乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×宇野常寛(1)

2014.02.07 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


撮影=後藤 渉

宇野常寛「AKB48は、戦後最大の文化現象だ!」



僕らを取り巻く文化は、時代とともに変化している。流行もツールも考え方も、その時々に適したものが生まれては消えていく。では、たとえば、昭和に流行ったアイドルと現代のアイドルでは、その成り立ちはどう異なるのか? それをひもとくことで、メディアの機能の移り変わりや、新しい文化の生まれ方が見えてくる――

乙武: 僕はもともと「文化」とか「サブカル」といったジャンルに疎い人間なので、今日の対談、実はちょっとオロオロしているんです(笑)。今回はもう、聞き手に徹するしかないな、と。

宇野: ぜひ、ざっくばらんに何でも聞いてくださいよ。

乙武: 今回まずお聞きしたかったのは、「AKB48」という“現象”について。僕自身はアイドルにハマった経験はないのですが、ここ数年の凄まじいAKB人気には目を見張るものがあります。いい機会ですので、熱烈なファンとしても知られる宇野さんに、あらためてAKBの魅力をレクチャーいただきたいです。

宇野: そもそも僕がハマったきっかけは『マジすか学園』というドラマでした。決して上手ではないんだけど、中高生くらいの女の子たちが全力で演技に取り組んでいる様子がなんだか新鮮で。詳しく知っていくうちに、“このAKB人気というのは、もしかすると非常に面白い現象なのではないか”と思うようになったんです。

乙武: 宇野さんにとって、評論の対象に値する現象である、と?

宇野: そう。結成から最初の数年は、ほとんどメディア露出していなかった彼女たちが、地道な劇場活動を続けていくうちにネットなどを介して周知され、やがて数十万人を動員するアイドルに成長する。現代においてメジャーを作るなら、これしかないだろうというやり方なんですよね。

乙武: それは、ももクロにも共通する部分かもしれませんね。

宇野: たとえば昭和初期、「プロ野球の父」と呼ばれた元読売新聞社社長の正力松太郎が、テレビを使って巨人戦を中央から地方にガンガン発信し、ジャイアンツを全国的な人気球団に押し上げた経緯があります。でも、情報やメディアが多様化した今では、同じやり方で人気球団を作り上げるのは難しいですよね。

乙武: たしかにテレビ以外にも様々なメディアが登場した現在では、以前とは異なるアプローチが必要になってくるでしょうね。

宇野: つまりはマスメディアの文法みたいなものが、時代とともに変化しているわけです。AKBは“劇場+ネット”の組み合わせで草の根的に広まっていき、大きなユニットに育ったうえでメディアに打って出ている。大げさかもしれませんが、これは戦後最大の文化現象じゃないですか?

乙武: うーん、そういう視点でアイドルブームをチェックするのも興味深いですね。握手会やじゃんけん大会といった独特のイベントにも、新たな仕組みや潮流を創りだすためのヒントがたくさん隠されているのかも。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
宇野常寛さん
1978年、青森県生まれ。評論家として活動する傍ら、文化批評誌『PLANETS』を発行。主な著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)ほか多数。

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