よくわかる統計マジック

第7回 世論誘導にご用心!

2010.04.20 TUE

よくわかる統計マジック


グラフは内閣府が2010年1月に行った「社会意識に関する世論調査」の一項目。一見すると愛国心が強い人が多いようにも見えますが、質問は「他の人と比べて『国を愛する』という気持ちは強い方だと思うか、それとも弱い方だと思うか」。見方を変えれば「日本人には愛国心が足りない」と感じている人が多い、とも取れますね 図版デザイン/坂井大輔

質問と選択肢次第で「世論」は変わる?



前回、世論調査を見る際は調査方法や有効回答率に注意すべし、と書きましたが、もうひとつ、調査の信ぴょう性を判断するうえで重要なのが質問文です。

少し古いですが、わかりやすい事例をふたつ紹介します。ひとつは朝日新聞で、2001年8月4日の朝刊に「65%が靖国参拝に反対」という見出しが躍りました。これは小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝についての世論調査です。同時期の他紙の調査ではどこも参拝賛成派が反対派を上回っていたのに、朝日だけがこの結果(ちなみに読売新聞は賛成40%、反対34%)。いったいどんな調査をしたのか。

【質問文】
小泉首相は、終戦記念日の8月15日に靖国神社へ参拝すると言っています。あなたは、小泉首相が靖国神社参拝に積極的に取り組んで欲しいと思いますか。それとも、慎重にした方がよいと思いますか。

・積極的に取り組んで欲しい/26%
・慎重にした方がよい/65%
・その他、答えない/9% 本来なら「賛成」か「反対」かで問うべきところを「積極的に」と「慎重に」。いずれもあいまいな表現で、解釈も人それぞれでしょう。お隣の国に配慮しつつ「慎重に」参拝すればOK、ととらえる人もいるかもしれません。いわば消極的賛成も「反対」に取り込んだわけです。もうひとつの例は読売新聞、1992年5月1日の朝刊です。

【質問文】
四月一日、消費税の税率が3%から5%に引き上げられました。高齢化が進む中で、いま消費税の引き上げを行わないと、財政状態がさらに悪化して、次の世代の負担が重くなったり、福祉の財源が不足するなどの影響が出ると言われています。あなたは、今回の消費税の引き上げを、当然だと思いますか、やむを得ないと思いますか、それとも、納得できないと思いますか。

・当然だ/5.4%
・やむを得ない/50.7%
・納得できない/42.6%
・答えない/1.2%

で、紙面には「消費税上げ56%が容認」。質問文の「高齢化~」ではじまる一文は明らかに消費税アップを「やむを得ない」と考える方向に誘導しています。この場合は、簡潔に「あなたは消費税引き上げに賛成か、反対か」と問うか、あるいは増税の必要性を訴えるなら、それがどのくらい家計を圧迫するかといったマイナス要素も客観的に併記すべきでしょう。

このように、世論調査の結果は設問の立て方や選択肢によって変わります。見出しに使われる数字だけを見ていると、世論誘導に乗せられてしまうおそれがあるのでご注意を。 この連載で取り上げてほしいテーマや、気になる統計データがあれば、右下の投稿ボタンから投稿ください。

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