社会性とやらを生物に学べるか?

第7回 群れ全体がひとつの生き物? 管クラゲの生態

2010.10.12 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


管クラゲ目のカツオノエボシ。カツオと同時期の初夏ごろから太平洋沿岸に出てくることと、ウキとなる部分が烏帽子(えぼし)のようなことからこの名前に。見た目はきれいだが、刺されると大変だ 画像提供:新江ノ島水族館

1匹のようで1匹じゃないナゾの生き物



企業を生き物にたとえてみると、それぞれ専門の役割を持つ器官(部署)が集まることで一つの生命体として成り立っているといえます。自然界には、まさにそんな感じの珍しい生き物もいるようです。管クラゲ目に属するクラゲは、1匹に見えるけど実は個体の集団(群体)で成り立っているのだとか。そんな管クラゲの仲間たちについて、新江ノ島水族館の魚類チーム学芸員・足立さんにお話を伺いました。

そもそも、管クラゲ目のクラゲはどんな生き物なんでしょうか。

「管クラゲ目のクラゲは150種類以上あり、強い毒で知られるカツオノエボシや、ヨウラククラゲなどがいます。主に沿岸ではなく外洋にすんでいますが、カツオノエボシは風の影響を受けて海岸に打ち上げらることもありますよ」(足立さん)

その体の仕組みはどのようになっているんでしょう。

「管クラゲ目のクラゲは、複数の個虫で成り立っている群体です。連なった個虫が、ウキ部分、泳ぎを担う部分、エサをとる触手やエサを食べる口の部分、生殖体となる部分など、場所によってそれぞれの役割を果たしているんです」(同)

まさしく会社の部署みたいに専門性を持ってわかれているんですね。でも、個虫はどのようにして一つの群体になるのでしょうか。もしや、各個虫が集まって合体したり…。
管クラゲ目に属する、ヨウラククラゲの1種。カツオノエボシに負けじと美しいこのクラゲは、仏壇に飾られる瓔珞(ようらく)がその名の由来という説がある 画像提供:新江ノ島水族館
「いいえ。他の生物と同じで、始まりは1個の受精卵です。そこからまず体の幹になる糸のようなものができます。その先端は片方がウキ、もう一方が口になっています。その後、幹にできたいくつかの生長点から無性生殖で個虫が増殖していきます。各器官が形成され、どんどん成長していくんです。役割も見た目も異なりますが、個虫はすべて同じ遺伝子のクローンなんです」(同)

足立さんによると、管クラゲ目の一種であるマヨイアイオイクラゲは、増殖した個虫が細長く連なることで、なんと40~50mの長さにまで成長することもあるそうです。もはや超巨大企業といえそうですが、全部署を統率する社長のような役割を担う個虫もいるんでしょうか。

「いいえ。クラゲは脳を持っていませんから、どこかで統率しているのではなく、体全体の神経が反射的にいろんな状況に対応しているんでしょうね」(同)

なるほど。各個虫が指示も受けず、とにかく自分の役割に没頭しているんですね。また、足立さんによると、個虫の役割が途中で変わる配置換えもないそうです。このあたりは、ボクら人類の会社組織とは異なりますね。もちろん、さぼることもないでしょうし…。 取り上げて欲しい動物、ご意見などありましたら投稿ボタンよりおねがいします。

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