社会性とやらを生物に学べるか?

第9回 助け合いで飢えを防ぐチスイコウモリ

2010.10.26 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


コスタリカで撮影されたチスイコウモリ。チスイコウモリの体長は10cm弱。鋭い歯で獲物に傷をつけ、その血をなめる 画像提供:大沢夕志/大沢啓子

血縁を越えて血を分け合う動物とは?



仕事で仲間が困っているのを見ると、助けてあげたくなるものですよね。そしてこれは、人間だけの話ではないようです。たとえば、中南米に生息するチスイコウモリ。100匹ほどの群れを作り、洞窟などをねぐらにしている彼らは、自分が得た食べ物(血)を仲間に分け与えるといわれているのです。その社会性について、日本動物科学研究所の今泉忠明先生にお話を伺いました。

「チスイコウモリは夜行性で、牛などの家畜の皮膚を切り、そこから出た血をなめて栄養を補給しています。食べ物を得た個体は、食べ物に困った個体がいた場合、血縁がある相手だけでなく、ねぐらの仲間にも分け与るといわれています」(今泉先生)

血縁のない仲間にまで分けてあげるのはなぜなんでしょう。

「チスイコウモリは毎晩、集団のおよそ20%の個体がまったく食べ物にありつけないといわれています。また、代謝の速度が速いため、食事にありつけない場合、すぐに餓死してしまいます。早いものだと次の晩まで命が持たない個体もいるようです」

食べ物がないと危機的な状況に置かれるわけですね。ただ、チスイコウモリは、過去に食べ物を分け与えてくれた個体には食べ物を分けるものの、分け与えてくれなかった個体には分け与えないのだそうです。やみくもに分け与えるのではなく相手を選ぶのは、どうしてなんでしょう。 「これは互恵的利他主義というものです。食べ物をとれない夜が自分にもかなりの確率であり得るので、見返りが期待できる相手を選ぶ必要があります。見返りがなければ、ほかの個体に与える意味がありませんから。互いに助け合うことで、集団で生き残れるんです」(同)

助け合い、支え合いが重要なわけですね。食べ物を分ける相手を選んでいるということは、過去に誰に分けてもらったのかしっかり記憶しているということなんでしょうか。

「どのように記憶しているのかは不明ですが、そうなりますね。ただ、相手を罰したりするわけですから、確実な記憶力が必要です。人の場合は『誤解』や『濡れ衣』も多いですが、そういうことがあってはいけませんからね」(同)

たしかに、誤解や濡れ衣で本来もらえるはずの食べ物をもらえないなんてことになったらたまったもんじゃないですものね。「吸血鬼」という怖いイメージがあるチスイコウモリですが、助け合いによって群れが生き残る仕組みが根付いているなんて、なんだか意外ですね。 取り上げて欲しい動物、ご意見などありましたら投稿ボタンよりおねがいします。

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