『走ろう、ニッポン!』/第9回

実業団と市民ランナーの違いって?

2013.04.14 SUN


会社の看板を背負っている実業団のランナーは、個人で出場するマラソン大会ではなく、会社の所属チームで出場する駅伝にトレーニングの照準が合わせられているのだそう 画像提供:pepe/pixta
先日惜しくも、五輪の代表選手枠から漏れてしまった、市民ランナーの川内優輝選手。福岡国際マラソンで日本人トップの3位に入賞するなどその活躍はめざましいものがあり、実業団選手と市民ランナーの実力差が以前より小さくなってきたといわれるほどになりました。でも、そもそも「実業団選手」と「市民ランナー」ってどういう違いがあるのでしょうか?

「実業団の選手は、基本的に会社の広報の役割を担って陸上競技大会に参加します。大きな企業だと部署自体が実業団の選手で構成された“陸上部”のようなところもあります。普段は人事や総務などの一般的な部署で半日働いて、午後からは企業内のチームでコーチとともに練習するのが実業団選手の1日の基本的な過ごし方です。一方、市民ランナーとは、本業をこなしながら、業務とは関係なく、あくまで個人的に休日や夜などに時間を作って練習している人たちのこと。会社やスポンサーの看板を背負わずに個人として大会に出場しているわけです」(ランニングアドバイザー・牧野仁さん)

なるほど。では、その違いは練習にどう影響するのでしょうか?

「実業団では、チームにコーチがおり、スケジュール管理や練習メニューの作成をしてくれるほか、練習場所も確保されています。一方、市民ランナーは、自分でコースを探し、自分で練習プランなどを組み立て、スケジュールもコントロールしなくてはなりません。また、実業団の選手しか出られない大会も多数あるというのも大きな違いでしょう。やはり、練習環境は市民ランナーより実業団の選手の方が整っているといえますね」(同)

それだけ走る環境が整えられているなら、オリンピック出場を目指すランナーが実業団入りを目指すのは当然の流れですね。では、市民ランナーでありながらオリンピック選手を目指すことのメリットはないのでしょうか?

「実業団は、基本的に実業団連盟主催の駅伝大会に出ることを中心に考えて、スケジュールや練習プランを組んでいるため、マラソンのトレーニングがしづらい面があります。マラソンで五輪出場を望む選手も、チームによっては、駅伝大会への参加が義務付けられている場合もあります。一方で、市民ランナーの選手は、そういった制約なしに、自分が出場したいと思う大会のためだけに練習ができるという点は強みだと思いますね」(同)

実業団選手の方が練習時間や環境面で利点が多いように見えますが、その一方で「チーム」のために自分を犠牲にしなければならない部分も少なからずあるんですね。それにしても、もともと高い素養があったとはいえ、「市民ランナー」としてここまでの結果を出したというのは異例ですものね。もしかしたら、川内選手の影響で今後は市民ランナーでありながら、オリンピックを目指す人が増えていくのかもしれませんね。

(冨手公嘉/verb)

※この記事は2012年4月に取材・掲載した記事です

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