世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

生活保護費のモラル・ハザード

2012.06.21 THU

経済学ドリル


【問1】R25世代の単身者が生活保護を受ける場合、毎月最大いくら支給される?

(A)8万7400円
(B)10万7400円
(C)13万7400円
(注)R25世代は25歳から34歳。東京都区部に住む場合


【問2】R25世代の単身者が最低賃金で1カ月働いた場合の月収は?

(A)10万3920円
(B)13万3920円
(C)15万3920円
(注)東京都区部に住む場合。東京都の2011年の最低賃金で1日8時間、週5日間働くことを想定。


【解説】全国で生活保護を受給している人は今年3月時点で210万8096人に達し、過去最高水準となっています。どれぐらいの金額を受け取れるかは、家族構成や居住する地域などによって異なりますが、たとえば東京都区部に住むR25世代(25歳~34歳)の単身者であれば、最低限の生活費である生活扶助だけでも毎月8万3700円が支給されます。これに住宅扶助を含めると生活保護支給額は、最低賃金で1カ月間、フルタイムで働く人の収入を上回ります。しかも生活保護を受けると、住民税やNHK受信料の支払いが免除になるほか、医療や介護を無料で受けることもできるのです。通常、生活保護を受けるのは退職して自力で収入を得ることが難しくなった高齢者が多いのですが、近年では比較的若い世代で失業を理由に生活保護を受給する人が増えるようになっています。この背景のひとつには、最低賃金を生活保護費が上回るため、アルバイトやパートで働くよりは働かないで生活保護を受けた方が得というモラル・ハザード(倫理の欠如)が生じていることがあります。

[正解] 問1:C 問2:B


門倉貴史 かどくら・たかし 慶應義塾大学経済学部卒業後、金融機関のシンクタンクで主任研究員などを歴任。現在、BRICs経済研究所代表。専門は日米経済、BRICs経済、地下経済など。著書に、『ゼロ円ビジネスの罠』(光文社)『新興国バブル崩壊のシナリオ』(中経出版)など多数

2025年度には生活保護費が5兆円を突破!?



生活保護受給者が増加する中、国や地方が負担する生活保護費も膨らみ続けています。2012年度の生活保護予算は3兆7000億円となりましたが、厚生労働省の試算では2025年には5兆2000億円に達する見込みです。このままのペースで生活保護費が膨らんでいけば、財政事情の悪化により生活保護制度の維持は困難になります。政府は支給額の削減を検討しているようですが、生活保護費は最低限の生活が営める水準に設定されているので、支給額の減額は本当に困っている人たちを窮地に陥れ、本末転倒の事態を招くおそれがあります。生活保護と最低賃金の整合性をとって、「モラル・ハザード」による生活保護受給者の増加を防ぐには、生活保護の給付水準を引き下げるのではなく、むしろ国際的に見ても低すぎる最低賃金を早急に引き上げることが重要でしょう。
また、不正受給の取り締まりの強化も必要です。対策としては2015年1月からの導入が検討されている「マイナンバー制度」が一定の効果を発揮するとみられます。マイナンバー制度は全国民に番号を付与して、この共通番号で年金・医療など各種の社会保障サービスを受けられるようにするものです。また、税金の支払いの基礎となる収入についても行政側が各個人を共通番号で管理・把握します。不正受給は、十分な収入や資産があるのにそれを隠して保護を受けるというケースが圧倒的に多いのですが、マイナンバー制度が導入されれば、行政側が直接に生活保護申請者の正確な収入を把握できるようになるため、受給資格の有無を迅速・的確に判断できます。
不正受給の問題を解決するには、生活保護費を現金ではなく生活必需品の買い物券のようなクーポンで給付するのが望ましいかもしれません。クーポンにすれば、不正受給をして得た生活保護費をパチンコなどの遊興費にあてることができなくなるからです。

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト