乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×東浩紀(2)

2013.07.12 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「登壇者と名刺交換さえできれば満足、という人は案外多い。でも、せっかくリアルで接しているのなら、交流を持たなければ何も広がらないですよ」(東) 撮影/後藤 渉

東浩紀「トークショーをファンイベントで終わらせたくない」



乙武: 僕が『五体不満足』を書いた当時(1998年)は、感想はお手紙でいただくのが主でした。大半は年輩の方、もしくは小学生くらいの子どもからだったんですけど、Twitterなどネットを通じて気軽にコミュニケーションがはかれるツールが登場すると、「お、意外と20代の方も僕の活動に関心を持ってくれているんだな」と、思わぬ発見があった。こういう、ネットが一般的になって初めて知ることって多いですよね。

東: そうですね。ただ、一見ネットを使いこなしているような人でも、実際には自分の意見に沿ったサイトにばかりアクセスしていて、結局は自分の主張に都合のいい情報ばかり集めている…なんてこともありがちです。ネットが万能であるかのように捉えるのも、それはそれで問題かもしれません。

乙武: その点、東さんが運営している「ゲンロンカフェ」は、ネットを介してふれあっていた人々がリアルで交流できる貴重な場だと思います。これは、もともとどのような構想で始めたものですか?

東: ゲンロンという会社を立ち上げた時、たまたま五反田に広めの事務所を借りることができたので、Ustreamやニコ生の収録を行うスタジオを併設していたんです。そこで毎月20人くらいお客さんを呼んで、「ニコ生思想地図」というネット番組を作り始めて。そうしたら、登壇者とお客さんの間で交流が生まれたりして意外と好評だったので、それならもっと大勢呼べるスタジオを作ろう、と考えたのが「ゲンロンカフェ」の始まりでした。

乙武: まさしく、東さんがおっしゃっている、ネットとリアルが連動する空間ですね。

東: それに、以前からトークショーなどのイベントのあり方に疑問を感じていたんですよ。ああいう場で本当に重要な情報とは、「客層」だと僕は思っているので。同じ趣味趣向、目的を持った人がそこに集まっているわけですから、本当はもっと来場者同士が交流するべきなのに、登壇者にサインをもらったり、名刺交換をすることが最大の目的になっていたりしますよね? 僕自身も経験ありますけど、イベント終了直後に、たいした会話もしていない編集者から「ぜひうちでも執筆してください」と名刺だけ渡されたって、あまり意味はないんですよ。

乙武: あるある(笑)。ただ内容を見聞きして帰るだけなら、家でネット中継を見ているのと大差ないですもんね。双方向や横方向のコミュニケーションをうたっても、それでは一方通行が多数生まれているに過ぎない。だから「ゲンロンカフェ」は、ステージというよりラウンジっぽいつくりになっているんですね。

東: そう。同じ趣味を持っている人間同士が相互に交流する場を作りたかったんです。トークショーのあとに、登壇者の前に名刺交換を求めてできる行列を崩したかった。サインをねだるよりも、登壇者と一緒に酒でも飲みながら対話してほしいな、と。

乙武: 以前、僕の知人が本を書いた際、その出版記念パーティーの二次会を「名刺交換しない会」と名付けていたのを思い出しました。つまりは肩書きや社名に頼らずに、互いに自己アピールをして交流しようという意図ですね。

東: ああ、それはいいアイデアですね。名刺交換こそがミッションだと勘違いしている人、多いですから。

乙武: 僕自身も、講演会や執筆において自分のメッセージを届けようとした時、相手がどんな人なのかを探る作業はとても重要だと思っています。相手によって話し方や文体をアレンジしたり、言葉のチョイスが変わってくることもある。そのためには、やはりリアルでの交流の機会は重要になってきます。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
東 浩紀さん
1971年、東京都生まれ。作家、思想家として活躍する一方、ゲンロンの代表取締役兼編集長として『思想地図β』などの書籍を出版。新刊『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』が発売中

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