柔道・史上最年少チャンピオンの快挙

日本柔道界の新星19歳・石井慧は努力の男

2006.06.08 THU

記者の輪から抜け出した国士館大の山内直人監督に「すごいですね」と声をかけると、目を丸く見開いた表情とともに「俺だってビックリしたよ」という言葉が返ってきた。

4月29日の日本武道館、話題の主は全日本柔道選手権で優勝した国士館大2年の石井慧だった。19歳4カ月。100kg級の彼は山下泰裕の最年少優勝記録を6カ月塗り替えただけではなく、1959年の猪熊功以来47年ぶり2人目の初出場初優勝の快挙も果たした。「練習は嘘をつかないというのが、今回はすごくわかりましたね。あいつに素質はないが、超一流の努力をするという才能がありますから。故障してるから練習を休めと言っても、泣いて『やらせてください』と頼み込んで来るようなやつですよ」。山内監督はそう言って目を細める。

大阪の清風中で全国大会団体戦で優勝を果たし、清風高1年で大阪のタイトルを総なめにした石井は、「もっと強くなりたい」と国士館高校へ編入。高3だった04年には講道館杯100kg級を制して注目され、05年も連覇していた。だがその先には同門の先輩でもある鈴木桂治という大きな壁もあった。この大会も 有力選手 ではあっても 優勝候補 ではなかった。だが4回戦で05年世界柔道無差別級3位の高井洋平を破り、準決勝も圧勝して決勝へ進んだ。「準決勝の後、斉藤先生(仁・全日本監督)にすごい勢いで怒られて。ラスト30秒逃げ回ったから『お前の柔道じゃない。あれで勝っても意味はない』って。殺されるかと思うような目つきでしたよ(笑)」(石井)

鈴木にリードされて終盤を迎えた決勝、石井を追い立てたのは「最後まで攻めないとまた怒られる」という恐怖心だった。ラスト6秒、「この奇襲技しか練習で桂治先輩を投げられなかった」という、抱きつくような大内刈りで優勝を決めた。「最年少記録の次の記録更新は10連覇ですね。意気込みはそのつもりでいないと…」そう照れくさそうに笑う“努力の男”石井の表情には、素朴さが滲み出ていた。

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