乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×東浩紀(1)

2013.07.05 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「広大なネットを旅するためにこそ、人はリアルに動く必要がある」(東) 撮影/後藤 渉

東浩紀「検索だけでは、真に新しい情報は得られない」



メールやSNSは、今や公私ともに不可欠なツールとなりつつある。だが、ネットが便利に使えるあまり、リアルな行動がおろそかになってはいないだろうか? そこで今回の「自問多答」では、ゲンロン代表として様々な事業に取り組む思想家・東 浩紀氏をゲストにお迎えし、ネットとの理想的な付き合い方を直撃した――


乙武: 東さんも僕も、日頃からTwitterなどを積極的に活用している方だと思いますが、ネットを介したコミュニケーションについて、閉塞感を覚えることってありますか? …もっとも、お互いその点に無頓着だからこそ、よく炎上しているような気もしますが(笑)。

東: たしかにそうかも(笑)。まあ、あまり気にしすぎると、何もできなくなっちゃいますから。僕は閉塞感よりも、ネットの“限界”みたいなものが気になってますね。

乙武: ネットの限界。それはどういう意味ですか?

東: 何か知りたいことがあると、たいていの人はまず検索をしますけど、検索ワードというのは結局、自分の頭のなかにあるものでしかないわけです。つまり広大なネットの世界に触れているようでいて、実際には想像の範囲内の情報しか集まってきません。検索で真に新しい情報が得られるとしたら、たとえば、見知らぬ土地で見たこともない何かに触れ、「これは何だろう」と検索してみた時だと思うんですよ。

乙武: なるほど。パソコンもネットも非常に便利なツールだけど、結局は自分のリアルな世界と連動しているのだから、無限ではないと。

東: ただパソコンの前にいて、クリックひとつで引き出せる情報というのは、じつはネットのなかのごく一部分でしかない。より広いネットの世界に触れるためには、リアルの自分が動くべきなんですよ。

乙武: 逆もまた然りでしょうね。なんとなくネットを見ていて、たまたま出くわした情報が気になって、実際に見に行ったり会いに行ったりして、見聞が広がる。そんな双方向での作用が生まれれば、いっそう理想的です。

東: そうですね。今度、自社で『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』という本を出すんですが、これなどは象徴的でした。ウクライナ人にインタビューをしようと考えたものの、誰にどんなルートであたればいいのか見当もつかない。けれどロシア語ができる人に頼んだら、会議中にSNSで検索し、その場で取材を打診。会議が終わる前に返事が来て、取材が確定したんです。

乙武: それはすごいスピード感。ネットがこれだけ普及した今だからこそ可能な手法ですよね。

東: その通りです。題材としては海外取材物だから、リアルな現場志向の本をイメージされると思いますが、実際にはネットによって行動が左右されている。リアルとネットは、もはや切り離せないほど結びついているんですよ。

乙武: 「現場=リアル」を重視して取材しながらも、その準備にはネットが欠かせない。両者を有機的に結びつけていきたいですね。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
東 浩紀さん
1971年、東京都生まれ。作家、思想家として活躍する一方、ゲンロンの代表取締役兼編集長として『思想地図β』などの書籍を出版。新刊『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』が発売中

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