殻を破るなら旅に出ろ! のホント

第6回 ビジネスチャンスは旅先にこそあり!?

2009.10.09 FRI

殻を破るなら旅に出ろ! のホント


“交流する飲食店”をテーマにした『パクチーハウス東京』。パーティなどの交流イベントも頻繁に行われているそうだ

オープンのきっかけは旅!? 世界初のパクチー料理専門店とは!



失恋により(※詳しくは第5回を参照ください(T_T))図らずも海外デビューのチャンスを逃してしまった渡 歩(わたり・あるく)。いまだ、傷心の真っただ中にあります。
が、本連載を通じて育んできた世界への情熱はすでに抑えがたく…。こうなりゃ彼女抜きでも海外に行ってやろーじゃねーか。もう、ラヴなんていらねーやい。やっぱマネーだよ、マネー。だってお金はボクを裏切らないもの(T_T)。なんて複雑な気分です。

というわけで、様々な角度から“旅”の効能を研究する本連載。今回はとりあえず恋愛からビジネス方面へと目先をシフトすべく、東京都世田谷区を訪れてみました。

えっ? なぜ世田谷かって? そこに『パクチーハウス東京』があるからですよ。

世田谷区・経堂に店を構える『パクチーハウス東京』は、その名の通りパクチースープやパクチーの天ぷら、パクチーライス、さらにはパクチーのアイスクリームなどが味わえる世界初のパクチー料理専門店。オーナーの佐谷 恭(さたに・きょう)さんは、これまで世界約50カ国を渡り歩いてきた生粋の旅人で、「旅気分を味わえるような交流重視の飲食店を作りたい」と同店をオープンさせた起業家でもあるのです。
そう。今回は「パクチー万歳!」「相席最高!語り合おうぜ!」という旅人ならではのエッジのきいたコンセプトを前面に打ち出し、約26坪の小さな店を、開店2年弱で計2万人以上集客するまでに育て上げた佐谷さんに、“旅”からビジネスチャンスを発掘するコツを学ぼうって寸法なんです。

佐谷さん! 旅がきっかけで店をオープンさせたって本当ですか?

「そうですね。ボクがパクチーとはじめて出会ったのは12年ほどまえのカンボジアでしたし、ひとつのテーブルを様々な人が囲んで会話を楽しむというゲストハウスの食卓のような“交流型”のお店を作ろうと思ったのも、“旅”がきっかけ。“旅”がなかったら、『パクチーハウス東京』は生まれていなかったですね」

なるほど。やっぱり“旅”にはビジネスのヒントが転がっているってことですね!!
でも、そもそも佐谷さんが“旅”にハマッたきっかけってなんだったんですか?

「ボクがはじめて海外に行ったのは、大学1年生のころ。下関からフェリーに乗って、韓国へ行ったんですよ。はじめての海外旅行で何よりも驚いたのが『世の中には旅人がたくさんいるんだな』ってことでした。旅を通じて、普段は出会えないような様々な旅人たちと話せるのが楽しくて、その後もすっかり旅にハマったんですよね」

旅人との出会いって、普通の出会いと何か違うんですか? やっぱり祖国を離れた不安から、お互いに熱い想いがあふれ出ちゃったりするんですか?
お気に入りの旅先というイランにて、現地の人々や旅人仲間とはしゃぐ佐谷さん(写真中央)。楽しそっ!
「いや(笑)。ボクにとって一番の魅力は、年齢や職業、国籍という肩書きヌキで語り合えることでしたね。日本での会話って、目上の人だから、とか、エライ人だから、とか…。相手の肩書きを気にすることが多いじゃないですか。でも、旅先で偶然出会った旅人同士だと、全然そんな必要はないんですよね。50歳を過ぎた大企業の部長さんだって、社会からドロップアウトしたようなアウトローなお兄ちゃんだって、みんな対等な目線で話ができる…。肩書きや立場に関係なく、面白い人を面白いと感じられる雰囲気があって、それがすごく新鮮だったし、心地良かったんですよ。だから『パクチーハウス東京』をオープンするときには、あえて相席を推奨して、その場に居合わせたお客さん同士が、旅先のように“肩書きヌキの交流”ができる店を目指したんですよ」

なるほど。“旅をヒントにビジネス”というと、ついつい珍しい商材の輸入なんかを考えてしまいそうですが、『パクチーハウス東京』の場合は、旅の“雰囲気”そのものを輸入したってわけなんですね~。それ、イタダキ…たいっ!
インド・ニューデリーのメインバザール。ガイドブックなどをあえて持たず、現地での出合いを楽しむのが佐谷さんの旅のスタイルだとか

旅する起業家・佐谷さんが語る 旅とビジネスの関係とは!?



旅で得た経験をヒントに『パクチーハウス東京』をオープンし、人気店に成長させた佐谷 恭(さたに・きょう)さん。京都大学を卒業後、大手メーカーやITベンチャーを経て、英国ブラッドフォード大学大学院で平和学修士号を取得(論文テーマは『旅と平和』!!)。帰国後は、某IT企業での報道記者として活躍していたという佐谷さんは、どうしてサラリーマンを辞めてまで、未経験の飲食店オーナーを志したのだろう?

「簡単に言うと、サラリーマンが面白くなかったんです(笑)。というのも、旅のルートと同じで、人生の行き着く先って、自分がどのタイミングで何を選ぶかで全く変わってくるし、その決断自体が面白いと思うんですけど、サラリーマンをやっていると、どうしても選択肢が限られちゃう気がしたんですよね。それに、はじめての海外旅行以来12年以上続けていた旅の経験や魅力を、そろそろ自分なりの方法で誰かに伝えたいという思いもありましたから、これはもう、起業しかないかな、と」

そんな佐谷さんだが、会社を辞めてすぐに『パクチーハウス東京』を思いついたわけではなかったそうだ。

「最初は、飲み会やパーティを企画して飲食店に集客を請け負うビジネスを考えていました。昔から、バックパッカーを集めての飲み会を主催したりしていたので、人を集めることには自信があったし、パーティなどの場を通じて旅の魅力を表現できるんじゃないか…と思っていたんです。ただ、当時は飲食業の経験がなかったので、業界研究も兼ねて店作りのノウハウ本を何冊も読んでみたところ、全然ピンとくる本に出会えなくて…」

そこで役に立ったのが、これまた旅の経験。

「ノウハウ本の通りやっていても、どこにでもありそうなお洒落な個室居酒屋しかできないし、それならパキスタンの屋台の方がずっと楽しいよなぁ…なんて、旅人視点でいろいろ考えていたら、『あれ? 他店の集客を請け負うよりも、自分で店を始めたが面白いんじゃないか』って思ったんですよね。そこで考えたのが、旅の空気を身近に味わえる“交流型の飲食店”だったんです」

“交流型の飲食店“という発想とリンクしたのは、言わずもがな、パクチーという食材。実は、佐谷さんは起業を決意する以前から、旅人仲間とパクチーパーティを主催したり、パクチー好きによるコミュニティ『日本パクチー狂会』を主宰したりと、パクチーとは因縁浅からぬ関係にあったのだそう。
パクチーと羊肉のコンビネーションがクセになる一品「ヤンパク」(890円)。『パクチーハウス東京』のイチオシメニューでもある
「旅好きには、パクチー好きが多いんですよ(笑)。パクチーって、タイ料理やベトナム料理の印象が強いですけど、実は地中海エリア原産の植物で、アジアはもちろん、ヨーロッパや中南米など、世界150カ国で親しまれるワールドワイドな食材。呼び名もパクチー、コリアンダー、シャンツァイなど、各地でさまざまなんです。それに、好き嫌いが分かれるパクチーは、話のタネになりやすくて“交流型の飲食店”というコンセプトにマッチする。あ、そうそう、パクチー料理専門店なんて風変わりな店なら、2、3の雑誌が取材してくれるかな、という読みもちょっとありました(笑)」

実際『世界初のパクチー料理専門店』というキャッチコピーに対する世間の反響は予想以上で、取材の数はオープン後1年間で100回以上! う~ん、恐るべきパクチーパワー&佐谷さんの選球眼!
佐谷さん! その鋭いビジネスセンスを身につけるコツは、やはり旅にあったんでしょうか?

「そうですね(笑)。やっぱり、多くの文化や国を見ていると視野が広がりますし、日本では経験できないモノやコトとの出会いがあることは確かですよね。それと、店を始めてみて気付いたのは、旅と経営がすごく似ているということ。例えば旅をしていると、見知らぬ街で『何を食べるのか、どこへ行くのか』という判断をひとつひとつ迫られますが、先の見えない状況でかじ取りをするという点では経営も全く同じ。だから、旅を通じてたくさんの判断を重ねてきたことが、今、すごく役立っている気がしますね」

うーん。なるほど。旅にはビジネスのヒントが転がっているだけでなく、経営者としての資質を磨く効果もあるってことかぁ。
よーし、ボクも、いっちょひとり旅でも経験して、社長さんを目指してみっか! 
ん、甘い…? 誰もが脇役としか考えなかったパクチーを
メニューの主役に据えたり、
個室やプライベート空間がもてはやされるこの時代に
あえて相席を奨励する店を作ったり…。
型破りともいえる『パクチーハウス東京』のコンセプトには、
多くの国を旅し、発見を重ねてきた
佐谷さんならではのアイデアが凝縮されていました。
また、思いついたアイデアをヒョイっと実践してみる
フットワークの軽さも旅人ならではなんでしょうね。カッコいいなぁ!

ちなみに、佐谷さんに海外デビューにオススメという旅先を聞いたところ、
物価も安く、治安もほどほどで、パクチー生産量の多い
東欧のブルガリアがイチオシとのこと。

遅ればせながら、ボクも斬新なビジネスの切り口をつかむ第一歩として
東欧のホテルをエクスペディアでチェックしてみたいと思います!


というわけで『旅で殻を破れるの?』を探る本連載、
今後も各方面の旅の先輩たちの体験談やアドバイスを聞いていきます!
みなさんからの投稿もお待ちしていますので、よろしくお願いしまーす。

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