アツイのは楽天だけじゃない…

増加中!地方スポーツ雑誌の情熱

2014.01.15 WED


1993年のJリーグ誕生以降、スポーツ界のキーワードとなっている「地域密着」。長らくプロ野球チームがなかった東北でも、楽天が創設9年で初優勝を果たした
「出版不況」という言葉がささやかれてずいぶん経つ。有名雑誌の部数減少や老舗雑誌の休刊、出版社倒産のニュースも珍しいものではなくなった。ところが今、こんな出版界の事情に逆行するような、ある現象がおこっている。それは下記のような地方発のスポーツ雑誌の増加だ。

北海道『北の球児たち』
岩手『Standard』
群馬『Gsports』
神奈川『ベースボール神奈川』
静岡『静岡高校野球』
岡山『岡山県高校野球本』
沖縄『ベースボール沖縄』

目立つのはスポーツの中でも高校野球関連の雑誌。総合スポーツ誌である『Standard』も高校野球特集はメインコンテンツであり、『Gsports』は『群馬の高校野球』という別冊本も発行している。

また、近年増えているのは個人による小規模な出版。デザインソフトなどの性能向上や普及などにより、技術的にもコスト的にも1人でも出版物の製作がしやすくなったことが影響しているだろう。実際、『静岡高校野球』を発行する栗山 司さんは本業が別にあるにもかかわらず、取材・執筆・撮影・編集・デザインを、ほぼ1人で行っているという。また、個人という形態は、売り上げの数字がそれほど大きくなくても採算がとれやすい、というメリットもあるだろう。

「ただ、1人だと書店への対応や発送などが大変なんです。ありがたいことに書店から注文の問い合わせも増えていますが、対応できないこともあります」(栗山さん)と1人ゆえの悩みもあるが、「『静岡高校野球』はあくまで趣味の延長。広告を入れるつもりもありません」と、売り上げが堅調でも、スタイルや規模を大きく変える予定はないという。

では、売り上げ規模はともあれ、これらの雑誌が一定の支持を受けているのはなぜか? ひとつ考えられるのは、ネットの普及によりマニアックな地域スポーツの情報が広がり、愛好者同士のつながりも増えたことで、小規模ながらニーズが出てきたことだ。

「『静岡高校野球』を始める前は、ブログで地元の高校野球の情報を発信していたのですが、けっこう反響があって、『こんなに興味をもっている人がいるんだなぁ』と驚きました。それでブログだけでは物足りなくなったことも発刊しようと思った理由のひとつです」(栗山さん)

そこには日本のスポーツ界にこの20年ほどで「スポーツと地域が密接なつながりを持つ」という考え方が広まったことも影響しているだろう。もともと地域とのつながりが深い高校野球の雑誌が多い点も象徴的である。

その点について『北の球児たち』を発行する長壁 明さんは、興味深い見解を話してくれた。

「ローカルなスポーツの話題はネットの普及でより深くより多くなりましたが、情報は玉石混淆的。そこで愛好者の方から、より信頼できる情報が求められているのかな、と思うことはあります」

ネットで愛好者がつながり出し、情報も深まったことが、紙媒体を求めることにつながった構図が面白い。

ただ、原点にあるのは栗山さん、長壁さんがともに語っていたことでもある「地域スポーツを応援したい、盛り上げたい」という気持ちであり、取材先や読者からの「励みになる、信頼できる貴重な情報源」という声。これは従来の地方新聞の役割にも似ている。盛んになってきた地方スポーツ雑誌。それは個人、あるいはより小規模な団体だからこそ成り立つ採算の中で地方新聞のスポーツ面を切り出し、より深く詳細に発行しているようなものなのかもしれない。
(長谷川一秀)

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