世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

日本の最低賃金はなぜ低いのか?

2010.09.16 THU

経済学ドリル


【問1】日本の最低賃金(全国平均)は10年前と
比べていくら増えた?
(注)99年度から09年度までの増加額

A 1時間あたり34円 B 1時間あたり64円 C 1時間あたり94円

【解説】日本では1時間あたり賃金の最低限度額である最低賃金が地域ごとに定められています。これまで日本の最低賃金は少しずつ引き上げられてきましたが、水準は低く、現在の最低賃金(全国平均で1時間あたり713円)では暮らしていくのが相当に厳しいと指摘されています。最近まで最低賃金で働いている人のなかには、生活保護を受ける世帯よりも年収が少なくなってしまうケースさえありました。
07年12月には、そのような矛盾が起こらないよう「最低賃金法」が改正され、その結果、08年度の最低賃金が大幅に引き上げられることになりました。
さらに今年8月、厚生労働省は2010年度の最低賃金の目安を全国平均で15円引き上げることを決定。今後も各都道府県で最低賃金を引き上げる動きは続くと予想されます。
OECDの統計によると、日本の最低賃金の水準は主要先進国の中では最低ランクになっており、最低賃金の引き上げ余地は大きいといえます。

【問2】世界で最も高いルクセンブルクの最低賃金は
日本の何倍に相当する?(08年の比較)
(注)最低賃金は物価変動の影響を除いた実質
ベース、購買力平価の米ドル換算で比較

A 約1.7倍(時給1205円相当) B 約1.5倍(時給1055円相当) 
C 約1.3倍(時給914円相当)

[正解] 問1:B 問2:A


門倉貴史 かどくら・たかし 慶應義塾大学経済学部卒業後、金融機関のシンクタンクで主任研究員などを歴任。現在、BRICs経済研究所代表。専門は日米経済、BRICs経済、地下経済など。著書に『世界を席巻するインドのDNA』(角川SSC新書)、『人妻の経済学』(プレジデント社)など多数

最低賃金「時給1000円」をめぐる攻防



日本の最低賃金はOECD主要国の中では最低クラスとなっていますが、いったいなぜでしょうか?
大きな理由のひとつに、日本の最低賃金が企業の賃金支払い能力を考慮して決定されていることがあります。欧州など他の先進国では、企業の賃金支払い能力に関係なく、労働者が最低限の生活を送れるかどうかだけを考慮して最低賃金を決めているので、企業の支払い能力にも配慮した日本の最低賃金との間に大きな開きが出てしまうのです。
もうひとつは、日本で最低賃金が定められた当初、長期間最低賃金で働く人が多数出てくるとは想定されていなかったことが挙げられます。日本で最低賃金法が定められたのは1959年ですが、このときは18歳の単身者の賃金が最低賃金を決定する際の基準になっていました。日本の企業の大半は年功序列型の賃金制度を採用していたので、多くの労働者は新入社員のころは生活が厳しくても、最低賃金の水準からあっという間に抜け出すことができたのです。ところが90年代以降、年功序列型賃金制度が徐々に崩壊し、時給で働く非正社員の割合が高まるようになると、最低賃金に近い水準で、苦しい生活を余儀なくされる人がたくさん出てくるようになりました。
こうしたなか、政府は労働者の生活を守るべく最低賃金の引き上げに注力しています。最終的に最低賃金をどのレベルまで引き上げるかについてはいろいろと議論がありますが、欧州主要国の平均が1時間あたり1000円程度であることを踏まえると、1000円というのがひとつの目安になるでしょう。ただし、最低賃金をこの水準まで引き上げると、コスト高によって中小企業や零細企業の収益環境は相当悪化する可能性があるので、最低賃金の引き上げは、一気に大幅アップするのではなく徐々に国際水準に近づけていくことが望まれます。

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