作家vs.代行業者、それぞれの言い分は?

電子書籍「自炊代行」訴訟の争点

2012.03.01 THU


「大量スキャン業が適法になると、裁断本の転売と組み合わせ海賊版の電子書籍のオンライン販売が事実上可能になるんです」(福井弁護士)
タブレットの普及にともない、置き場所を取らない「電子書籍」のニーズが高まっている。だが、国内では電子書籍のラインナップは少なく、紙の本より発売時期が遅れるなどの難点もあって、いまだ普及は進んでいない。そこで蔵書を自分でスキャンして電子化する「自炊」が読書好きの間でブーム化。その作業を代行する「自炊代行業者」が急増しているのだが、“著作権侵害にあたる”として問題視する声があがっている。

昨年12月には、東野圭吾氏ら著名な作家・漫画家7人が2社の代行業者を相手に訴訟を起こし、裁判のゆくえに注目が集まっている。だが、「自炊代行」はなぜ問題視されるのか? 前述の訴訟の原告側代理人を務める弁護士の福井健策氏はこう説明する。

「自分で楽しむための『自炊』は、著作権法で『私的複製』として認められています。これは規模が零細だからこその例外規定で、条文には『使用する者が複製できる』と明記されています。そのため、本人以外の業者が大量に行う複製は違法という解釈が有力です」

スキャンされた書籍は劣化せず、再複製も容易。違法コピーされた海賊版がネットを通じて広まった場合、それを防ぐのが難しい。また、裁断された本がオークションなどで再流通する事例も急増中という。

「権利者に収益が還元されないコピー流通がまん延すると、出版がビジネスとして成立しなくなる。消費者にとっても目先の便利さだけで済まなくなる問題です」

その一方、「問題は違法コピーを流通させる悪質なユーザーにあり、自炊代行はあくまでも個人の権利のサポート」というのが代行業者側の言い分。現時点では判決は出ていないため、多くの業者はサービスを継続している。

結論は裁判のゆくえ次第だが、「消費者のニーズに出版業界が応えられていないのも一因」と指摘する声もある。法廷外の決着こそ望ましい解決なのだが…。
(呉 琢磨)


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