社会性とやらを生物に学べるか?

第11回 次世代に巣を残すミツバチの引っ越し

2010.11.09 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


分封で巣を出たミツバチの集団。女王バチが巣を出るのは分封と交尾のときだけ。分封前には栄養豊富なロイヤルゼリーを働きバチから与えられなくなり、身軽で飛びやすい体になっている 写真提供:トリオ / PIXTA(pixta.jp)

親が出て行くハチの子別れ



生まれ育った実家は愛着のあるものですが、進学や就職など様々な理由でその家を離れた方も多いでしょう。引っ越しは人の世界だけの話ではありません。たとえばミツバチも毎年、春から夏にかけて集団で引っ越します。ただ、こちらは子どもの独立というわけではなく、親である女王バチが巣を去るのにともなう引っ越しです。この仕組みについて、日本動物科学研究所の今泉先生に伺いました。

「ミツバチの巣は1匹の女王バチと数万匹のメスの働きバチで構成され、オスは繁殖期にだけ数千匹が無精卵から誕生します。女王バチと働きバチはいずれも有精卵で、育てられ方に違いがあります。女王バチ候補の卵は王台と呼ばれる個室に産みつけられ、ロイヤルゼリーだけを与えられて成長します」(今泉先生)

女王バチ候補の卵が産みつけられるのは通常1年に1回。そのさなぎがふ化する前に引っ越しが行われるそうです。

「次世代の女王がふ化する前に、母親の女王バチは半分以上の働きバチとともに巣を離れます。この引っ越しは分封(ぶんぽう)と呼ばれ、巣を離れた集団は女王バチを守るように巨大な塊となっていったん休息し、やがて新たな巣を設けます」(同)

女王バチ候補の卵は複数あるようですが、すべて女王になるのでしょうか。

「最初にふ化した女王バチ候補は、その次の女王バチ候補がふ化する前に、母親同様に巣を去って第二分封を行うことがあります。新たな巣を設けられれば、その巣の女王バチになります。第三、第四と分封をすることもあり、その場合、そのあと生まれた女王バチ候補が元の巣を引き継ぎます。元の巣で女王バチになるのはこの1匹だけです」 では、その時点でまだ生まれていない女王バチ候補はどうなるんでしょう。

「誕生前の女王バチ候補の王台は壊されます。もしも女王バチが一つの巣に2匹いると殺し合いが起きてしまいますが、分封や生まれてくる数の調整によってそれを無意識のうちに避けているんです」(同)

そして、新たな女王バチは一生に一度の交尾旅行に出かけ、そこで出会った複数のオスの子どもを巣に戻って産み続けることになるそうです。

「女王バチの寿命は1~数年で、分封は子どもを産む期間がより長い新女王へ巣を引き継ぐことにもなります。また、働きバチの寿命は1~数1カ月で、分封後ほどなくして、前の女王から引き継いだ集団から新女王が産んだ集団に入れ替わります。毎年行われる分封で異なる集団の巣の数が増えることで、ミツバチが種として生き残ることになるんです」(同)

子どもである新女王の成長を母親が見られないのはかわいそうですが、ミツバチの女王にとって、引っ越しは種を守るために必要不可欠な毎年のイベントなんですね。 ご意見、ご感想などありましたらこちらの投稿ボタンからおねがいします

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