乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×小室淑恵(3)

2013.11.22 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


小室淑恵「育児参加の第一歩は妻の話を聞くことから」



乙武: 昨年、2人目のお子さんを出産された小室さんですが、ご夫婦ともに多忙で、子育てと仕事の両立には苦労も多いのでは?

小室: そうですね、長男が生まれた時は、精神的に大変な時期もありました。それまでは私も夫も五分五分の関係で仕事に注力していたのに、子どもが生まれた途端、そのバランスが崩れてしまうんですよね。夫は変わらず深夜まで働き続けているのに、私は何があっても18時には仕事を切り上げて保育所に迎えにいかなければならない。乳児なので仕方がないんですけど。

乙武: うーん、やはり母親にどうしても負担が偏ってしまうものなんですね。

小室: これはやっぱり意識の差が大きくて、女性は自分のお腹を痛めているせいか、出産と同時に“ママ”になるスイッチが入るんですけど、男性はなかなか“パパ”になるスイッチが入りにくいんですよね。

乙武: よくわかります。男性は、子どもが生まれた喜びは感じていても、子育てに対する覚悟や実感が芽生えにくいというケースはまわりでもよく見かけますね。

小室: たとえば奥さんが里帰り出産をするケースでは、なおさらでしょう。夫が1人、東京に残って単身赴任状態で仕事をしていたら、すぐにパパになった実感を得るのは難しいかもしれません。これって、縄跳びみたいなものなんですよ。ママが跳んでいる縄のなかに入ろうとしても、タイミングを失うと、その後ずっと傍観しているだけになってしまう。

乙武: 正直、僕自身も長男が生まれて間もない頃は、妻と息子の絆を見るにつけ、疎外感にも似た感覚を覚えることがありました。僕の場合は物理的な問題ですが、長男が生まれてからしばらく、育児を手伝えないもどかしさに苦しんでいたんです。それで一度、妻に「負担をかけて本当に申し訳ない」といったら、「いや、ママ友の話を聞いていると、どこも似たようなものみたいよ」と。むしろ、「手足があるのに何も手伝わないなら腹も立つけど、あなたの場合は最初から戦力外だから気にならないわ」だって(笑)。

小室: 素晴らしい(笑)。本当に素敵な奥様ですよね。

乙武: それよりも、「私が育児で息が詰まったりした時に、ちゃんと話を聞いてくれていることのほうがありがたい」と。

小室: それは本当に大切なことだと思います。男性の皆さんにまず徹底してほしいのは、奥さんの“話を聞いてあげる”こと。奥さんが朝、「昨晩は何回授乳したよ」と話しているのを、ただ聞き流しているようではダメです。自分が寝ている間にも育児を頑張っていることに反応してあげてください。

乙武: たしかに、そうやって聞いてあげたり、育児について話し合ったりすることだって、立派な育児参加ですもんね。

小室: そう。女性は何も、授乳のたびに一緒に起きてほしいと思っているわけじゃないんです。愚痴めいていても自分の話を聞いてくれて、「大変だったね」とか「起きなくてごめんな」といってもらえるだけで報われるものなんです。それが男性の育児参加の第一歩ではないでしょうか。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
小室淑恵さん
資生堂勤務を経て、働きやすい社会の実現を目指し、株式会社ワーク・ライフバランスを設立。仕事と家庭を両立し、組織の生産性を高めるためのコンサルティングを900社以上に提供している

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