無敗チャンプがついに王座陥落…

今だからこそ語りたい「ウィラポン」の凄さ

2005.05.26 THU

それは衝撃的な出来事だった。4月16日に行われたボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ。あの王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーションが、世界初挑戦の長谷川穂積に3‐0の判定で敗れたのだ。これがどれほどショッキングなニュースだったか、それは長谷川が勝ったにもかかわらず、翌日のスポーツ紙が「ウィラポンが負けた!」と報じたことでもよくわかるはず。

ボクシングにあまり興味のない人のために説明すると、ウィラポンは今回負けるまで同級王座を14連続防衛し、丸9年間も無敗だった伝説的なチャンピオン。もともとムエタイでは3階級制覇し、強すぎて対戦相手がいなくなったためにボクシングに転向したぐらいで、タイでは国民栄誉賞を4度も受賞し、カオサイ・ギャラクシーとも肩を並べるまさに国民的英雄なのだ。

だが、日本のボクシングファンにとってウィラポンが特別なのは、なにもその圧倒的実績だけではない。98年12月、あの辰吉丈一郎を失神KOで下し、WBC王座を奪取。辰吉は翌年の再戦でもやはりウィラポンにKOされ、西岡利晃に至っては、4度挑戦しながらついに1度も勝つことができなかった。日本人ボクサーにとって、ウィラポンのノーモーシンで繰り出される右、神業的なスウェーバック、なによりそのハングリーさは、長い間、けっして越えることのできない高き壁でもあったからだ。

実際、もともと謙虚な性格のウィラポンは、世界チャンピオンとなり、母国の英雄になっても、なおハングリーだった。なにしろ「ボクシングをするにはこの環境が一番いい」と家族4人で小さなジムの一室に住み、トイレも共同、奥さんはいまだに映画館のチケット売りをしているという。

しかし、そのボクサーの鑑のようなウィラポンも、すでに36歳。長谷川に負けたことでボクサー人生の岐路に立たされたのは確かだろう。果たしてウィラポン復活はあるのか――、ボクシングファンはその日を刮目して待とうではないか。

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