乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×高木新平(4)

2013.09.27 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「“家”というのはインターネットのアカウントみたいなもの。フリーでフラットで、それでいて誰とでもリンクしていければいいと思う」(高木) 撮影=後藤 渉

高木新平「家はインターネットのアカウントみたいなもの」



乙武: もともと六本木でシェアハウスを営んでいた高木君が、今度は文京区というがらりと変わった土地でシェアハウス(本郷よるヒルズ)を始めたのはどうして?

高木: 以前、文京区にある知人宅に居候させてもらっていた時、なんというか、街に漂っている独特の生活感にすごく惹かれたんです。時間軸があるというか。六本木は若い人が集まるにはいいけど、横のつながりばかりになっちゃいますから。

乙武: その結果、今度は19歳から60歳まで、世代も職業もばらばらな7人がひとつの家で暮らすことになった、と。

高木: そういうことです。先日、その「本郷よるヒルズ」でパーティーを開いたんですけど、還暦を迎えたおじさんと女子高生が同じソファでしゃべっていたんです。60歳のおじさんと18歳の女子高生って、親子でもないかぎり、普通に暮らしていたらまず接点が生まれないですよね。お互いにとって新しい刺激があったんじゃないかな。

乙武: たしかに女子高生にしてみれば、60歳ってお父さんよりもずっと上の世代だものね。

高木: 個人の思考って、どうしても閉じてしまいがちじゃないですか? 日頃ネットなんかを見ていても、気になる情報ばかりに偏ってアクセスしちゃいますし。だからこそ、そういう他者との出会いによる刺激が、日常のなかで自然にあることが重要だと思うんです。

乙武: なるほど。つまり、人間関係のセレンディピティ(予期しない発見)ってわけだ。住む場所に公共性を持たせると、そういう恩恵が生まれるという好例だよね。

高木: それに、これは前から思っていたんですけど、「家」ってインターネットに似ているんですよ。家とはアカウントで、個々のアカウントをリンクさせたりシェアしたりすることだってできるだろう、と。

乙武: おお、それは面白い発想だね。

高木: たとえば、「よるヒルズ」みたいにリビングで何かイベントをやるのって、すごく自由度が高いんですよ。しょせん家だから、みんな気が向いた時に来て、いつでも自分の都合で帰れる。このフリーでフラット、それでいていろんな人とリンクできる感じ、まさにインターネットですよ(笑)。何より、初対面の人と会うにしても、どこかの会議室で話すよりも、こうしてリビングで話している方が絶対に仲良くなれます。

乙武: ちなみに、もともと人見知りな人だって世の中には大勢いると思うんだけど、そういう人たちにシェアハウスの良さを伝えるとしたら、高木君はどう伝える?

高木: 人見知りでもいいと思うんですよ。先ほど言った「Liverty」に参加している若い奴らには、対話が苦手な人間だって多いです。でもその分、独特の考え方やスキルを持っていて、そこで共鳴する人がいるから、そのメンバーで集うことができる。人それぞれ求めることが違うから、この「本郷よるヒルズ」のように世代を越えた交流をするシェアハウスもあれば、同じ空間にはいるけどひと言も交わさず、ずっとプログラミングしているようなシェアハウスもある。その状況に応じて出入りすればいいんです。

乙武: つまり、自分に合った場所を探せば、居場所は必ずある、と。プライベートが大切だという価値観は決して否定されるものではないけど、新たなコミュニティの確保の仕方として、シェアハウスというかたちには大きな可能性を感じるなあ。高木君の活動含め、これからの社会でシェアハウスがどんな役割を担っていくのか、今後も興味深く見守っていきたいと思います。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
高木新平さん
1987年、富山県生まれ。博報堂退社後、シェアハウス「よるヒルズ」やモノづくり集団「Liverty」など実験的なコミュニティを立ち上げて活動。また企業ブランディングや政治キャンペーンも手がける。

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