東大を動かしたのは国際競争力の衰え!?

大学の秋入学制導入検討 背景は

2012.08.09 THU


様々な国籍の留学生が集まる大学。OECDの発表によれば、世界の留学生は2008年度で約330万人。そのうち日本で学ぶ留学生は約13.3万人で、トップであるアメリカの約67.2万人には遠く及ばないのが現状 写真提供/GettyImages
入学や入社といえば、桜がピンクに色づく、美しい春の訪れとともに迎えるというスタイルが、ここ日本ではおなじみ。だけどこのたび、日本の大学トップといえる東京大学(以下、東大)が、入学時期を春から秋に移行させることの検討に入ったという。すっかり定着した慣習を見直そうとしている理由は何なのか。大学の事情に詳しいライターの石渡嶺司氏に聞いてみた。

「実は、日本のように春入学を採用している国は世界でも珍しく、欧米では約8割が秋入学。そういった国の学生は、半年の待ち時間が生じるのを嫌がり、日本への留学を敬遠する傾向にあるといわれています。現在、世界の大学は優秀な学生や教員の獲得を巡って熾烈な競争を繰り広げており、留学生に敬遠されることは、それだけ国際競争力を失うことを意味します。実際、イギリスの教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』が発表した『世界大学ランキング2010』では、東大は26位と健闘したものの、昨年まで維持していたアジアトップの座を香港大学に奪われました。こうした危機感が東大を秋入学の検討に走らせたといえます」

春入学って、世界では少数派だったんですね。東大が秋入学に移行することになれば、他の日本の大学にも影響がありそうですが?

「仮に東大が秋入学を導入したとします。東大に優秀な留学生が集まり、国際的な競争力が高まると、早稲田、慶應などは水をあけられていくことが予想されます。それでは早・慶もプライドが許さないから、追随するでしょう。難関大学が導入すれば、中堅以下の大学も後を追わねば、というドミノ現象が起こります。大学業界ではセンター試験が導入されたケースでも、まずトップクラスの大学が導入して他の大学も続いた、という例がありますから」

なるほど。でも、秋入学にすると、卒業も秋になるわけですから、高校・大学卒業後の半年間が空いてしまいますよね?

「入学・入社までの移行期間を、ボランティアや留学、長期旅行、アルバイトなどにあてる『ギャップイヤー』の活用が見込まれています。その間に学生や新社会人に社会経験を積ませることができるため、メリットは大きいと考えられています。企業も秋採用をいずれ始めるかもしれませんが、それまでは、卒業後のギャップイヤーを就職活動にあてることができるのも魅力ですね」

とはいえ、これは大学だけが導入をしようとしても、高校や産業界の理解を得るまでは実現が難しい。実際、企業サイドからは採用活動への影響を懸念する意見もあるようで、今回の動きには冷ややかな声も。東大が検討の末、どんな結論を下すのか、今後の動向には注目だ。
(伊藤 裕/GRINGO&Co.)

※この記事は2011年08月に取材・掲載した記事です

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