「オレが監督ならこんなサッカーチームをつくるのに」は実現可能?

一般人がJクラブ監督になる方法

2015.11.21 SAT


S級のライセンスを取得した後も、研修を受け続けないと2年でライセンスが失効してしまうとか! プロチームの監督であり続けるには、かなりの努力が必要なのだ ※画像はスクリーンショットです
最終節を目前に控え、盛り上がりをみせるサッカーJリーグ。応援しているチームの結果がイマイチだと、「オレが監督になった方がマシ!」なんて思う人もいるのでは? でも実際、監督として名を連ねているのは元プロ選手ばかりのような…。やっぱり、Jリーグの監督はプロ経験がないとなれないの?

「そんなことはありません。“S級コーチライセンス(以下、S級ライセンス)”という資格を持っている人ならば、Jクラブの監督になれる可能性はありますよ」とは、日本サッカー協会・技術部の島田信男さん。これは一体、どんなライセンスなのだろうか。

「日本サッカー協会では、指導者向けに下からキッズリーダー、D級、C級、B級、A級、S級という階級別のライセンスを設けており、Jクラブのトップチームを指揮するには、もっとも階級の高い“S級ライセンス”が必須です。取得条件にプロ経験は含まれないのでサラリーマンの方でも挑戦することはできます。でも“飛び級”はできないので、A級を所持していないとS級は受けられません。さらに、A級とS級は応募条件に『(1ランク下のライセンスを所持してから)1年以上の指導実績』が必須となるので、条件を満たす人がかなり限られてきますね」

各ライセンスの取得には、日本サッカー協会が定めた養成コースを受講し、最終試験に合格する必要があるそう。ただ、S級の場合は「1年間で20人」など、受講可能な人数が限られるため、まずは“予備試験”を突破しなければ講習さえ受けることができない。継続的な指導実績も評価対象に入るとなれば、日々、仕事をしている普通のサラリーマンがS級取得を目指すのは、現実的には限りなく不可能に近いということに…。

「取得が難しいライセンスではありますね。試験を受ける人は、元プロ選手が多いのも事実です。ただ、そうでない方も中にはいますよ。受講生には現役の高校教員の方もいらっしゃいました」

確かに、S級ライセンス所持者を調べてみると、プロでの選手経験がない人もチラホラ。例えば、現在は明治大学サッカー部の総監督で、来季からJ3・グルージャ盛岡の監督就任が決まっている神川明彦さんは、今でこそ、日本代表の長友佑都や丸山祐市など数々の有名選手を育て上げた名監督として知られているが、プロ選手の経験はなく、大学卒業後は明治大学に“事務職員”として就職したサラリーマンだ。

「私の場合、朝6時からサッカー部の指導をし、その後10時から18時までは会議をしたり書類を作成したりと、普通の職員として働いていました。その合間を縫って、S級ライセンスを取得したのでかなり大変でしたね。S級は約3カ月の講習を受けなければいけないので、上司に事情を説明して有休を使い切り、何とかスケジュールを調整しました」(神川明彦さん、以下同)

仕事との両立ができれば、神川さんのような豊富な経験があればライセンス取得はたやすく思えるが、実際には様々な苦労があったそう。

「講習会の内容は大きく分けて“学科”と“指導実践”の2種類があるんですよ。学科では、自分の指導プランをプレゼンしたり、コミュニケーション力が問われたりと、社会人経験が活かせる場面も多く、一発で合格できたのですが、指導実践は苦戦しましたね。ボールを持っていない選手の動きを、同時に何カ所もチェックして指導する“広い視野”が求められたので、それを養うのが大変でした。ちなみに、指導実践のカリキュラムでは、自分以外の受講生が監督役を務める時はプレイヤーとして試合をするんですよ! プレー技術は評価の対象にはなりませんが、講習中は60分間の試合を1日2回行っていたので、体力的にかなりキツかったです(笑)」

監督になるためのライセンスなのに、120分も走り回るなんて…想像以上にハード! でも、「一緒に講習を受けたグループに名波浩や前園真聖といった、そうそうたるメンバーがいたので、一緒にボールを蹴ることができたのは貴重な経験でした」と神川さん。

さらに、指導実践の試験に合格した後も、国内のクラブチームに1週間以上、海外のクラブチームに2週間以上研修に行き、レポートを提出しなければライセンスは付与されないとか。受け入れてくれるクラブチームは自力で探さなければならず(!)、研修中の交通費や宿泊費もすべて自己負担。受講料と経費を合わせると、少なくとも100万円はかかるというから、金銭的にもかなり過酷だ。

「現実的には相当狭き門ではありますが、サッカー界の後押しや選手としての実績などは関係なく、“ライセンス”という誰にでも平等にチャレンジできる制度を設けてくれているからこそ、私のような大学職員にもJリーグ監督になるチャンスが巡ってきたと思うんです。時間はかかるかもしれませんが、サッカーへの情熱があれば誰でも監督になれる可能性はあると思いますよ」

とはいえ、普通のサラリーマンがS級を取得するのは想像以上にいばらの道。これからは、監督をリスペクトしながら応援しつつ、まずはD級から挑戦してみる…?

(榛村季溶子/short cut)

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