目指せ、2016年TOKYO!? 

第10回 五輪の開会式を仕切っているのは誰!?

2009.05.14 THU

目指せ、2016年TOKYO!? 


画像提供/フォート・キシモト 1984年ロス五輪ではロケットマンが登場し、アメリカらしいエンターテイメント色あふれる開会式が印象的だった。さすが、ハリウッドの国!!

五輪開会式の裏側が知りたい!誰がどうやって作っているの?



2016年の東京五輪開催が現実味を帯びてきた今日このごろ。ちょっと浮かれぎみの担当パーソナリティのコバヤシです。もし東京大会が実現したら、絶対観たいのが開会式! 世界最大のショーを生で観られるなんて。

でも、ふと思ったのです。あんなドえらいイベントを、いったい誰が仕切っているの? 実は不肖コバヤシ、若かりしころにADとしてテレビ業界に身を捧げていた苦い経験があります。200人程度しか観客が入らない生放送のスタジオを仕切るのにも、本当に大勢のスタッフと数え切れない徹夜の日々が必要でした。だとしたら。

全世界に同時中継される五輪の開会式は、いったいどうやって作られているんでしょう? 1998年の冬季長野五輪で、開会式と競技映像の制作責任者だった元NHKの杉山茂さんに舞台裏を教えていただきました。

「開会式を作るうえで最も重要なことは、総合プロデューサーを決めることです。これは組織委員会が決めるものなのですが、その開催国で最も業績のある演出家が選ばれることが多いですね。ロス五輪では、テレビドラマの名プロデューサー、リック・バーチ氏が米国の歴史をミュージカル仕立てで表現し、北京五輪では『HERO』などの映画で有名なチャン・イーモウ監督が絢爛豪華なセレモニーをプロデュースしました」

なるほど。でも総合プロデューサーって、具体的にどんな仕事をするのでしょう?

「一番の大仕事は、メインコンセプトの決定です。オリンピック開会式のベースとなるテーマは、『古代オリンピアと現代オリンピックを結ぶこと』『開催国の文化を世界に伝える』ということなのですが、それをふまえたうえで、今の時代に何を伝えていくか、さらに突っ込んだコンセプトを開会式の2年ほど前から、じっくり考えていきます」

そのほか、私が気になるのが、式典当日の裏方さんの動きです。どれくらいの人数のスタッフが、どんなふうに動いて開会式を作っているのでしょう?

「長野大会の開会式演出には、ADさんのようなサポート役の方々も含めて、ざっと2000人くらいのスタッフが参加していたと思います。本番は総合司令室というところから、細かな指示を送って、会場全体を動かしていきます。緻密に計算された台本もあるんですよ。式典全体で各20ページの台本が100ブロック分ありましたから、合わせると2000ページくらいになっていましたね」

2000ページの台本!? そんな生放送、経験したことありません。世界最大のショーともいわれる開会式の裏側も、やっぱり世界一大がかりということなのですね。常識を超えたデカいプロジェクトの裏側を知って、ますます開会式を観たくなってきました! あ~あ、早く2016年にならないかなあ。
画像提供/フォート・キシモト 1998年の長野五輪開会式は、善光寺の鐘の音とともに幕を開け、当時の横綱・曙の土俵入りが行われるなど、日本文化を世界に発信する厳かなものだった

プロジェクトG(五輪)伝説の開会式を作った男たち



2016年に実現するかもしれない東京五輪。もし実現したら、どんな開会式になるのか、開会式の大ファンの私にとっては今から気になってしょうがありません! でも開会式の内容って、いったいどうやって決めるのか? この際なので、開会式のプロデュースを担当した張本人に直接聞いてみたい!

1998年の長野大会の式典の総合プロデューサーは、かの有名な劇団四季の浅利慶太氏。音楽プロデューサーは世界のオザワこと小澤征爾氏でした。そしてイメージプロデューサーとして重要な役割を担ったのが、芥川賞作家でもある新井満(あらい・まん)氏だったそうです。

そこで! 日本を代表する芸術家の一員として長野五輪の開会式をプロデュースしたり、シナリオを書いたりした新井さんに、当時のお話を伺いました。

「ちょうど五輪開催の3年ほど前に、長野五輪事務局から『長野五輪の基本コンセプトを考えてほしい』と頼まれたんです。その仕事は開会式の根幹を成す重要な内容。その打診以降、コンセプト作りの方向性を探るために、「あなたならどんな開会式をやるか」をテーマに、1年がかりでたくさんの方々と対談をしました。組織委員会や芸術家の方たちとの対談の中で、五輪の開会式でどんなことを表現、発信していけばいいのか、ひたすら考えました」

1年にもわたる試行錯誤。演出家だけでなく、様々な分野の人々と意見交換することで、その時代にフィットするメッセージを探していったのですね。

「1年後、『愛と参加』というコンセプトが決まったのですが、その直後、阪神・淡路大震災が起こったんです。被災地の神戸には、全国から若者たちが駆けつけ、救援に参加していました。当時それはボランティアという日本ではまだ新しい言葉で表現されていましたが、私はそれこそが愛と参加という思想だと思ったんです。誰かを助けたいという気持ちを具体的な行動で表すこと。これこそ、今(当時)の時代の流れだと思ったんです。それで、『愛と参加』というテーマは、絶対にイケると確信しました」

大きな災害から自然発生的に生まれた社会の流れや新しい考え方を事前に敏感にすくい取って、コンセプトを作る。長野五輪の開会式は、こんなにも深い思想を内包したものだったのですね。

東京五輪でも、きっと日本を代表する芸術家が素晴らしい式典を作ってくれることでしょう。ところで、経験者の新井さんにぜひ聞きたいことが一つあるのですが。もし2016年の東京五輪が実現した場合、いったい誰が総合プロデューサーに抜擢されると思いますか?

「何ともいえませんね。2016年に日本がどんな社会になっているか、誰にもわかりません。でもきっと時代の流れを鋭く感じ取って、それを表現できる芸術家が現れるでしょう」

時代の流れ。確かに五輪の開会式は、時代を映す鏡のようなものかもしれません。だとしたら、2016年の東京五輪の開会式は、どうか明るく、未来を感じさせるものであってほしいですね! 今回取材をさせていただいた方々が
口を揃えておっしゃっていたのが、「開会式のお祭り化」。
つまり、年々セレモニーが派手に、過激になってきて、
開会式本来の目的を忘れつつあるのではないか、ということでした。

開会式の本来の目的とは、選手の入場と選手宣誓です。

確かに、昨今のド派手な開会式では、
選手たちよりもセレモニーそのものが
目立ってしまっている気もしないではないですよね?

2016年、もし東京五輪が実現したら、そのときは世界中の人々の心に残る、
日本らしいセレモニーができますように。

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