社会性とやらを生物に学べるか?

第8回 ダチョウの子育ては太っ腹?

2010.10.19 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


ダチョウはオスとメスで羽根の色が異なるため、簡単に見分けることができる。オスは黒、メスは灰色の羽根を身にまとっている 画像提供:静岡市立日本平動物園

1匹のメスがほかのメスの卵も世話



同僚や友人に「君の分の仕事もやっとくから帰っていいよ~」とか「君の分も払っといてあげるよ」とかいわれると「お、太っ腹」と感じますよね。自然界でもそれに似たシーンはあるようで、たとえばでかい卵で知られるダチョウの子育ても「太っ腹」な一面があるようです。その仕組みについて、日本動物科学研究所の今泉忠明先生にお話を伺いました。

「ダチョウは1匹のオスと複数のメスがひとつの群れをなしています。オスはまず、メスのうち1匹と交尾し、そのメスはオスが作った巣の中心に卵を産みます。その後、ほかのメスたちがその周りに卵を産みます」(今泉先生)

群れのメスたちが、同じ巣に卵を産みつけるんですね。その世話は誰がするんでしょうか。

「抱卵はほとんどオスの仕事ですが、最初に卵を産んだメスも昼間のほんの少しの間、卵を抱きます。抱卵というと卵を温めるのがふつうですが、ダチョウの場合は直射日光を避け、冷やすためにも抱くんです」(同)

最初に産んだメスはほかのメスの卵の世話もするんですね。少しの時間とはいえ、太っ腹な…。

「いえ、最初のメスは、いつの間にか卵が増えているという感覚を持つ程度だと思いますよ。ともかく卵を守るという本能で動いているんです」(同) 意識してほかのメスの卵の面倒を見ているわけではないんですね。また、最初のメスの卵は巣の中心にあるため、外敵に襲われる確率が低いそうです。ただ、今泉先生によると、最初のメスがそうなるように意図しているわけではないのだとか。巣の中心が少しくぼんでいるために、最初のメスの卵が自然と中心に位置するのだそうです。ところで、2番目や3番目に産んだほかのメスたちは何もしないわけですよね。こちらは意図して他人任せにしているということなんでしょうか。

「意識的に卵の世話を任せているとは到底思えません。行動学的には、産みつけられている卵を見て、衝動的に産んでしまったものと思われます。世話をするという衝動は持ち合わせていないため、面倒は見ないんでしょうね」(同)

なるほど。では、同じ場所に卵を産むことに、群れとしてのメリットはあるのでしょうか。たとえば、卵が1カ所にまとまってある方が生き残る確率が高くなったりとかは…。

「おっしゃるとおり、数が多いほど生き残る確率が高くなります。また、ヒナもオスと最初のメスがまとめて面倒を見ますが、ダチョウのヒナは産まれてすぐに歩き、自分で食べ物をとるため、親は特に給餌の必要がありません。子育てに手間はかからないので、何十羽いたとしても、親への負担は変わらないわけです」(同)

まとめて面倒を見ることは、群れにとってはメリットが十分。最初に卵を産んだメスが太っ腹であったり、面倒見がよかったりというわけではないようですが、仕組みとしてはバッチリ機能しているわけですね。 取り上げて欲しい動物、ご意見などありましたら投稿ボタンよりおねがいします

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