日本人初の五輪3大会連続金メダル!

柔道・野村忠宏がつかんだ“自分を裏切らない戦い”

2004.08.19 THU

野村は、自らが果たした五輪3連覇という偉業を、静かに受け入れているようだった。勝利が決定した試合終了のブザーの音を聞いても、慎ましやかな笑みを浮かべて静かなガッツポーズを見せるだけだった。

96年アトランタ五輪と00年シドニー五輪を、軽量級では初めて連覇しながらも、なぜか日陰の存在に甘んじていた野村は、世界柔道史上初の五輪3連覇への夢を熱く語っていた時期がある。シドニー五輪後、2年間のブランクを経て競技へ復帰し、その第一関門である、03年世界選手権出場を決めた頃だった。「3連覇を達成すれば、自分の柔道人生も変わる」という期待感を、彼の言葉の端はしから感じた。

だが今年に入ると、そんな尖ったような雰囲気はいっさい姿を消していた。
「五輪3連覇も実際にやってみないことにはどうなるかわからないし、日本にとって通算100個目の金メダルになるかもしれないということも、今の僕には関係ないですよ。とにかく、もう一回五輪で勝つために復帰したんだから、それを実現しようと思うだけです」

彼の口調は穏やかになっていた。

03年世界選手権で3位に終わったという屈辱が彼を変化させた。ビッグ大会で勝ち続けていたそれまでの彼が感じていた期待感のひとつには、他者がどう評価してくれるかというものがあったはずだ。だが一度敗戦を経験してからは、長い間頑張ってきた自分の努力を、自分でどう評価できるかという思いに変わった。他者の視線を気にすることがなくなり、再び、純粋に勝利だけを目指そうという心境に立ち返ったのだ。「自分自身を裏切らないような戦いだけを目標にするだけだ」、と。

アテネでは決勝こそ一本勝ちはできなかったが「体中に力がみなぎっていたし、今の自分ができる最高の柔道をすることができた」と評価する。大会直前に痛めた右肋軟骨の痛みも、冷静に燃えていた野村には何の障害にもならなかった。

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