社会性とやらを生物に学べるか?

第5回 順位が大事なオオカミの群れ社会

2010.09.28 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


群馬サファリパークの「オオカミの森・オオカミ繁殖センター」で飼育されているシンリンオオカミ。日本ではかつて自然界にニホンオオカミが生息していたが、絶滅してしまった 画像提供:群馬サファリパーク

繁殖するには独り立ちが必要



ある程度安定した現在の暮らしを持続するか、それ以上の満足感を得るために今の生活を捨てて冒険してみるか…。極端な選択肢かもしれませんが、これから先の人生について思い描いたとき、この二つの間で迷うことがあるかもしれません。こうした状況は、人類のものだけではなく、動物の世界でもある様子。たとえば、オオカミにも似たようなことがあるようです。

日本動物科学研究所の今泉忠明先生によると、オオカミは数頭から十数頭ほどのパックと呼ばれる群れを作って暮らす、社会性の高い生き物なのだそうです。

「オオカミは群れの仲間と共同で狩りを行います。そのため、仲間同士には厳格な順位があり、ムダな争いをしないようになっています。もっとも強いオスとメスはそれぞれアルファオス、アルファメスと呼ばれ、基本的に群れの最初の2頭になったペア。つまり父親と母親で、ほかの個体はその子どもたちです。子どもたちは大人になるころには順位が決まり、上位の個体に従うようになります」(今泉先生)

家族でもある群れのなかで争いが起こることはまれで、下位の個体が上位の個体の鼻先を舐めたり、寝転がって腹を見せるなどして、服従をあらわすこともあるそうです。上下関係を重んじる動物なんですね。また、繁殖はふつう、アルファでなければできないのだそうです。 「オオカミは一夫一婦制で、繁殖できるのは群れで一組のみ。通常、アルファオスとアルファメスのペアが繁殖し、ほかの個体もアルファペアの子育てを手伝います。つまり、先に生まれた子どもたちが親と一緒に弟や妹の面倒を見ることになります」(同)

そして、子どもたちは一人前になると独り立ちし、ほかの群れと合流したり、ペアの相手を見つけて新たに群れを作ったりすることになるそうです。しかし、アルファになれないのに、そのまま群れに残る個体も少なくないのだとか。

「独り立ちすると飢える危険性があります。仲間といた方が狩りもうまくできるので、食べ物には困りません。繁殖ができないことよりもご飯だけは食べられるという満足感が勝って、群れに残るわけです。ただ、アルファが老齢化すると獲物が取れなくなるので、残っていた個体も群れから出ていくでしょう」(同)

まずは生きていくことが大事というわけですね。裏を返せば、それだけ群れの組織力がしっかりしているから、親元に残るのかもしれません。大人になっても親に頼ってしまうあたりは、なんだかボクら人類にも似ています。ただ、親元を離れなくても子孫を残せるボクらと違って、オオカミの社会は独立が必要。厳しいですね。 取り上げて欲しい動物、ご意見などありましたら投稿ボタンよりおねがいします。

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