よくわかる統計マジック

第1回 失業率は実態よりもだいぶ控えめ?

2010.03.09 TUE

よくわかる統計マジック


完全失業率を算出するとき、青色部分の「非労働力人口」は勘定に入れません。しかし、このなかにも、就業希望者が471万人含まれています。完全失業者を上回る数の人たちが、「働きたいけれど求職活動はしていない」のです。 図版デザイン/坂井大輔

ただ働いていないだけでは「完全失業者」になりません



総務省が3月2日に発表した「労働力調査」によると、2010年1月の完全失業率は4.9%(季節調整値)。前月から0.3ポイント低下し、10カ月ぶりに5%を下回りました。単純に数字だけを見れば喜ばしいことですが、実感としてはもっと高いような気も。なぜ、このようなギャップが生じてしまうのか。

まず、労働力調査とは、全国から無作為に選ばれた約4万世帯に住む15歳以上の人(約10万人)を対象にした、月末の7日間における就業状態の調査です。これは総務省統計局が毎月実施する大規模なアンケート調査であり、数字そのものは、統計的にはとても精度が高いといえます。

では、どこにズレがあるのかといえば、ぼくらの「失業者」の捉え方ではないかと。完全失業率とは「労働力人口に占める完全失業者の割合」を示します。数式にすると

完全失業率(%)=完全失業者÷労働力人口×100

ですね。「労働力人口」は就業者と完全失業者の合計です。で、ここで注意すべきは、労働力調査における「完全失業者」は、一般的な「失業者」のイメージよりもかなり限定されているということです。すなわち、「完全失業者」とは、月末の1週間のあいだに

・仕事に就いておらず
・仕事があればすぐ就くことができて
・仕事を探す活動をしていた

人を指します。なお、上記の3要件はILO(国際労働機関)の定めた国際基準に準拠したものです(※1週間の調査期間は日本独自)。この定義に沿うと、たとえば定職に就いていない人でも、月末の1週間に1時間以上バイトをすれば「就業者」扱いになります。 また、失業しているけれど、「適当な仕事がありそうにない」からなんとなく休んでる人や、職探しをあきらめた人も「完全失業者」には含まれません。こうした就業の意思のない人は「非労働力人口」としてカウントされ、完全失業率の算出にあたってはまったくの蚊帳の外。定年退職した高齢者や専業主婦、学生、ニートもここに含まれます。ちなみに、ILOの基準に従えば、いわゆる「家事手伝い」は「就業者」とみなされます。

このように、「完全失業者」たりえるにはなかなかに高いハードルをクリアしなければなりません。世間の見方では失業者と思われる人も、「就業者」や「非労働人口」として数えられていることが考えられるので、総務省発表の完全失業率は、「完全失業者」の定義を踏まえたうえで、あくまでも参考値と見るのが妥当でしょう。 この連載で取り上げてほしいテーマや、気になる統計データがあれば、右下の投稿ボタンから投稿ください!

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