乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×津田大介(1)

2013.06.07 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「かれこれ97年ごろから議論されてきたネット選挙。ようやく解禁に至ったのはとても喜ばしいことだと思う」(津田)

乙武洋匡「選挙ビラとネットを同列に扱うの、変ですよね?」



長年の懸案であった公職選挙法が改正され、インターネットによる選挙運動が、いよいよ解禁される。でも、これによって何がどう変わるのか、正しく理解している人は案外少ないのではないだろうか。そこで今回は「ネットと選挙」をテーマに、ITジャーナリストの津田大介さんをお招きし、そこに内包される諸問題について乙武洋匡が直撃した。

乙武: ネット選挙がだいぶ話題になってはいますが、まだまだ「インターネットで投票できるようになるんだ」というふうに誤解している人も多いように思います。このあたり、津田さんはどう感じていますか。

津田: そうなんですよね。そもそも、立候補者が選挙期間中にホームページを更新するのを禁じられていたことすら知らない人も多いでしょう。単に「ネット選挙=ネット投票」ということではありません。

乙武: たしか、オリンピック選手も以前は大会期間中のブログ更新などは認められていなかったけど、北京オリンピックからは認められるようになったんですよね。このあたり、やはり時代の変化を感じます。選挙の場合は、これまでのルールのどんなところに問題があったのか、簡単に解説していただけますか?

津田: そもそも公職選挙法というのはすごく古い法律で、大正時代にはすでに成立していたものです。これはいわば、“やってはいけないこと”を羅列している法律で、選挙のプロでも把握しきれないほど細かい取り決めがされています。なかには思わず首を傾げたくなる規則もあって、たとえば候補者が選挙を手伝ってくれる運動員にペットボトルのお茶を差し入れることは禁じられているんです。

乙武: それは、一種の“賄賂”にあたるから、という理由ですね?

津田: そうです。ところが、ペットボトルのフタを開けた状態で渡す分にはOKなんです。開封済みの物は商品としての価値が認められないからなのだそうですが、もう意味がわからないでしょ?(笑)

乙武: へえ、面白い! けど、そこで線引きすることには、まったく意味を見いだせないですよね。インターネットに関しては、どのような規制があるのでしょうか。

津田: 選挙とは投票日までにどれだけ知名度を上げられるかという勝負でもありますが、PR合戦になるとどうしても資金力がある人が有利になります。そこで公職選挙法では、条件をそろえるために、選挙期間中に規定の枚数以上のビラやポスターをまくことを禁じています。ところが90年代になってインターネットが登場し、「これはどういう扱いになるんだ!?」と議論された結果、「ビラと同列に扱う」ということになったんです。

乙武: つまり、選挙期間中にホームページを更新することは、ビラの頒布と同じ扱いにされる、と。でも、これはインターネットの特性を理解していない人が決めた措置というか、ちょっと違和感がある解釈だなあ。

津田: 実際、様々な矛盾が指摘されてきました。たとえば立候補者のなかには過去に本を出したことのある人だって少なくありませんが、それらは選挙期間中に書店から撤去されることなく、常に流通している状態にあるわけです。そもそも、資金力の差による不平等をなくす意味で規制があるなら、誰でも安くPRできるネットを禁じるのはおかしな話なわけです。

乙武: でも、1998年に民主党が国会に初めて法案を提出してから、じつに15年が経っているわけでしょう。もちろん、議論にある程度の時間がかかるのはわかりますが、なぜ、ネット選挙解禁までこれほど長い時間がかかったのでしょうか?

津田: 結局、政権のなかの長老格の人たちは、従来の選挙戦で勝利を収めてきた人たちですから、ネットの解禁は自分たちにとって不利になる可能性がある。だから、なかなか重い腰が上がらなかったんです。

乙武: なるほど。今回ようやくネット選挙が解禁に至ったのは、安倍首相自身がFacebookで積極的に有権者とのコミュニケーションを図るなど、比較的ネットに明るい方だというのも大きいかもしれませんね。次回は、ネット選挙の解禁によってどんなメリットが生まれるのか、具体的にお聞きします。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
津田大介さん
1973年、東京都生まれ。早稲田大学・社会科学部卒。IT系のライターとして文筆活動をはじめ、現在はジャーナリストとして多方面で活躍中。メディアプロデューサー、メディア・アクティビストとしての顔も持つ。2012年末には様々な問題の是非についてネット上で投票を募る「ゼゼヒヒ」をオープンした

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