アトランタ・ブレーブスの名スカウトに聞く!

MLBで活躍する選手の見分け方5

2015.06.02 TUE


ダルビッシュ有、田中将大がヒジのケガで離脱するなど、明るい話題が少ない日本人メジャー投手たち。一方で、イチロー、青木宣親は新天地で好調なプレーを見せる。彼らのあとにつづく有望株を、チェックリストで見つけだそう! 写真/PIXTA
2015年は野茂英雄がメジャーに移籍し、MLBの存在が身近になってから20年という節目にあたる。高校野球などで注目の選手が現れると、「メジャーのスカウトも熱視線!」などとメディアに書かれることも珍しくなくなった。さらに、最近ではスカウトされて直接アメリカへ渡る球児も…! では、メジャーのスカウトたちは、いったい選手のどこを見て「通用するかどうか」を判断しているのだろう? メジャーリーグの専属スカウトに、日本人選手を見極める際のチェックポイントについて話を聞いた。

●メジャーで活躍できる高校生を見分けるチェックリスト 5項目
□体の大きさ(身長なら182cm以上が目安)
□パワー、スピードなど基本的な身体能力が高い(一塁到達タイムが4秒以内、など)
□空振りがとれる変化球など、絶対的な武器がある
□キャッチボールなしでいきなりプレーできるなど、順応性が高い
□大観衆の前でも物怖じしないなど、メンタルが強い

「私たちスカウトは毎月、詳細なレポートを本国の上司に送らなければなりません。だからこそ、数値で判断できる要素は重要です。その意味においても最低限の身体能力などは必須項目といえます」

答えてくれたのは、アトランタ・ブレーブス駐日スカウトの大屋博行氏だ。大屋氏はかつて、当時15歳でボーイズリーグの選手だったダルビッシュ有の才能を発見。ダルビッシュがまだ高校生の時代に「今なら100万ドル(当時で約1億円)で獲れるかもしれないが、将来的には1000万ドル(約10億円)でも獲れない選手になる」とブレーブスに進言し、その予言通りになった実績がある。この「大きな魚」を逃した経験から、選手を見極め、チームに選手を推薦する際には、客観的な判断材料をできるだけ明確に提示するという。

「それと、絶対的な武器を持っていることも重要です。投手であれば空振りがとれる変化球『ウイニングショット』があるかどうか。たとえば、広島・前田健太のスライダーのように、わかっていても打てない変化球…我々は『ストロング・ブレイキングボール』と呼んでいますが、それがないとメジャーでは通用しません」

なんともシンプルで、わかりやすいチェックポイント。だが、これらは候補者リストに入るための最低ラインともいえる。メジャーの世界で活躍できるかどうかを判断するうえでは、やはり目に見えない部分の見極めが重要になってくる。

「持っている力を発揮できるかどうかという意味で、『順応性』の有無は重要ですね。最近では有名になりましたが、アメリカと日本ではマウンドの固さやボールの感覚が異なります。ちょっとした差が生じるだけで全く投げられなくなる選手もいるんです。打者であればストライクゾーンの違いもありますし、投手が投げてくる真っすぐの球質も相当違うので、打ち方そのものを変える必要が出てきます」

さらに、「ベースボール」と「野球」、その違いを受け入れる「順応性」も欠かせないという。

「たとえば、アメリカではイニング中のキャッチボールがNGです。でも、日本人は準備のためにそれがルーティーンになっています。当たり前にやってきた準備ができない、というのは想像以上のストレスです。そうした違いを理解して、気持ちを切り替えることができるか」

また、「甲子園で活躍した選手は大成しない」と言われることもあるが、大屋氏の場合は、甲子園大会に出場する選手の方を支持するという。

「アメリカには高校生が一堂に会する大きな大会がないので、大観衆の前でプレーできる、なんていうのは日本の高校球児だけの特権です。そんな異質な環境でも実力を発揮できる、メンタルの強い子がほしいですね。いずれにせよ、高校生の場合は伸び代、将来性も含めて判断しなければなりません。『スカウトは予言師であれ』と心がけています」

間もなく始まる甲子園を目指した地方大会。チェックポイントを意識しつつ、その先にはメジャーへの道が続いていることを知って観戦すれば、より得るものが大きいのではないだろうか。
(オグマナオト)

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト