現役親方、学生相撲指導者、相撲ジャーナリストが語る

日本人力士の「横綱」が消えた理由

2015.07.27 MON


かつては中学卒業後に相撲部屋に入門するのがほとんどだったが、最近では高校や大学で学生相撲を経験してから入門することも多いそう。時代とともに日本人力士の入門事情も変化しつつあるようだ 写真提供:平井亭夢寸出 / PIXTA(ピクスタ)
相撲好き女子“スージョ”の増加、大相撲の連日の満員御礼など、最近の相撲人気はとどまるところを知らない様子。そんななか、やはり注目するのは七月場所でも優勝を果たし、幕内最多優勝記録を更新中の白鵬の存在。そのほか、照ノ富士などモンゴル出身力士の勢いも凄い。ただ、日本古来の文化だし日本人力士にもがんばってもらいたいもの…。ここ最近、日本人力士はどうして横綱になれないの?

「大相撲では、外国人力士は1つの部屋に1人までという制限があるんです。そのため、能力の高い外国人を精査して弟子に取っている。反対に日本人から良い人材を確保するのは難しい。というのも、現代の日本ではスポーツの選択肢がたくさんある。そのため、ポテンシャルの高い若者が他のスポーツの競技者になってしまう現状があります」(相撲ジャーナリスト・荒井太郎さん談)

“野球か相撲”だった昭和の時代と違う、現代の日本の世相が影響しているということ。そんな状況を打破すべく、他の競技をやっている若者をスカウトし、有為な人材を確保している部屋もあるそう。また、特にモンゴル出身力士の活躍が目立つのにも理由があるそうで…。

「海を渡り故郷から離れた地で相撲をする、ハングリー精神の強さも影響しているのではないでしょうか」(同)

日本人力士がハングリー精神に乏しい、とは思いたくはないけど、実際のところはどうなのだろう。様々な力士たちを近くで見ている親方はどう思っているのか? あえて外国人の弟子を取っていないという、高田川部屋の高田川親方(元関脇・安芸乃島)に話を聞いた。※注:正式には、「高田川」の高は“はしごたか”

「外国人、日本人関係なく、横綱になれる力士は稽古をしっかりしている。目標や目的を持って取り組んでいる力士が強いんです。また、日本人力士と外国人力士ハングリー精神の差以上に、日本人の“生命力が弱くなっていること”が、日本人力士が勝てないことに影響しているように感じます」

高田川親方の言う“生命力が弱くなっている”とは、和から洋に生活様式が変化したことで、骨やじん帯が弱くなっていることだそう。実際、和と洋の生活では体に及ぼす影響にどんな違いがあるのか? 日本体育大学体育学部の教授で相撲部の監督を務め、医学博士でもある齋藤一雄さんに話を聞いた。

「和の生活では、床に正座で座ったり、しゃがんだ姿勢で用を足す和式トイレでなどの動作が足首や膝関節などのストレッチになります。ストレッチによって関節の可動域は広くなり、ケガをしにくくなります」

アスリートの大敵であるケガのリスクを軽減できれば、志半ばで引退することなく横綱を目指すこともできそう。ちなみに齋藤さんが専門とする、運動生理学の観点から日本人力士が劣勢になる理由を考えると…?

「やはり体の大きさが影響していると思います。西洋人が日本人に比べ身長が高いのは周知されていますが、同じモンゴロイド系の人種である日本人とモンゴル人でも体格差があります。そして、身長が高いとその分背中が広く、腕が長くなり、筋肉が付く範囲も大きくなる。背中や腕の筋肉は、まわしを取り合う四つ相撲の際に力を発揮するため、有利になるんです」

7月場所で幕内の日本人力士の平均身長は約182.7cm、モンゴル人力士は約187.5cmと、その差は約5cmもある。その分強いとなると、勝つことは難しいってこと?

「四つ相撲をさせなければ、体格の優位差は影響しません。勝つには、相手の得意な手を封じて戦うテクニックが必要です」(齋藤さん)

技があれば体格差のハンディも越えられるということは、まだまだ日本人力士にも期待できるということ! そういえば高田川親方も「理屈を分かった上で相撲ができると強くなる」と語っていた。

今場所の栃煌山の活躍や、遠藤など若手力士の台頭も注目されている。魅力的な外国人力士の応援はもちろんだが、なかなか横綱が誕生しない日本人力士に悲観することなく、相撲界全体を応援していきたいものである。
(河島マリオ)

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト