GDPはすでに日本を抜いているのに…

どうして日本は中国へのODAを続けているの?

2011.06.16 THU



画像提供/時事通信社
震災の1週間ほど前、前原前外相の指示による中国へのODA大幅削減が報道された。ODAとは「政府開発援助」の略語で、開発途上国の経済開発や福祉向上を助ける仕組み。内容は「返済義務のない資金を供与する“無償資金協力”」「技術や知識のある専門家の派遣や開発計画を援助する“技術協力”」「低金利で資金を貸す“円借款”」に分けられる。

GDPで日本を抜いた中国になぜ援助をするのか? 実際、違和感を覚えた人は少なくないとみえ、保守論壇では「全面打ち切り論」が多数見受けられた。また、外務省のサイトには以前から「他国へODA支援をしている国に支援の必要なし」「軍事力を強化している国にODAは不要」「日本国内にお金を使うべき」など、否定的な国民の意見が多く掲載されている。

しかし、対中国援助政策の評価アドバイザーを務めた東京大学の丸川知雄教授は「感情論や経済視点だけでの議論は単純」と諫める。

「ODAは国の経済規模ではなく、一人当たりのGNI(国民総所得)を参考にしますが、中国はインドやフィリピンと同じ低中所得国です。また、現在の対中ODAはほとんどが技術協力。円借款は北京五輪の前に終了しており、2009年度は円借款の回収で10億ドル以上が戻っています。内容もかつては鉄道敷設や空港整備などハード面の協力が主でしたが、今は知的財産権の保護や食の安全性を高めるプロジェクトなどソフト面での協力が中心。これは日本企業が中国で仕事をするときにも役立ちますが、それ以上に、対中ODAを通じて中国の政策に関与できる外交上のメリットがあります」

冷静に考えれば、丸川教授の指摘には道理があるかもしれないが、様々な“国難”を前に反感を抱く国民感情も理解できる。震災復興の財源としてODA予算約500億円が削減されたが、対中ODAに関しては今後も火種がくすぶり続けそうだ。
(笹林 司)


関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト