5歳ノーギャラで世界チャンピオンに

おじさんボクサー越本隆志に「お金より大切なこと」を学べ

2006.03.02 THU

ボクシング界に「おじさんチャンピオン」が誕生した。さる1月29日におこなわれたWBC世界フェザー級タイトルマッチで、韓国の池仁珍を判定で破り、新王者となった“35歳のおじさんボクサー”越本隆志がそれだ。

じつは今回の越本の快挙、まさに記録ずくめで、いろんな意味で日本ボクシング史を塗りかえるものだったのである。たとえば、まず35歳での世界王座奪取はあの輪島功一さんの32歳302日を抜く国内最年長記録。また日本人が世界フェザー級のチャンピオンになるのも、70年の柴田国明以来36年ぶりのこと。さらに越本は父親が会長をつとめる福岡のジムに所属しているのだが、九州のジム所属のボクサーが世界王者になったのも初めてのことだという。

だが、越本のほんとうのすごさはこうした記録ではない。じつは、仮にも世界王者になったにもかかわらず、この試合で越本が受けとったファイトマネーは0円。なんとノーギャラだったのだ。その理由は越本が地方ジムのボクサーで、試合そのものも福岡市でおこなわれたものだから。ボクシングの世界戦というのは首都圏でなければプロモートや資金面でハンデが大きく、地方で世界戦が開催されることはほとんどない。実際、今回の試合でも、地元企業をまわって必死に集めた数千万円の資金は前王者のファイトマネーや諸経費でそっくりそのままなくなってしまったのだという。

しかしそれでも越本には戦わなければならない理由があった。亀田興毅のような派手さや知名度もなく、地方のジムで地道にがんばってきた十数年のボクサー生活。それでも、やればできるということをみせるために。お金よりも、世界チャンピオンという見果てぬ夢のために――。「世界でいちばん気持ちの強い者が世界一になれる」。これは観戦していた柔道の古賀稔彦氏の言葉だが、たしかにこれほど越本を言いあらわしている言葉もない。35歳のおじさんボクサーは、なにか大切なことをわれわれに教えてくれたのかもしれない。

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