乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×石川大我(3)

2013.10.18 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


乙武洋匡「性的指向が後天的に変化することはあるの?」



乙武: 以前、Twitterでフォロワーの方から、「乙武さんの周囲に同性愛者はいますか?」と聞かれたことがあるんです。僕はその時、「いえ、これまではいませんでした」と答えたんですが、そうしたら「乙武さん、“いませんでした”はやめた方がいいです。本当はいたけれど、カミングアウトできなかっただけかもしれませんよ」といわれて、ものすごく納得したんです。

石川: たしかに、そういう状況が過去にあった可能性は、十分に考えられますよね。割合として、LGBTは“クラスに1人”いるといわれていますから。

乙武: その時にあらためてLGBTとは難しい問題だなと痛感させられたんですけど、実際、誰にもいえず、どうすることもできずひとりで悩んでいる人がどれだけいるのかと考えると、胸が痛みます。

石川: 性的指向というのは生まれながらにして持っているものであって、コントロールできるものではありません。もし、同性愛者として生きてきた人が、「僕は今日から異性愛者になろう」と宣言したところで、どうにもならない領域なわけです。乙武さんが女性のお尻を追いかけるようになったのも、自然に湧いてきた欲求ですよね(笑)。

乙武: ええ、そうですね(笑)。

石川: 僕の場合も同様で、小学校5年生の時、委員会活動中に何かとちょっとかいを出してくる男の先輩のことが気になり始めたのがきっかけで、いまにして思えば初恋のようなものでした。結局、異性愛者として生まれてくるか、同性愛者として生まれてくるかは、当人には選べないんですよ。それにもかかわらず、そこに差別意識が生じるのは問題だと、高校生くらいの頃から感じていました。

乙武: まったくその通りだと思います。ちなみに石川さんは、学生時代に差別を受けた経験がありますか?

石川: いえ、ばれたら差別的な扱いを受けるだろうという危機感を持っていましたから、家族にも友人にも言えずにいました。当時、表向きには浅香 唯さんのファンだと公言していましたが、本当はジャニーズのファンだったりして(笑)。

乙武: さきほど、「性的指向は生まれついてのもの」というお話がありました。僕自身の障害も先天的なものですが、しかし障害全般においては決してそうではありません。たとえば、僕には子どもが2人いますが、たまにTwitterなどで「お子さんは五体満足なんですか?」と聞かれることがあります。僕はいつも、「いまのところは」と答えるんです。つまり、後天的に障害を持つことはあり得る、と。同様に、たとえばいまは異性愛者である僕が、後天的に同性愛者に転じることもあり得るんでしょうか?

石川: これは難しいんですよね。個人的な意見としては、人は必ずしも同性愛/異性愛/バイセクシャルの3パターンにきっちり分かれるわけではなく、パーセンテージに個人差があると思うんです。たとえば100%の同性愛者もいれば、「7:3で同性が好き」みたいな人もいるとか。

乙武: なるほど。たしかに、性別を越えて魅力を感じる人というのもいますよね。僕だって、たとえば市川海老蔵さんの容姿なんかを見ていると惚れ惚れしますもん。

石川: 僕もよく聞かれるんです。「今後、女性を好きになることはないんですか?」って。可能性でいえばゼロではないんでしょうけど、僕の場合はほぼ100%の同性愛者ですから、「あなたが今後同性を好きになる確率と同じくらい、ないと思います」と答えると、皆さんドキッとした顔をされますね。

乙武: もしかしたら、自分のなかにも同性愛の種というものがわずかながらあるのかもしれない。もしそれが芽を出したら…と想像してみると、いまの社会がLGBTの人たちにとって、どれほど生きづらいかがイメージできるかもしれませんね。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
石川大我さん
1974年、東京都生まれ。2000年から同性愛者であることを公言し、その権利獲得を目指して活動。11年より東京都豊島区議会議員。著書に『ボクの彼氏はどこにいる?』『セクシュアルマイノリティをめぐる学校教育と支援』(共著)ほか

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