の健康にとってはストレスが大敵ですから、気分がよくなる程度なら良いと思います。ただ、人によっては『飲酒によって血流が良くなるからかえって健康に良い』と思っているようですが、それは間違い。アルコールによって血管が拡張するので、一時的にたくさんの血が流れたように見えるだけで、血流を良くするとまではいえません」

さらに、血液に良いことを聞いてみると。

「バランスの良い食事と適度な運動ですね。本来、貧血は男性より女性の方が多いのですが、最近は貧血気味の男性も目立ちます。そういう人はレバーやホウレンソウなど、鉄分を多く含む食事を心掛けましょう。といっても、そればかり食べていると今度は脂質や尿酸、コレステロールが摂取過剰になってしまう。だからバランスの良い食事が大事なのです」

適度な運動は、全身に血液を送るために大切。無理して運動をしなくていいので、日常的に手足を動かすよう心掛けてほしいそうです。

そして、奈良先生が最後にすすめてくれたのが、上手な健診の受け方。年に1回程度(40歳以上は半年に1回)の健診で出た血液検査の結果を見るときの注意点です。

「検査結果は基準値内かどうかだけを気にするのではなく、前年と比べてどうかも気にしてください。基準値内だったとしても、前年より大幅に高くなったり低くなったりしていれば、体内で何らかのトラブルが発生しているサインかもしれません。そのサインを見逃さないためにも、健診結果は毎年保管して、比べてみましょう」

「異常なし」だけ確認して捨てちゃっている人、いませんか? これからはきちんとキープして、去年の自分と比べてみましょうね。 ついに最終回になってしまいました。今までメッセージをくれた皆さん、ありがとうございます。

この企画では、様々なカラダのパーツに関して、専門医に取材してきましたが、どの先生にも共通して言われたのが以下の5点。

●禁煙
●バランスのとれた食事
●適度な運動
●十分な睡眠
●ストレスを溜めないこと

そして、医者の立場から「異変を感じたら、すぐに受診すること」を強調していた先生もたくさんいました(今回の奈良先生もそうでした)。定期的な健診も有効ですが、一番大切なことは、ちょっとでも「いつもと違うな」という症状を自覚したら病院に行くこと。わざわざ病院に行っても杞憂に終わるかもしれませんが、病気でなかったならそれで良し。異変を感じての受診なら、保険適用ですから、検査料金の負担も少なくて済みます。

人間のカラダは、何かあれば必ずシグナルを発してくれるといいます。そのシグナルを見落としてしまわないように、自分のカラダのこと、もっと気にかけないといけませんね。

それでは皆さん、お元気で!

カラダ資本論の記事一覧はこちら

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト