SNSはセーフなのに、メールはアウト?

ネット選挙 有権者のNGライン

2013.07.03 WED


文中で紹介しているもの以外にも「メールの画面を印刷して配る」「投票日になってから、以前に書かれたSNSの文章を拡散する」などの行為がNGとされるという
7月21日に投開票が行われる参議院選から、今年4月に改正された公職選挙法のもと、いよいよ“ネット選挙”が解禁される。これは有権者にとってどんな意味を持っているのだろうか。『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』の著者で、立命館大学特別招聘准教授の社会学者、西田亮介氏に聞いた。

「まず今回の法改正により、有権者が公職選挙法違反に問われるリスクが減りました。公職選挙法というのは、政党や候補者だけでなく、一般有権者にも適用されるものですが、今回の法改正以前は、有権者の多くが公職選挙法違反に問われかねない状況に置かれていました。例えば、昨年12月の総選挙期間中、安倍晋三氏が秋葉原の街頭で演説を行った際、現場にいた有権者は、『あ、安倍さんだ。投票しようぜ』と写真を撮ってFacebookやTwitterなどを使って拡散させていました。有権者の間では一般的な行為でしたが、旧公職選挙法上では、少なくとも合法とは言いがたいものでした。今回の法改正は、選挙期間中に有権者がネットで投票を呼びかける行為を合法化した点で、有権者に大きなメリットがあります」

つまり、有権者はネット上でも意中の候補者を応援できるようになったわけだ。ただ、その際に注意すべきポイントがいくつかあるらしい。

「まず、ネットで発信する情報については、時期と正確性、責任の所在に気を配ってください。大前提として選挙運動は公示・告示日から選挙前日までに限られますし、候補者に関するウソの情報を流すと、公職選挙法235条に定める虚偽事項の公表罪に問われることになります。また、真実に反する名前や身分を使う『なりすまし』は同法235条の5に定める虚偽表示罪にあたります。ただし、ハンドルネームの使用は、FacebookやTwitterなどのアカウント名や、メールアドレスなどの連絡先を明示していればOKです」

そして情報発信の手段についてもルールがある。

「有権者は、政党や候補者と同じく、ホームページ、ブログ、SNS(メッセージ機能含む)、動画共有サービスなどのウェブサイト全般を選挙運動に使えます。しかし、電子メールの使用は、禁止されているので注意が必要です」

政党や候補者は、選挙運動に関するメールを送ることについて事前に相手から同意を取るなどの条件付きながら、電子メールの利用は許されている。しかし、なぜ有権者は「禁止」なのか? FacebookなどのSNSでやりとりするメッセージ機能は、セーフだというからなんだか釈然としない。

「総務省が作ったガイドラインには、電子メール禁止の理由が3つ挙げられています。(1)密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすい。(2)複雑な送信先規制を課しているため、一般の有権者が処罰され、公民権停止になる可能性が高い。(3)ウイルス付きメールにより、有権者に過度の負担がかかるおそれがある。(1)はともかく、(2)と(3)は、個人的には、余計なお世話だと思います」

もっとも、総務省のガイドラインにも、電子メールの利用などについては、「次々回の国政選挙における解禁について適切な措置が講ぜられる」とされており、“状況をみて改善していきます”というスタンスのよう。

不都合についてのユーザーの不満の声が大きくなれば、事業者はサービスをアップデートするのがネットの世界。ネット選挙を導入したことで、日本の政治はいやおうなく、そうした「少しずつ改善する」思想に接続されていくだろうと西田氏は言う。その第一歩として、今回の選挙は日本の政治史において、大きな意味を持つのかもしれない。
(野中ツトム/清談社)

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