世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

家計の現預金残高、5年連続増加のナゾ

2011.08.04 THU

経済学ドリル


【問1】30代(30~39歳)の1世帯あたり現金・預金残高はどれぐらい(2010年末)?

(A)296万円 
(B)396万円 
(C)496万円
(注) 総務省「家計調査」の2人以上の世帯。

【問2】この10年で家計が保有する現金・預金残高はいくら増えた?

(A)約15兆円
(B)約45兆円
(C)約65兆円
(注)日本銀行「資金循環勘定」より。2000年度末から2010年度末にかけての増加額。日本全体の数字。

【解説】日本銀行の統計によると、家計が保有する安全資産(現金・預金残高)は、2010年度末時点で816兆3862億円に達し、5年連続の増加となりました。株価の低迷などを受けて現金・預金以外の金融資産残高は目減りしており、その結果、家計の金融資産全体に占める現金・預金の割合は00年度の50.2%から10年度には55.3%へと上昇しました。
では個別の家庭は、どれぐらいの現金・預金を持っているのでしょうか。総務省の統計で見ると、1世帯あたりの現金・預金残高は545万円と、結構な額に上っています。ただし、この数字は平均値であることに注意が必要です。実は、現金・預金残高は個々の家庭によってバラつきが大きく、たくさんの貯金をしている富裕層の数字が全体の平均値を大きく押し上げてしまうのです。サラリーマンのお小遣いがバブル崩壊後最低の月3万6000円に落ち込むなど、一般世帯の台所事情はかなり厳しくなっているとみられます。

[正解] 問1: A 問2:C


門倉貴史 かどくら・たかし 慶應義塾大学経済学部卒業後、金融機関のシンクタンクで主任研究員などを歴任。現在、BRICs経済研究所代表。専門は日米経済、BRICs経済、地下経済など。著書に、『本当は嘘つきな統計数学』(幻冬舎新書)、『ゼロ円ビジネスの罠』(光文社)など多数

「タンス預金」する人がますます増える?



日本の個人金融資産は、2010年度末時点で1476兆4036億円と、GDP(国内総生産)の約3倍にも上ります。金額は巨額ですが、増減率でみると株式や社債などリスク資産の金額が目減りしているため、06年度をピークに減少基調にあります。
そうした中にあって、現金の残高だけは07年度以降も一貫して増加傾向をたどっています。現金は05年度末から2010年度末にかけて9.0%も増加しているのです。これは、なぜでしょうか。現金の残高が増えている背景には、02年度以降、「ペイオフ制度」が段階的に導入されたことが影響しています。ペイオフ制度で、銀行が破綻したときに払い戻される預金額に上限が設定されるようになったため、お金を銀行に預けないで自分の手元に現金として置いておく家計が増えるようになったのです。
それ以外にも、日本経済の低迷が続く中、預金金利が「超」低水準であることも現金の増加につながっています。定期預金をしてもほとんど金利がつかないならば、手元に現金として持っておきたいと考える世帯が増えることになります。
今後(2011年4月以降)、現金の残高はさらに増えていくと予想されます。というのも、東日本大震災に直面してから、万が一のときに備えて手元に現金を多く持っておこうと考える人たちが増えるようになったからです。実際にどれだけ「タンス預金」が増えているかははっきりわかりませんが、震災後に金庫の売上高が急増したことは事実です。ある金庫メーカーでは震災前との比較で金庫の売上高が4割以上も増加しているそうです。こうした現象は、家にたくさんの現金を保管している世帯が増えていることを示唆しています。ただ、万が一に備えて多くの人が「タンス預金」に走るようになると、手元のお金が増えるだけで世の中にお金が出回らないので、日本経済の復活にとっては少なからずダメージになりそうです。

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