社会性とやらを生物に学べるか?

第3回 平和主義な生き物、ゲラダヒヒ

2010.09.14 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


ゲラダヒヒのオス。肩にマントのような長い毛がかかっているのが特徴で、胸元は赤い皮膚がむき出しになっている 画像提供:日本モンキーセンター

群れが集まってさらに大きな群れを形成



ご近所間のいがみ合いから、国家間のケンカまで…。なにかと争いの絶えない霊長目の動物・ヒト。でも同じ霊長目には 平和主義のサルもいるようです。エチオピアの高地にすむゲラダヒヒは、小さな群れがいくつも集まり、仲良く暮らしているらしいのです。その裏には、巧妙な恋の駆け引きもある様子。その社会の仕組みについて、日本動物科学研究所所長の今泉忠明先生に伺いました。
  
「ゲラダヒヒは、1頭のオスをリーダーに、数頭のメスとその子どもたちで構成される群れ(ユニット)で生活しています。リーダー以外に二番手のオスがいることもあります。このユニットがいくつか集まってバンドと呼ばれる大きな集団になり、そのなかには、独身オスの一団もあります。各ユニット間に優劣はなく、争いが起こることはめったにありません」(今泉先生)

平和な関係が築かれているんですね。今泉先生によると、バンド同士が出会っても争うことはなく、複数のバンドが集まってハードというもっと大きな共同体になるのだそうです。

「ゲラダヒヒは環境のよい場所から他の動物に追いやられ、エチオピアの高地に移ったものがすみ着くことに成功して生き延びたと考えられます。断崖絶壁のある高原で決していい環境ではありませんが、それなりに食物が豊かなので、争いのない大きな群れが形成されているのではないでしょうか」(同) なるほど。では、独身のオスはどうやってリーダーになるんでしょうか?。

「リーダーに闘争を挑む者もなかにはいますが、そこでケガをするとリーダーになっても長生きすることはできません。多くのオスは無難にまずリーダーから相手にされていないメスを探して誘うんです」(同)

ものすごく控えめですね…。今泉先生によると、ゲラダヒヒのメスは、遠くからでも胸を見れば発情期かどうかがわかるそうです。また、表情も遠くから判別しやすいため、発情期のメスに下手に近づいて争いになることもないのだとか。ところで、若いオスにリーダーの座を奪われるとどうなるんでしょう。

「ほかのオスに群れを乗っ取られたとしても、ニホンザルの群れのように追放されてのたれ死ぬなんてことにはなりません。ユニットの二番手になったり、バンドのなかで似た境遇のオスと暮らしたりと、しっかり受け皿があるんです」(同)

生きていく上での受け皿がある…さしずめ「社会保障」といったところでしょうか。このあたりも、ゲラダヒヒが平和に暮らしている要因になっているんですね。 取り上げて欲しい動物、ご意見などありましたら投稿ボタンよりおねがいします。

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